滝田聡司の告白 19
あっはっはっは!
あー、さっきはああ言ったけど、全然切り替えられてねえなあ、オレ。
自分で言ってて笑えてきたぞ。なんかもー、恥ずかしいを通り過ぎて笑い話みたいに感じるな。
まあ今はもう、春日のこともそんなもんだなーって思えるんだ。
全部が終わった今だからこそ、言えることだけどな。
けど、結果オーライ、結果オーライ。
岩瀬もああやって引っ張りこんだら、ブツブツ言いながらもピアノ弾き始めたし。
中身は八つ当たりだったけど、それが役に立ったんならなんでもいいんだよ。
文句言いながらも、弾き始めたらずっとやってるんだ、あいつ。
やりたいならやりたいで、そう言えばいいのになあ、面倒くせえ。
まあ、そういう『やらなきゃいけないこと』が押し寄せて、やりたいことやれなくなってるやつって他にもいるよな。
しょーがねえからやってると、どんどんそういうのが押し寄せて、結局「あれ? オレなにやりたかったんだっけ?」みたいなことになってさ。
なんだかよくわからなくなってきて、そのうちやんなきゃいけないのか自分がやりたかったのかも、よくわかんなくなってきて――で、結局なんにもできなくなっちまう、っていう。
受験とかもそうだよなー。
岩瀬もそうだったのかもしれないけど、「受験があるから部活辞めます」とか言うやついるじゃんか。
けど、時間ができたからって勉強するわけじゃなくて、むしろ部活やり続けてたやつの方が、成績いいことが多いよな。あれ不思議。
だから、なんかあってもさ。
一時、できないときもあっても。やっぱ、やり続けてた方がいいってオレは思うんだよな。
まあ、なんのかんの言うやつはいるけどさ。親とか。
周りの状況も許さなくて、『やらなきゃいけないこと』が山積みで――でもやっぱり、『やりたいこと』の尻尾だけはしっかり掴んどいた方が、色々見失わないと思うんだよ。
まあ、なにがやりたいか自分でもよくわかんなくて、首を傾げてるやつもいると思うけど。
案外、近くにあったりするんだぜ。やりたいことっていうのはさ。
で、まあ吹奏楽部の話に戻るけど――豊浦も結構、その辺がとっ散らかってるやつだったんだ。
『やらなきゃいけないこと』と『やりたいこと』がごっちゃになってて、自分でもわけわかんなくなってて――その辺の整理がつかなくて、あんなにイライラしてたんだと思う。




