滝田聡司の告白 25
永田ってのは、本当変わったやつなんだよなあ。
マイペースここに極まれり、っていうか。
トロンボーンのやつらって、多かれ少なかれそういうとこあるけど、あいつはその究極みたいな感じなんだよな。
やっぱあの楽器の構造がそうさせるのかね。きっちり音程のポジション決めるような楽器じゃないし。
ま、オレはあいつらの、そいうところが好きだがね。
というか、かえってそういうやつらの方が、吹くのも上手かったりするもんな。
永田に、浅沼。
城山先生だって、実はそうなんじゃねーのかなあ。
なーんか教わってて、そんな気がしたんだよな。
この三人は、それぞれ違った意味で天才肌だなって思う。
どっかが秀でてる分、どっかべっこりへっこんでるっつーか。ステータスがピーキーというか。
才能とのバランスを、それで取ってる感じがするんだよな。
たまにいるだろ? そういうやつ。
表現系の部活には、感性を使う分、普通の部活よりそういうのが集まりやすいんだろうよ。
まあ、あの永田の遅刻癖だけは、なんとかしてほしいけどな……。
浅沼にそれがうつらなければいいんだけど。それ以外のこと、楽器のことに関しては、どんどん真似していって構わないんだけどな……。
というか、そう考えたら、浅沼は幸せだよな。
永田に、城山先生。
すっげえ参考になる人間に、ずっと教われてるんだぞ。
あいつ今のうちに、すっげえ上手くなるだろうな。来年のコンクール、聞きに行くのが楽しみだ。
もしかしたら、城山先生についてってプロになっちまうかもな。
ま、冗談はさて置くとして。
あの一件で永田は、ガチでやる気モードにスイッチが入ったわけだ。
あいつ、普段から上手いのに、久しぶりにそれに本気が加わったからなー。
まあ普段から本気出せよって話なんだけど、あいつマイペースだし、本番だからこそ出る力ってのもあるし。その辺は大目に見てやってくれ。
というわけで、豊浦にはまだ不安があったけど、あれで二日目もやれそうな雰囲気が、オレたちの間に生まれたんだ。
やっぱテンション上げるって重要だよな。あのときの永田の口、チョコと生クリームでベッタベタだったけど……。まあそれが気にならないくらい、あいつの中でやる気がたぎってたってことなんだろ。たぶん。
だからあの後、オレもみんなとクレープ食べて、今度は軽音部の方に様子を見に行ったんだ。
さてと、じゃあ今度は、軽音部のあいつらがあの後どんな反応をしたか、その話をすることにしようか。




