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second story

2/

 玄関に入ると紗夜子さんがいた。

 「紗夜子さん、ただいま」

 葉月はづき 紗夜子さよこ、葉月 梓の母親であり、今現在の俺の保護者である。

 「あらま、ひどい怪我ねぇ。 今直してあげるからそこ座って」

 「だとよ、降ろしてくれ」

 梓は俺を降ろして居間へと向かっていく。

 「あずさぁ~」

 「なによ」

 「色々ありがと」

 「あ、当たり前じゃない。 一緒に暮らしてるんだから当然よ」

 ずんずんと居間のほうへと消えていった。

 「それにしても、久しぶりねぇ」

 「なにがですか紗夜子さん?」

 紗夜子さんが傷口に手を当ててくる。

 「昔は梓にずいぶんおんぶしてもらってたじゃない? 最近じゃあそんなことなかったからねぇ」

 紗夜子さんが手を当てている傷口がみるみるうちに治っていく。

 「そうですね。 俺、昔は梓よりちっちゃかったからなぁ、怪我したら梓に背負ってもらってよく紗夜子さんのところに行きましたね。 まぁ今でも梓と同じくらいの身長なんですけどね」

 「そのうち大きくなるから大丈夫よ」

 右手と左手の傷はもうほとんど治っている。

 「そうだといいんですけどね」

 苦笑しながらもう一人の自分のことを思い出していた。

 この世界には人間と異人いじんというものがいる。

 人間は俺たちみたいな普通の人間のことをいい、異人は人間ではない力を持った人のことを言う。

 異人は普通の人間とはまったく変わりはなく、違うところはただ特別の力を持っているということだけだ。

 彼ら異人は異能者ともいい、紗夜子さんのように人間を嫌ってない人たちもいるのだが、その大半は人間を嫌っている。

 人類は昔、異能者たちを虐殺、迫害、さらには奴隷としてまで扱っていたことが原因だろう。

 まぁ、それ以前からも異能者たちとの殺し合いはあったようだ。

 異能者は一人一つ特化した能力を持っていて、紗夜子さんの場合だと治癒能力を持っている。

 梓は人類と異人の間に生まれた子供だが、能力は発現していて記憶を操作する能力を持っているらしい。

 しかし、もう1人の俺はおかしい。

 剣を出すこと、そして瞬時に消えること、あいつは能力を二つ持っているのか?

 能力は一人一つの上に、異能者でなければ能力は使えない。

 そもそも、八識という人間が二人のいること自体がおかしい。

 考えても考えても答えは出てこない。

 「八識ちゃん、治療終わったわよ。 ほら、急いで朝ごはん食べないと学校に遅刻するわよ」

 「紗夜子さんありがとう。 それじゃあ飯をいただきますか」

 これ以上考えても答えは出てこないので朝食を食べることにした。


 飯を食べようと思って居間に行くと見慣れない光景が目に入ってきた。

 「・・・なにやってんでしょうか梓さん?」

 「なにって、ご飯食べてるんだけど見てわからない?」

 「そういうことじゃねぇよ。 何でお前が制服なんか着てるんだって聞きたいんだよ」

 「なんでって、それは私が月読つくどく学園の生徒だからじゃない」

 「・・・・・・お前、ほとんど学校来ないだろ」

 「でも今日は登校するのよ」

 「だからなんでだよ」

 「・・・そんなに私が学校に行って欲しくないわけ?」

 「いや、そういうわけじゃないけどさ」

 梓は学年が上がってから一度も登校していない。

 けれど頭がいいため学校からはテスト以外来なくてもいいですよ、なんて言われている。

 俺と亮太は同じクラスなのだが梓は学校に来ないため、亮太が梓を知らないのは当たり前だったりする。

 ちなみに梓と俺は同じクラスだ。

 「はやくご飯食べないと遅刻するわよ」

 「わかってる」

 朝食を食べて家を後にした。


 「そういえばもう一人の八識、はこの中にいるって言ってたわよね。 はこってどこだかわかるの?」

 「それはあれだよ、あいつはこの街のことをはこって言ったのさ。 街は高い塀で囲っているだろう、だから街のことをはこって言ったんだと思う」

 まぁ、高い塀で囲っているのはこの街だけじゃなく、この国の全ての街なんだけどね。

 「ふーん、じゃあもう一人の八識がどこにいるか分かるの?」

 「分かるよ、今は廃工場のところにいるな」

 分かるのは当然だ。

 もう一人の八識は結局のところ八識なわけで、自分の居場所は自分で分かるのは当然だ。

 故にあいつは俺の居場所がわかるし、俺もあいつの居場所がわかる。

 「さて、もう少しで遅刻になる。 少し走るぞ」

 「本当だ。 時間やばいわね」

 小走りをしながら学園へと向かう。


 「ふぅ、遅刻するかと思った」

 チャイムぎりぎりで教室に着いた。

 「早く座ってくださ~い。 ホームルーム始めますよ~」

 小林こばやし先生が教室に入ってきて、ホームルームが始まり、一時間目、二時間目、三時間目と授業が続いていった。


 三時間目の授業の途中でもう一人の俺がとてつもない速度で移動し始めた。

 移動している方向の先にあるものそれは・・・・・・

 「ッ!!」

 家の方向に移動している、ということは目的は紗夜子さんか?

 椅子から立ち上がる。

 「どうした?」

 「先生、体調が悪いので帰ります」

 「・・・どう見ても体調が悪いようには見えんのだが・・・・・・」

 「失礼します」

 「お、おい」

 教室から飛び出した。

 ここから家まで15分。

 あいつの速度から考えてあっちは5分程度でついてしまう。

 「くそッ、無事でいてくれよ紗夜子さん」

 全力で家へ走り出す。


 もう少しで家に着く。

 まだあいつは家にいるようだ。

 ということはまだ紗夜子さんは無事なのだろう。

 「えっ?」

 ドアノブに手をかけようとしたそのとき、あいつが家の中から消えた。

 あいつがいるのは家ではなく学校へと変わった。

 「くそっ、はめられた!?」

 今学校ではちょうど昼休みというところだろう。

 急いで学校に戻ることにした。



 「まったく、なんであいつは帰ったのよ」

 ここは屋上で、今は昼休み。

 幼馴染は授業中に帰るし、他の人たちからは珍しいものでも見たようにじろじろ見られるし、たまに学園に来てこれじゃあ先が思いやられるわね。

 ばたんと屋上のドアが開いた。

 はぁはぁと肩を上下にして息をする幼馴染。

 「やっと見つけた。 戻ってきたら教室にいなかったから探したよ」

 「私がどこにいようと私の勝手じゃない。 大体あんた今までどこに行ってたのよ?」

 「いや、ちょっとね。 もう一人の俺が動き始めたから少し気になったんだ」

 「ふ~ん、それで? もう一人の八識はいたの?」

 「いなかった。 もう一人の俺はどうも今この学園にいるらしい」

 「えっ?」

 私は耳を疑った。

 「だから、もう一人の俺はこの学園の中にいる。 狙いはまた亮太かもしれない。 お前はどう思う?」

 「・・・・・・そうね、でも梶くんだけが狙いって言うわけじゃないだろうし。 もしかしたら違う人を狙っているのかも」

 「そうだな。 ・・・う~ん、学園にいるのは分かるんだがどうも詳しい位置までは分からない」

 「居場所が分かるんじゃなかったの?」

 「そのはずなんだけどなぁ」

 頭をぼりぼりと掻く幼馴染。

 「じゃあ手分けしてもう一人の八識を探し出しましょう。 私は一階から探すわ」

 屋上の扉へと足を向ける。

 駆け寄ってくる幼馴染。

 「そうか、それじゃあ頼むな」



 ダンダンダンダンダン・・・・・・

 階段を急いで駆け上がる。

 目的地はもうすぐだ。

 そこに必ずもう一人の八識がいる。

 ドアを開けてその場所へ入った。

 屋上では幼馴染がもう一人の俺にハイキックを喰らわせていた。

 地面に倒れるもう一人の俺。

 今来た俺には何どうなっているのかわからない。

 「どーなってんだ?」

 思わずそんな言葉が口から漏れた。

 幼馴染が俺に向かって指を指す。

 「なんだよ」

 「授業中に」

 近づいてくる幼馴染。

 「教室を」

 もう手を伸ばせば届くところにいる幼馴染という名の梓。

 「抜け出してるんじゃないわよ」

 思いっっっきり殴られた。

 梓、普通に痛いぞ。

 「何で殴るんだよ」

 「悪い子には鉄拳制裁ってやつ」

 「それじゃあ、あいつもか?」

 倒れているもう一人の俺を指さす。

 「そうね。 私を騙そうとした罰ね」

 「くっ、なぜ分かった? 僕がそいつじゃないと」

 「あんたしゃべりすぎよ。 この八識バカは大事なことほど私なにもしゃべらないわ」

 「八識と書いてバカと読みやがったなてめぇ」

 「じゃあなぜあなたは僕の存在を知っているんだ?」

 「それはこの八識バカがぽろっとしゃべったところを私が聞きだしたからに決まってるじゃない。 そのときのことは当の本人はあなたのことは夢だって言っていたわね」

 「俺のことはスルーか? そしてまた八識と書いてバカと呼びやがったな」

 「まったく、くだらないミスをしたな」

 「そのとおりね。 もっと勉強してからかかって来なさい」

 「そうさせてもらうよ」

 もう一人の俺はまた瞬時に消えた。

 「終始俺を無視しやがって」

 「ああ、そうそう。 八識」

 「なんだよ」

 「あなたが教室を出て行ったあと、教師が怒ってたわ。 「学園にきたら私のところまでくるように」だって。 伝えたわよ」

 「行かないよ、どうせ怒られるだけだろう。 それが分かってて行くバカがどこにいるんだ?」

 「ここにいるじゃない」

 「俺を指差すんじゃねぇ。 てゆうかなんで携帯なんてものを取り出してるんですか梓さん」

 嫌な予感しかしないのでとりあえず屋上から出ようと後ずさりしていたところ、どすん、と背中に何かがぶつかった。

 「悪ぃな」

 後ろを振り向くとそこには俺が授業を抜け出したときにいた教師が携帯を持って立っていた。

 「悪いですな。 俺ちょっと腹が痛いんで帰ります」

 教師の横を通り抜けようとすると肩に手を回された。

 「八識、そんなにオレの授業が嫌いか?」

 「いや、別にそういうわけじゃなくてですね。 あれには深い深いわけがあって・・・・・・」

 「そうか、言い訳なら職員室で聞いてやるちょっと来い」

 「ちょ、ちょっと待てって。 梓、助けてくれ」

 梓はこっちを見ながらニヤニヤと笑っている。

 さすがは教師を呼んだ張本人、助けてくれる気なんてさらさらない。

 「ほら八識、職員室まで来いって」

 そのままずるずると職員室まで連れて行かれた。

 そのあと学園が終わるまで説教タイムだったのは言うまでもない。

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