滝田聡司の告白 20
本当にやりたいことって、自分じゃ案外わかんないよな。
二年の後半くらいから、進路どーする将来どーするとかって、配られる紙に書かされたけど。
しょーじき、どうなりたいとか全然わかんねえよ。そんなこと言われてもって感じ。
どんな仕事があるのか知らないんだから、選びようがないってのもあるかもしれないけどさ。
それ以上に、豊浦みたいに感情と状況と自分の実力が上手く把握できなくて、本当にやりたいことが見えないっていうのは、あると思うんだよな。
オレはドラム叩ければ別にいいけど……だからって、それでプロになりたいかって言われたら、そういうのとも違うんだよなー。
今からじゃ無理だろうなって気持ちもあるし、でもやめたくないし。
オレ将来、なにになるんだろ?
わっかんねえな。
うーん……まあ、オレの将来は置いとくとしても。
さっき言ったみたいに求められてることが自分の感情と相反した場合、どうするかっていうのは、あるよな。
気に入らないからってやることを避けてたら、下手したら一生、自分のやりたいことができないときもあるわけだろ?
そこをどうやって、本当の望みを見つけて、自分でやっていくかだよなー。
そのための我慢だったら、別にそんなにきついもんでもないだろ。え? そうでもない?
まあ、その肝心の「ほんとうにやりたいこと」がわかんないから、豊浦みたいにわけわかんねーことになってるんだけどな。
だからやりたいなーと思ったら、やり続ければいいってことなんだよ。
そうしたら、ぽろっと誰かが、「こうじゃねーの?」って言ってくれるときだってある。
それにああそうか、と思うのも、そうじゃねーよ! って思うのも自由。
ぽんっと自分の中に投げかけてみて、嫌だなと思ったら別の方向に行けばいいし、そうだなと思ったらそうすればいい。
それがきっと、本当の自分の望みなんだろからな。
だからなんだかんだいって、豊浦はここまで一緒にやってきたんだ。
仲間っていうか戦友っていうか、あいつとはそんな感じだったと思う。
岩瀬ともまあ、そんな感じで。
強引に引っ張ってきたオレが言うのもなんだけど、あれはあれで、あいつからしたら結果的にいいことだったんだろうな。




