滝田聡司の告白 11
美原に言われて、いろんなドラムの動画とかCDとか聴いてみたよ。
最初は嫌々だったけどな。
なんか、抵抗があったんだ。オレのやりたいやつは誰かの真似事じゃねえよ、みたいなさ。
オレだけにできる、すっげえことをやりたいって。
そんなことを漠然と思ってた。全然なんにも知らないくせにな。
本当は怖かっただけだよ。
そういうすげえのを聞いたら、オレのオレらしさが消えるんじゃないかって、怖かっただけだ。
だから避けてたんだ。それまでは。
そんなことを考えてたから、いざソロをやれって言われてもオレの中にはなんにもなかった。
だから楽譜を渡されたときも、とりあえず描いてある通りにやるしかなかったんだ。
まあでも、今なら言えるよ。
そんなもん聞いたって、誰になにを言われたって。
オレのオレらしさってのは消えてなくならないんだ、って。
そんなヤワなもんじゃねーよ。
どこにいてもさ。
なにをしてもさ。
オレはオレ以外の、何者でもないんだ。
……かっこつけんなキモい?
……はい、すみません。
でもまあ、そんなこんなで美原にCD貸してもらったり、自分で買ったりしてそれからは結構聞くようになったな。
同じシング・シング・シングでもドラムソロは色んなバージョンがあった。
シンプルに叩いて、さりげなくかっこいいクールなドラム。
逆にシンバルを多めに入れたりして、派手に持っていく華のあるドラム。
ひたすら叩いてひたすらソロをやり続ける、ちょっと自己中気味の暴走ドラム。
それぞれだった。
それぞれが好きなように叩いてた。
みんな「らしく」てやりたいように叩いてた。技術もそうだったけど、それがオレにはスゲーことだと思えた。
いいなと思ったフレーズをパク……いや、参考にして、オレもやってみた。叩けなかった。
スッゲー悔しくて、オレにだってできるんだぞと思いたくて、アレンジ加えたりなんだりしながらそれからも叩き続けた。
そのうちに、シング・シング・シングのソロは段々出来上がっていった。
元はつなぎ合わせのものだ。
けど、それはオレしか叩かない、好きなものを全部込めた、オレだけのソロだった。
そうしてやっているうちに、気がついたら意外と叩けるようになってたんだ。
そしてそれは、軽音部での活動にも影響するようになった。
 




