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sixth story

6/

 「それじゃあな。 元気にしてろよ」

 男の人は小さな俺の頭をなでてくる。

 「八識、ちゃんと紗夜子さんの言うこと聞くのよ」

 女の人は小さな俺の体を抱きしめてくる。

 そして男の人と女の人はこの街から出て行った。


 目が覚めた。

 ずいぶんと懐かしい夢を見ていた。

 あの夢は親父たちが街から出て行くときのことだった。

 「何で今更そんな夢を・・・。」

 親父たちが出て行ったのは俺が五歳のとき。

 それから俺は、この葉月家に居候として暮らしている。

 「ふぁ~」

 それにしてもまだ眠い。

 布団をかぶり、眠りにつこうとする。

 コンコン、とドアをノックする音。

 いつも決まって俺を起こしに来るのは梓だ。

 「朝よ、起きなさい」

 「あいよ」

 しょうがないので、起きるとするか。


 朝食を食べて学園に向かう。

 いつもどおりの朝。

 他愛もない会話をしながら梓と学園に向かう。

 学園の校門を通ろうとしたとき、一人の学生に話しかけられた。

 俺ではなく梓が。

 「梓さん」

 話しかけてきた学生はメガネをかけた男。

 「昨日のこと考えてくれましたか?」

 昨日のこと?

 まあ、俺には関係がないので校舎に向かおうとする。

 その俺の腕を梓は掴んで、腕を組んだきた。

 「あん?」

 「ごめんね。 私たち付き合ってるから」

 え?

 えぇーーー。

 「な、なにを・・・」

 自分の顔が赤くなってるのがわかる。

 いいから話し合わせなさい、なんて耳打ちしてくる梓もそのようだ。

 「だから、君とは付き合うことはできないんだ」

 「そう、ですか」

 それじゃあ、なんていいながら梓は、俺を校舎へとぐいぐい引っ張っていく。


 「おい」

 教室にはいづらくて、屋上に来ている。

 「なによ」

 「むちゃくちゃだな、お前は」

 「わ、悪かったわね。 とっさだったのよ」

 「そりゃわかるけど、別にああしなくてもよかったんじゃないか?」

 「だからごめんって」

 そう謝られてしまうとからかうこともできない。

 「それじゃあ、帰ったらチーズケーキ作ってくれ」

 「チーズケーキ?」

 「ああ、前約束してたやつ。 それで許してやるよ」

 そう言って梓に教室に戻ることを伝えて屋上を出る。

 教室に入るなり、亮太が絡んでくる。

 「やっぱり、付き合ってたじゃん」

 「ほっとけ」

 「で、葉月ちゃんとどこまでいったの?」

 「なんでそういう話になるんだ。 第一、付き合ってないって」

 「またまた、そんなこと言ちゃって」

 「付き合ってないのは本当だ。 信じるにしろ信じないにしろそれはお前の勝手だ」

 それだけ言って俺は自分の席に着いた。

 亮太がなにか言っていたがよく聞き取れなかった。


 学園が終わり、今は自分の部屋にいる。

 今日は午前中で学園が終わる日だったので授業も楽だった。

 さて、問題はこれからだ。

 時計はじきに十二時を指そうとしている。

 もちろんまだ昼食は取っていない。

 紗夜子さんは夕方くらいに帰ってくるので昼食を作ってもらうのは無理だろう。

 とりあえず居間へと向かう。

 居間に行くとキッチンに梓が立っているのが見えた。

 「なにしてんの?」

 梓に近づいて話しかける。

 「なにって昼食作ってるの、見てわからない?」

 「そりゃそうだな」

 「そこら辺に座って待ってなさい。 もうちょっとでできるから」

 「は? なにが?」

 「ちゅ・う・しょ・く・が」

 「お前馬鹿だな、待ってたって昼飯が出てくるわけないだろ」

 そうこうしている間に梓がキッチンからでてきた。

 「はい」

 そう言って一つの皿を手渡された。

 「チャーハンじゃん」

 「嫌いだった?」

 「嫌いじゃないけど・・・、これどうすんの?」

 「食べればいいじゃない」

 「あ?」

 うん?

 少しの間、足りない頭を使ってみる。

 「これ食ってもいいのか?」

 「そう言ってるじゃない」

 「これ食ったら見返りでも求めてくるのか?」

 「そんなわけないでしょ」

 梓はあきれた顔で俺を見てくる。

 「そ、そうか。 さんきゅ」

 そういってテーブルについて、チャーハンを食べ始める。


 昼食を食べ終わった。

 梓はまだ居間にいたので声をかける。

 「うまかった、昼飯さんきゅ」

 じゃあ俺、部屋に戻るから、と言って、部屋に戻ってベッドへと飛び込んだ。


 ドアをノックする音がする。

 その音で眠りから目を覚ました。

 「どうぞ」

 ベッドに横になったまま、眠たい声のままドアの向こうの人にそう告げた。

 入ってきたのは梓だった。

 「おう、どうした?」

 「はい、これ」

 梓は手に何か持っている。

 眠たい体に鞭を打って、体を起こして、梓が持っているものを確認する。

 梓が手に持っているもの。

 それはチーズケーキだった。

 「これ・・・」

 「作ったのよ。 あんたと約束してたから・・・。 あとで感想聞かせてよね」

 梓は部屋に備えてあるテーブルにチーズケーキを置き、出て行こうとする。

 「梓」

 「なによ」

 「お前は食わないのか?」

 テーブルの上に乗っているチーズケーキは1ホールある。

 「えっ?」

 「だからお前は食わないのか? それとも自分の分は他によけてあるのか?」

 「作ったのはそれだけだから、他にチーズケーキはないわよ」

 「だったら、一緒に食べないか? せっかく作ったのに作った奴が食べないなんてさ」

 「そう、だね」

 ナイフとフォークと皿は持ってきてくれていたが、フォークと皿は一人分しかなく、梓がフォークと皿を取りに行って戻ってきた。

 「じゃ、食べようぜ」

 そう言って俺はチーズケーキを切り分け、二人の皿に乗せる。

 切って皿に乗せたチーズケーキを口に運んだ。

 梓はまだ食べず、俺のほうを見ている。

 「・・・どう?」

 「・・・・・・お前、味見したか?」

 「や、やっぱりおいしくなかった? 前はチーズケーキくらい作れる、とか言っちゃったけど本当は作るの初めてで・・・」

 「・・・これ、めちゃくちゃうまいぞ」

 「え?」

 「いや、マジで。 梓も早く食ってみろって」

 そういわれて、梓がチーズケーキを口に運ぶ。

 「・・・本当だ、おいしい!!」

 「だろ、さずが梓だな」

 と、当然じゃない、なんていいながら梓は次々と口に運ぶ。

 その後、俺と梓は紗夜子さんが帰って来るまで話をしながらチーズケーキを食べていた。

 まあそのせいで梓は夕食を残していたけどね。

 夕食が終わった後は、部屋に行ってベッドで横になると、そのまま深い眠りへと堕ちていった。

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