third story
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「はぁ~疲れた」
本当に疲れた。
もう一人の俺に騙されるわ、梓に殴られるわ、教師に説教食らうわで散々な一日だった。
歩いていると学園の玄関に梓がいた。
「なにやってんだ梓」
「遅い」
「なに言ってんだ? 話しがかみ合ってないぞ」
「だから遅いって言ってんのよ」
だめだ、話がかみ合わない。
しかも遅くなったのはお前のせいじゃないですか梓さん。
はぁ、とため息をつく
「わかった、わかった。 遅くなったのは謝る。 だからさっさと帰ろうぜ」
何で謝ってんだろ、なんて思いながら話す。
「謝るんなら許してあげてもいいわ。 じゃあ帰るわよ」
「へいへい」
世の中って理不尽なこといっぱいあるよね。
俺は梓と学園を出て、家へと向かった。
家に帰るとテレビからニュースが流れていた。
「昨日Cブロックのエリア13が異能者によって跡形もなく潰されました。 今回の異能者たちは前回エリアを潰して回った善と呼ばれる組織とは別の組織だったようです。・・・・・・」
善。
異能者たちで作られた組織。
善の目標は俺たち人間を潰して回ること。
今回の組織は多分、善に賛成、あるいは賛同できるやつらが行ったことだろう。
Cブロックのエリア13か・・・。
ここのエリアもCブロックだが、ここまで被害が来ることないだろう。
俺はテレビを消して自分の部屋へ戻った。
部屋で本(漫画)を読んでいるとコンコン、とドアをノックされた。
「どーぞ」
入ってきたのは梓だった。
「なんだ梓? 用でもあるのか?」
「あるから来たんじゃない」
がー、と来た早々怒る梓。
怒るとふけるぞ、なんて言おうと思ったが面倒なことになりかねないのでやめた。
「怒らせてるのは誰よ」
「・・・人の心の中を読むんじゃねぇよ」
「読んでないわよ」
「じゃあなんでわかった?」
「嫌というほどあんたといるんだからそれくらいわかるわよ」
俺は少し感心した。
・・・少しだけな。
「で、用って何だよ?」
「今度の日曜って暇?」
「誰が?」
「あんたに決まってんでしょうが」
「ああ、俺? 俺は暇だが・・・。 それがどうした?」
「じゃあ、一緒に服買いに行くの付き合ってよ」
梓から誘ってくるなんて珍しいな。
そこで俺はひらめいた。
「なんだ好きな人でも出来たのか?」
梓の顔が赤くなる。
「その様子だとそうみたいだな。 いいのか俺で? お前の好きなやつが誰だか知らんが、いくら男だからってたいした参考にならないかもしれないぞ」
まぁ学園にほとんど行かない梓が俺以外の男の知り合いがいる、なんてことはないだろうけどね。
「あんたでいいのよ。 というよりもあんた以外の男の知り合いがいない」
「やっぱりか。 で、今日学園行ったときに、いい奴でもいたのか?」
「何であんたに言わなきゃならないのよ」
「そうかい」
「・・・で、一緒に行ってくれるの?」
「外で昼おごってくれるんなら別にいいけど」
「わかった。 日曜、10時には家出るけどそれでいい?」
「なんでもいい、まかせる」
「そう、じゃあ日曜よろしくね」
「あいよ」
梓はそれだけ言うと出て行った。
もう少しで夕飯だな。
夕飯を食べ終え、部屋へと戻ってきた。
「ふぅ、食った食った」
部屋にかけてある上着を手に取り、部屋を出た。
階段を下りて廊下に出ると梓に会った。
「どこ行くの?」
「買い物ってとこかな」
「ふーん、じゃあ私も行っていい?」
「遠慮しておく」
「なにそれ、全ッッッ然返答になってないんだけど」
「欲しいものがあるなら買ってきてやるから家にいろって」
「じゃあ食後のデザートが欲しいな」
「あいよ」
頼んだわよ、と言って、梓はひらひらと手を振って階段を上がっていった。
俺は靴を履いて玄関を出た。
かつん、かつん、かつん、かつん・・・・・・
一人、夜道を歩く。
あいつが動いていないか確認しながら歩く。
右へ左へ道を曲がる。
家を出て数時間、ようやく町外れの廃工場に着いた。
重い扉を開けて中に入る。
かつん、かつん、かつん・・・・・・
響く足音。
廃工場の奥にいるのは俺。
「よう」
もう一人の俺は俺を見ている。
「話があってきたんだが・・・」
「君の言いたいことはわかってるから言わなくてもいい。 どうせ俺の知り合いを殺すな、だろ」
「・・・そうだ」
「別に殺さなくてもいい。 だが後悔するのは君だ」
「後、悔?」
「ああ、後悔だ。 けれど後悔したときにはもう遅いんだよ」
「遅い? なにが?」
「それはいずれわかるさ」
もう一人の俺は俺にゆっくりと近づいてくる。
「僕が前、人間は過ち繰り返すって言ったのを覚えているかい?」
「ああ」
「そして君は人間は変われると言っていたな」
「それがどうかしたのかよ」
もう一人の俺は俺の目の前で止まった。
「人間は変われないよ」
「なぜだ。 それはまだわからないだろ」
「そうかな。 僕にはわかるよ。 変われないからこそ今のこの国の状態があるんだろう」
「どういうことだ?」
「この国は何でブロックやエリアで分かれると思う? それは人間と異人を分けているからだよ」
「は? そんなことはないだろ、現に紗夜子さんたちはここで暮らしているじゃないか」
「そうだね。 けれどそれはほんの一握りだ。 ほとんどのブロックに異人は少ししかいない。 これはどういうことかわかるよな?」
「・・・つまり昔の習慣が今も残っていると?」
「そういうことだ。 だからそれを知った善が動いているんじゃないのかな。 まあそれは憶測にしか過ぎないけどね」
「だからといって人間は変われないわけでないだろう?」
「変われないさ、絶対に」
「だったら。 ・・・だったら俺が変えてやるよ」
「・・・もちろん、君は言葉の意味は理解できているんだよな?」
「ああ」
変えるということ。
それはこの体制を作ったものそのものを変えるということ。
この体制を作ったのは昔の政府。
今もこの体制が続いているということは今の政府も容認しているということだ。
そもそも、政府は政府ブロックの中にあり、政府ブロックはこの国のどこかにあると言われているだけでどこにあるかはわからない。
そして政府には国一つはゆうに潰せる軍事力を持っている。
「そうか、意味が理解できているのであれば別にいい。 ならさっさと、この工場に外にいる女と帰ったらどうですか?」
女?
俺は工場の扉を見る。
そこには梓が扉の影から顔を出していた。
はぁ、ため息をついて梓の元に駆け寄る。
「なにやってんだ」
「い、いや、ちょっと散歩をね・・・」
「・・・今までの話聞いていたのか?」
「少し遠くて聞こえなかったかな・・・」
疑いの目で梓を見る。
「ほ、本当だって」
「そうか」
工場の中に目をやるがそこにはもう一人の俺の姿はなかった。
「・・・帰るか、デザートでも買ってさ」
「そ、そうね」
コンビニによってデザートを買って家に帰った。




