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滝田聡司の告白 7

 ごめんなさい、幼女を泣かせてごめんなさい。


 貝島は見た目が見た目だから、泣かすとものすごい罪悪感があるよね……うん。

 普段の態度もああだからなあ。まさか、泣くとは思わなかった。

 ちょっと言い過ぎたかなって、今では反省してますハイ。


 ……あれを見てるから、本当に心配なんだよ。

 あいつ本当に、部長なんか任されて大丈夫なのかなって。


 一年経って鬼軍曹だタカ派だ言われても、あいつの根っこのところは変わってないように見えるからな。

 いつかまた泣くんじゃないかって、どうしても思っちまうんだ。


 まあ、だからこそ引退ギリギリまでオレが面倒みちまって……それもまた、まずかったかなあ、とも思ってる。

 どうせオレは先にいなくなっちまうのに。

 いつまでも世話焼けないのはわかってたのになあ。


 湊には言われたな。「その優しさは中途半端だ」って。

 ……あいつそろそろ、オレのこと先輩だって思わなくなってきたんじゃねえか?

 最近なんだか、えらい言われような気がするんだが……。

 なんで? オレ、先輩だよ? 二個上だよ?

 どうして同い年のはずの春日と、こんなに扱いが違うわけ?


 ……普段の言動のせい?


 ……。


 まあなんにせよ、オレは貝島をどうしても突き放せなかった。

 それがオレと春日の違いなのかもしれないな。


 ……いや、春日も突き放しきれてなかったか。

 なんだかんだ言って、あいつも堪えきれなくて最後は手を差し伸べちまうやつだったからな。


 そういう意味では、程度の差はあれど、貝島も湊も心配ではあるな。

 オレたちの中途半端な優しさが、これからどんな風にあいつらの行動に影響を与えるのか――それは、オレにもわからない。


 ……ごめんな。こんな先輩で。

 せめて次のコンクールの打楽器運びとか、そういうのは手伝うよ。

 客席で聞きたいとも思うけど、それ以上にオレは、舞台袖からあいつらを見てたいな。

 卒業してハイさよならっていうのはなんか、性に合わねえ。

 うちの学年はたぶん、みんなそうじゃないかな。


 話が脱線したな。


 えーと。まあそんなわけで、貝島に泣かれちまったオレは、渋々基礎練をやるようになった。

 テンポキープ、ってな。メトロノームとお友達になろうってやつ。


 最初はギプスつけて太鼓叩いてるみたいで、ものすごい窮屈に感じた。

 やっぱつまんねーな、って思ったな。できてないのもまざまざと見せつけられるし。


 けどまあ、また泣かれるのも嫌だったから、前よりは我慢して練習した。

 そのうち、ちょっとずつ見える世界が変わった。

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