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seventh story

7/

 大きなあくびをする。

 今日は休日。

 「眠い」

 なのに俺は朝早くから起きている。

 このままもう一度寝ようかと思ったけれど、その後が怖いのでしょうがなく布団から出た。

 今の時間は午前九時。

 いつもの俺なら余裕で寝てる時間帯だ。

 お前はどうだ?

 休日なら昼まで寝てるのが普通だろ?

 まあ余談はここまでにしておいて、十時までには支度を済ませねばな。

 それじゃなかったら梓に殺される。

 なんたって今日は休日。

 日曜日なのだから。

 部屋から出て階段を下りて、居間へと向かう。

 居間には紗夜子さんがいた。

 「おはようございます」

 「あら、おはよう。 早いわね八識。 いつもだったら寝てる時間じゃない?」

 「そうですけど、色々とあるんですよ」

 「梓とデート?」

 「で、デート!? い、いや違いますって、あいつから買い物に付き合って言われただけですから。 それに梓は好きな奴がいるみたいですし・・・」

 「そう」

 紗夜子さんは微笑んで朝食できてるわよ、と俺に言った。

 朝食を取っているが居間には梓の姿が見当たらない。

 俺を誘っておいて自分は寝てるのか?

 「紗夜子さん、梓知らないですか?」

 「梓ならとっくに朝食食べて、部屋に戻ったわよ」

 「そうですか」

 寝ているわけではないのか。

 朝食を食べ終え、部屋へと戻り、着替えをする。

 着替えをしてから時計を見ると少し時間があったのでベッドで横になって目を閉じた。

 コンコン、とドアをノックする音が聞こえる。

 少し寝ていたようだ。

 立ち上がりドアを開ける。

 ドアの前にいたのは梓だった。

 「家、出ようと思うんだけど・・・」

 「わ、わかった」

 二人して玄関へと向かい、家を出た。

 「で、どこに行くんだ?」

 「そうね、ゲートの近くにあるデパートがいいな」

 梓が今言ったゲートっていうのは、この街から出入りするためのところ。

 ゲートは一ヶ所しかなく、自由に出入りできるものじゃない。

 といっても、手続きさえすれば街から出ることはできるんだけどな。

 「わかった」

 ここから歩いてゲートの近くに行くには半端じゃなく時間がかかるので、JRを使うことにした。


 JRから降りて、少し歩いたところにデパートがあった。

 あることはわかっていたが、昔に数回しか来たことがないので、デパートの大きさに少し驚いた。

 「でかいな」

 「当たり前じゃない、このエリアの中で一番大きいデパートなんだから」

 梓がデパートの中へと入っていく。

 「おい、ちょっと待てって」

 その後を追いかけて俺の中に入る。

 少し店内を周った後に最上階にあるレストランのフロアに入った。

 「なに食うの?」

 「そうね、あれなんてどう?」

 梓が指さしたのは普通の学生が持っているお金じゃ完全に足りないぐらいの金額が書いてあるレストランだった。

 「え? そんなの無理に決まってんだろうが」

 「昼おごってくれるっていう約束だったじゃない」

 「それは別にいいとして、いやアレは無理だから。 別のところにしてくれ」

 「あっそう」

 梓は奥へと進んでいく。

 そうして色々な店を見てから、結局は大抵のものはなんでもそろえている店に入り、昼食を取った。


 「ふう、飯も食ったし、帰るか」

 「なに言ってるのよ、まだ何にも買ってないわよ」

 梓は洋服店の中に入っていく。

 どうせ荷物持ちなんだろうなぁ、と思いながら後をついていく。

 「この服なんかどうかな?」

 服を合わせて、俺に梓が問いかけてくる。

 「服はいいんじゃないか? けど、お前には似合わないと思うぞ」

 「そんなことないわよ」

 梓が鏡の前に立つ。

 「本当だ。 そんなに似合ってない」

 「だろ。 ・・・ん、こんな服はどうだ?」

 服を手にとって、梓に渡す。

 梓がそれを鏡の前で合わせる。

 「・・・いいかも。 じゃあ、これにしようかな」

 「そうかい。 それじゃあそれ買ったら帰るか」

 「これ終わったら別の店行くわよ」

 「マジか」

 「あたりまえじゃない」

 梓は会計を済ませて、次の店に向かう。

 「おい、ちょっと待てって」

 大きな音がした。

 梓の足元が崩れる。

 考えるより先に体が動いた。

 梓の手首を掴む。

 「痛ッ」

 腕が切れて、血が出ている。

 「きゃ、な、なにこれ」

 梓はじたばたと暴れる。

 「動くな梓。 下を見るな上を見ろ」

 梓はその一言で暴れなくなった。

 どうやらビルの一部が大きな音とともに崩れたようだ。

 周りの奴らは階段のほうへ逃げているようだ。

 原因はわからない。

 今はただ必死で梓を上げようとするが、うまく力が入らない。

 「くそッ」

 「や、八識、腕から血が出てる」

 「そんなことはどうでもいい、今は上に上がることだけを考えろ」

 とはいうものの、腕に力が入らないため今の状態を保つのが精一杯だった。

 「どうだ? 上がれそうか?」

 「無理みたい。 手や足をかけるところがなくて・・・」

 チィッ、と無意識に舌打ちをする。

 「誰か、誰かいないのか」

 大声で助けを求める。

 「八識」

 聞いたことのある声が耳に入ってきた。

 顔をまわしてその人物の顔を見る。

 「りょ、亮太か」

 「なにやってんだ。 早く逃げないとやばいぞ。 火の手だって上がってきてる」

 「それよりも手を貸してくれ、梓が落ちそうなんだ」

 「梓? ああ、葉月ちゃんか。 葉月ちゃんを掴んでいるのか?」

 「ああ、だから助けてくれ」

 「葉月ちゃんってどうせ異能者と人間のハーフだろ」

 一瞬耳を疑った。

 「お前、なに言って・・・」

 「そんな奴とっとと落としてお前もこっちに来いって、じゃないと逃げ遅れるぞ」

 「そんなことできるわけないだろ」

 そう叫ぶ。

 「八識、誰かいるの?」

 「ああ、亮太が・・・。 亮太、いいから手を貸してくれ」

 「嫌だよ、異能者なんて助けたって意味ないだろ。 俺は逃げるぞ、八識、お前もさっさと来いよ」

 亮太は階段のほうへ去っていく。

 「亮太ぁ、亮太ぁああああああ」

 叫ぶが亮太の姿は見えなくなっていく。

 「八識、どうしたの?」

 「な、なんでもない」

 「・・・なにこれ、燃えてる臭いがしない?」

 さっき亮太が火の手が上がってるって言ってたな。

 「その辺に火がついてるんだろ」

 「え?」

 「そんなことどうでもいいんだ、梓もう一回見てくれ。 その辺に手や足がかけられる場所はないか?」

 「・・・ないみたい。 八識は私のこと持ち上げられない?」

 「無理だ。 うまく力が入らない。 このままの状態を保つのがやっとだ」

 「・・・・・・そう。 じゃあ、八識、手を離して」

 「え?」

 耳に届いた言葉は俺を凍りつかせた。

 「八識、手を離して。 じゃないと八識まで・・・」

 「嫌に決まってんだろうが」

 怒鳴ってしまった。

 「くそ、上がれよ。 上がってくれよ」

 梓を持ち上げようとするが、やはり力が入らない。

 「八識、私ね・・・」

 梓が俺に話しかけてくる。

 「私ね、八識のことが好きだったんだ」

 梓の言葉に俺は戸惑った。

 「えっ、だってお前、好きな人がいるんじゃ・・・」

 「前に言ったじゃない、私は八識以外の男の知り合いがいないって」

 なんでそれを今ここで言うんだよ。

 「八識には私の気持ち、最後に知ってて欲しかったから」

 本当にお別れみたいじゃねぇか。

 何度も梓を上げようとするが、結局、腕には力が入らない。

 両手で掴んだら俺まで梓と落ちちまう。

 もうこれ以上、ここにいると火に飲まれるだろう。

 くそ、くそ、くそぉおおお。

 俺の頬に涙が流れた。

 自分じゃ大切な人を守ることが出来ない無力感。

 誰でもいい、誰か、誰か俺に手を貸してくれ。

 そう強く思ったとき、後ろから声が聞こえた。

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