滝田聡司の告白 23
え? じゃあ、オレが紘斗を呼んだのが失敗だったんだろって?
いやいや、それはさすがに違う、違うだろ。
この時点じゃ、オレだってこいつがあんなことをするなんて、思ってもみなかったんだし。
それに、行きたいって言ってるやつには来いって言うだろ? 当の紘斗本人だって、ああなるとは思わなかったんだろうよ。
だからあれは事故だっていえば、そうなんだ。
まあ今となっちゃあ、あれを事故なんて言うやつはいないけどな。当時は騒動にはなったけど、振り返ってみたら、あれも必要なものの一部だったんだと思うし。
あれで結局、一番迷惑をこうむったのは豊浦だったけど。
その分、結果的に一番得るものがあったのも――また、豊浦だったんだろうしな。
あのときのことがなけりゃ、今のあいつはなかったんだろう。
ま、つまりはそういうことなんだ。
その内容は、これから話すよ。
ていうか、本番てさ。
ソツなく上手くいったものよりも、かえってとんでもねー失敗とか、思いっきりやらかしちまったやつのほうが、意外と後から楽しく話せるもんなんだよな。
いつ話に上がっても、「いやー。あのときのあれはヤバかったなー、わはははは」なんて、盛り上がるくらいに。
だからさ。
別に、これからオレが話すことは、そこまで深刻になるものじゃないんだ。
あの本番が終わっても、部活を引退しても。
きっとこの後卒業して、たまに会うようなことがあったとしても。
必ずその話題で笑えるような、そんな話なんだ。
そんなわけで、今度こそ本当に、これからあのときのことを話すよ。
だけどその前に、情報として頭に入れておいてほしいのは。
紘斗が『バンドのライブには何回も行ったことがあった』っていうのと。
『吹奏楽のコンサートは、今まで一回も行ったことがなかった』っていうことな。
 




