滝田聡司の告白 17
よう、久しぶり。
え、今までずっとしゃべってたろって?
いやほら、ずっと状況説明だったしさ。それにこうやって話すのが、なんとなくしばらくぶりのような気がして……って、そういう話じゃねえな。ええっと。
そうそう、そんなわけで話は長くなっちまったけど、軽音部と吹奏楽部のセッションはこんな感じだったんだ。
豊浦は始終ブーたれてたし紘斗も結局あーだったし、始まる前と終わった後で、なにがどう変わったか、と言われたらこの時点だとよくわかんねえけどな。
まあでもこれが、なにかのきっかけになればいいな、と漠然とオレは思ってた。
実際やってみておもしろかったし、いい感じだとも思ったし。それって存外、あるようでないんだぜ? やってる最中に「あ、いいな」って思える瞬間っていうのはよ。
でも、その感触は傍で聞いてた春日もわかったみたいだ。あそこで「よかった」って言ったのは、お世辞じゃなくて本心だったって後で言ってたしな。
しっかしあいつの好みは、『吹奏楽のための第二組曲』といい『アルヴァマー序曲』といい、吹奏楽の中でも古典かってくらいのクラシック寄りだったから、ああいうのもいいって言うのはちょっと意外ではあったけどな。
まあ、コンクールでノビリッシマやったオレたちが言うのもなんだけどよ。あれだって十分古典なんだし。
確か五十年前の曲なんだって、本町先生が言ってたような――。
……って、ああ。また話が逸れたか。
とにかく、さっきオレが言ったとおり、このセッションはやらないよりやったほうが断然よかったよ。
結果的に言えば、そういうことになるんだと思う。
気がつけば学校祭までもうそこまで時間もなくなってて、考えてる暇とか余裕とかも、段々なくなってきてた。
だから結局オレは、やりたいように叩き続けるしかなくて――なにを選ぶかなんて、後から考えればもうこの時点で結論が出てたんだと思う。
けれど、だからこそ春日美里は。
そんなオレを傍から見てたからこそ、他のやつらより強くそれを感じ取ってたんだろうな。




