滝田聡司の告白 10
楽器やってる女とやってない女、彼女にするならどっちがいい?
そう訊かれたらどうだろうな。ビミョーだな。
篤人はやってる女と付き合って、失敗したクチだけど。
もし、まかり間違って、ありえないけど。
万が一、いつの日かオレに彼女ができたら、どっちなんだろうな。
別れて部活やめるのは嫌だから、やってないやつかな。
それでも周りに多いのはやってるやつだから、やってるやつなのかな。
楽器やってる連中なんてさ。クセのある変なやつばっかりだよ。
豊浦とか海道とか……春日とか。
オレも含めてだけどさ。
聞いてるだけで十分なのに、自分でやろうっていうんだ。やっぱりちょっと、やってないやつとは考え方が違うよな。
吹奏楽部も軽音部も、そういう意味じゃ変なやつばっかりだった。
ワガママで人の言うこと聞かなくて、自分のやりたいことめがけて突っ走った挙句痛い目見て、それでも挑み続ける馬鹿ばっかり。
けど、そういう馬鹿のほうが好きになれるのはなんでかな。
オレも馬鹿だからかな。
わかんねえな。
まあそんなわけで、うちの学年は二名を欠いて、学校祭に向かうことになった。
皮肉なことに、それがうちの学年の結束力を増すことになった。
失わなきゃわかんねえんだよ。
ほんと、馬鹿ばっかりだ。
うちの学年は仲がいいって後輩たちから言われたけどな。こういうわけだ。
ちょっとずつ声をかけるようになってさ。
少しずつ周りの考えを知るようになった。
それが気がついたら、アンサンブルの向上につながってた。
オレたちの学年は上手いって言われてたけど、そうじゃねえんだよ。
なんとなく「こうしたらやりやすいんじゃねえかな」って、お互いにそう思ってやってたら、相乗効果で上手く聞こえるようになってただけだ。
まあそんなわけで、敬遠され気味だった男子部員のオレにも、そこそこ同じ学年の女子部員は話しかけてくるようになったんだ。
篤人がやめちまって、今度はオレもいなくなっちまうんじゃねえか、っていう考えがすごくリアルに出てきたんだろうな。今まで冗談半分だったあいつらも本気になってきたってわけだ。
そうなってから、話しかけくるようになった女子部員がひとりいる。
あー。
楽器やってるやってないじゃなくて、あいつは絶対に彼女にしたくねえな。
美原慶。
あのサックスの小悪魔はよ。




