滝田聡司の告白 16
TAB譜、ってな。
オレもそのとき初めて聞いた。
しょーじき、他の楽器の楽譜なんて注意して見なかったしなー。
だからいつもと違うのに気付かなかった。やっぱり、事前に言っておいてよかったよ。
で、石岡から聞いたまま説明すると、TAB譜っていうのは弦楽器特有の楽譜らしい。
エレキベースって基本的には、弦が四本あるのな。
音が高いほうから、1弦、2弦、3弦、4弦。
で、その四本のどの部分を押さえるかで、出る音が決まるんだ。
弦を押させるポジションは、ネックに打ち付けてある金属ごとに、1フレット、2フレットって決まってる。
だからTAB譜っていうのは四本線なんだ。それで弦を視覚的に表して、その四本のどれかに、「2」とか「3」とか、どの部分を押さえればいいかが書いてあるんだ。
どの弦の、何番ポジションを押さえればいいか。
それが明示されてるから、そのままやっていけば五線譜読めなくても音は出るわけだ。
本当は五線譜も読めたほうがいいらしいけど……確かに、こっちのがわかりやすいし、便利だわな。
いやあ、違う違うとは思ってたけど、ここまで違うとは思わなかった。
なんていうか、進化の方向が違う感じがするよなー。違う島の珍しい生き物を見た感じ。
同じ生き物だけど、それを変だって思うか、おもしれーって思うかは人によって違うんだろうな。
豊浦と春日がその辺をどう受け取るかはわかんなかったけど。
でもどっちにしろ、知らないより知っておいたほうがいいんじゃねーかってオレは思った。
だから、そのまま二人を軽音部に連れて行ったんだ。
この二人がどんな反応をしたか、それをこれから話すよ。
あ、今まで交互に話してきたけど、そんなわけで次は両方の話な。




