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stage1 三撃目 『消えた弾丸』

渚食堂を出るのとほぼ同時に俺のケータイが鳴った。


「んっ。誰だ?」


ポケットからケータイを引きずり出す。


「蒲原から電話みたいだな。」


パカッと携帯を開き通話ボタンを押す。


「もしもし、蒲原か。どうした?…ああ。了解すぐに向かう。」


ボタンを押し携帯を再びポケットに押し込む。


「何かあったのか?」


「ああ、指名手配中の犯人が見つかったらしい。」


「良かったな。確保しにいくのか?」


「残念ながら、奴はもう真実を語れないようになっちまったみたいようだけどな。」


「死んでたのか。」


「とりあえず、現場に向かおう。すぐ近くだから。」


俺は、通りかかったタクシーを止め、現場に向かった。






現場近くには、4、5台ほどパトカーが止まっていた。


「ご苦労様です。SAAFの柳刃です。」


警察手帳を見せ、テープをくぐる。


「早かったな。こっちだ。」


蒲原が、路地裏から出てきて手招きする。


俺と桔梗は、蒲原について路地裏に入っていく。


2つほど角を曲がると、事件源の現場があった。


遺体はすでに運び出されてシートがかぶせられている。



遺体をみる前に、男が亡くなっていた場所を見ることにした。


「どうやら、ここで殺されたみたいだな。」


男がもたれ掛かっていた形に白いラインがかかれている。


「奪われたものは、あるのか?」


桔梗が蒲原に問う。


「男の持っていた財布には金がぎっしりと詰まってたからな、おそらく物取り目的じゃないだろう。」


「となると、恨みか?」




俺は、遺体に近づきシートをめくる。


男の額には、くっきりと弾痕が残っている。


「直接的死因は、見ての通り脳天を打ち抜かれたのが死因だ。」


「一発で脳天を打ち抜くということは、やっぱり素人の犯行じゃないか。」


「ちなみに、コイツはなんの指名手配犯なんだ?」


「武器、麻薬の密輸、オマケに半年前の西沢山荘事件の黒幕だ。」


「消されたんだろうな…。」


桔梗は、しばらく目をつむって何かを考えていたが、おもむろに立ち上がるとさっきの現場に歩いていった。



「龍司、少しいいか?」


「ん?…いいけど。」



俺も、立ち上がり桔梗の横に立つ。


「男は、ここで殺された。」


桔梗は、現場を見据える。


「ああ、頭を打ちぬかれてな。」


俺は、当たり前の答えを返す。


「じゃあ、何で弾丸の跡が残ってないんだ。」


そう言われて、目の前の現場をもう一度みる。


現場は、狭い路地裏で袋小路になっている。


男は、壁にもたれ掛かるようにして死んでいた。


それを物語るように後ろの壁には、血が飛び散っており、地面は流れ出た血で染まっている。


だが、その壁には男の頭を貫いたはずの弾がめり込んでもいなければ、当たった痕跡すら残っていない。


確かに、変だ。


頭を打ち抜かれたのなら弾が残っているはずだ。


なのに、現場には弾の当たった跡すらない。


「そう、男を殺したはずの弾丸が見つかっていないんだ。」


蒲原が俺たちの後ろに来る。


「一体、どういうことなんだ?」


「この事件、相当深い何かが隠れてるぞ。」


桔梗は、そう言い顎に手を当てた。


消えた弾丸。…弾丸?


そう言えば、昨日強行捜査した工場で妙な銃弾があったな。


まさか、あの銃弾と何か関係が?


「蒲原、昨日の事件で押収した弾の話なんだが。」




「そうくると、思ったよ。」


蒲原は、ポケットから取り出した箱から赤いラインが2本入った銃弾を手に取った。


「こんなこともあろうかと、昨日のうちにパクっておいたぜ。」


「お前、自分で撃ってみたかっただけだろうが。」


「やっぱバレた?」


…たく、そんなんだから始末書ばっか書かされるんだよ。


「馴れてるから平気だ。」


「いや、馴れられても困る。誰が、この前の体育館半壊事件の謝罪に回ったと思ってんだ。」


「マジでスイマセン。」


「まあ、取りあえずこの弾について調べないとな。」


「それなら、手っ取り早い方法がある。ちょっと待ててくれ。」


桔梗は、そう言ってどこかに電話をかけだした。


「もしもし、桔梗だ。ああ、A2を使用させてくれないか。分かった、協力感謝するぞ。」


パチンと携帯を閉じこちらを振り向く。


「使用出来るみたいだから行くぞ。」


「ど、どこに?」


「何処って、自衛隊の野外射撃所だ。実際に発砲するのが手っ取り早いだろ。」


桔梗さん、それって手っ取り早くありません?


て言うか、何で自衛隊の野外射撃所なんて使えるの!?


どんなツテを持ってるんだよ!


何だか、ますます桔梗の謎が深まる気がする…。


20分もしないうちに自衛隊の迷彩柄のジープが一台やってきた。


その間に、紅葉も合流してきて、SAAFの面子は自衛隊の野外訓練場に向かった。


後部座席の窓から見える景色は、建物やビルから一転し、見えるのは木々ばかりである。


「なあ、紅葉は何してたんだ?」


俺は、外の景色を見るのに飽きたので、助手席に座っている紅葉に話しかける。


「わ、わたし?ちょっと用事があって。帝都ツリーに行ってた。」


帝都ツリーに行ってたのか、偶然の一致だな。


「奇遇だな。私達も午前中に帝都ツリーに行ってたぞ。」


さっきまで、俺と同じように隣の席で外を見ていた桔梗が口を開いた。


「へぇ〜。私達ってことは、後誰といってたの?」


紅葉が振り返る。


「龍司に帝都案内をしてもらってたんだ。」


「柳刃が帝都案内か〜。なかなか、抜かりがないな。」


ちょ、蒲原。余計なこと言うんじゃねぇ!


それじゃ俺が、桔梗をねらってるみたいな言い方じゃねぇか!


「いや、家が一緒」


「だー!!」


桔梗までも余計なことを言いそうになる。


…っていうか言っちゃった。


「家が一緒って。ど、どういうこと?」


ヤバいぞ。


紅葉がよからぬ妄想はじめかねん。


しかも後ろには蒲原がいるしな後々面倒なことになるのはゴメンだ。


「じ、実は、昨日姉さんが飲み過ぎちゃって桔梗が送ってきてくれたんだよ。だから、そのお礼にな!」


俺は、素早く紅葉と蒲原の死角で桔梗にアイコンタクトをとる。


『頼むから、俺の話に今は合わせてくれ。』


『分かった。』


「昨日は課長が飲み過ぎてな。龍司の家まで送ったんだ。」


「そ、そうなんだ。」


いかん!まだ疑ってる。


話をずらさなくては。



「そうだ、蒲原は何してたんだ?」


「俺か?俺は、午前中は銃を整備に出しに行ってたけど。」


ああ、宮川のじいさんの所か。


そろそろ俺のミネベアも整備に出さないとな。


「もうすぐ着きますよ。」


運転していた若い自衛隊員の男性が言う。


ふぅ。何とかやり過ごせたな。





野外訓練場に到着した俺たちは、早速あの銃弾の試し撃ちをすることにした。


「この弾を、一発込めての。」


ガチャリ。


蒲原が、一発だけ弾をマガジンに装填する。


「誰が撃つんだ?」


蒲原は、ウキウキしたように聞いてくる。


「うーん、蒲原に任せる。」


「私も。」


「私もだ。」


「よし、この蒲原斎。華麗に撃ってやるぜ。」



蒲原は、拳銃を持って射撃体制をとる。


聞いた話が正しければ、世にも信じがたいことが目の前で起こるはずだ。



「蒲原、片手で撃つな。両手で撃て。」


一応、蒲原に警告する。


「はいよ。それじゃあこの弾のすごさを見せてもらうぜ。」拳銃の安全装置セーフティーを解除して、10メートル先におかれた、人形の頭にサイトをあわせる。


そして、そのまま引き金を引いた。


ドンッ!


9mmパラベラム弾とは思えない重々しい発砲音ともに飛び出す弾丸。




「なっ!?」


「えっ!?」


俺の横で驚く桔梗と紅葉。


二人が驚くのも無理はなかった。




飛び出してきたのは、金属の弾丸ではなく。


赤い光の弾丸だった。




真っ直ぐ飛び出した光の弾丸は尾を引きながら人形の頭に直撃した。




「やっぱりな…。」


「やっぱりって、知ってたのか!」




「いや、アイツから聞いた話だから初めはただのウワサだと思ってたんだが、まさか実在するとはな。」


「り、龍。この弾は一体なんなの?」


「取りあえず、人形を見に行ってみよう。話はその後だ。」


頭を打ち抜かれた人形のそばに向かう。


現場と同様にするために、人形の後ろに板で壁を作っていたのだが、傷一つない。


「弾痕がない!」


再び驚くの紅葉。


「コイツが、消える弾丸の正体だったのか。」


「し、正体と言われても私には何も分からないんだが。」


「この弾はレーザー弾だよ。」


「「レーザー弾!?」」




蒲原と紅葉がハモる。


息合ってるな。


「レーザー弾…。!それなら、アメリカにいた頃に聞いたことがあるぞ。何でも、対象物だけにダメージ与える非現実的弾丸。」


「そう、コイツは光の尾を発して飛ぶ姿から別名Shooting star(流れ星)って呼ばれる弾丸だ。」


「マジかよ!」


「俺たち、相当ヤバい山に足つっこんじまったみたいだな。」


「龍、どうする?まずは課長に連絡入れる?」


「いや、報告は俺が後でしておく。先ずは、あの引きこもりから話を聞くのが先決だ。」


「引きこもり?」


桔梗は、首を傾げる。


「SAAF屈指の情報通。まあ、ちょっと性格あれだけどね。」


苦笑いの紅葉。


「アイツのせいで、龍司の嘘デート話に何度付き合わされたことか。」


めちゃくちゃ悔しがる蒲原。


蒲原、おまえ何度騙されたら分かるんだよ。少しは学習しろよ。


「相変わらず、蒲原はバカねぇ。」


「…くっ。言い返せん。覚えとろよ紅葉!」


「ハイハイ。私が現役のうちに頼むわよ。」




蒲原完全に遊ばれてるな。


「龍司。あの2人いつもあんなかんじなのか?」

「仲がいいだろ。」


笑って答える俺に睨み合う2人が突っ込む。


「「違う!」」


いや、息合ってるじゃないか。


「あれだな。ケンカするほど仲が」


「「よくない!!」」


絶好調だな、お前ら。



「さて、お遊びもそこまでだ。さて、行くぞ。」


「そうだな。」


「ちょっとまて!」「ちょっと待ちなさいよ!」


最後まで、息の合う2人を見て俺と桔梗は笑いながらジープに乗り込んだ。


何だか、桔梗なら俺の背中を任せられる、そう思えた瞬間だった。



第三撃 終了

後日談! そのに


もしも、蒲原がレーザー弾を片手で撃っていたら。


ガチャリ


蒲原は、引き金を引いた。


ドンッ! ゴフッ!


「なっ!?」


「えっ!?」


桔梗と紅葉の2人が驚く。


2人が驚くのも無理はなかった。


威力を殺しきれなかった拳銃が蒲原の唇をを強打したのだから。


「ぎゃー、口が〜!!」


「やっぱりな。」


「やっぱりなって、おまえ知ってて黙っていたのか!」


「コイツは、片手撃ちすると拳銃が唇に当たるという世にも恐ろしい弾丸。その名も、ディープキス。」


「なんて、恐ろしい銃弾なんだ。」


「絶対、今考えた銃弾名だろ!!」


「そんな訳ないだろ蒲原。俺はしっかりと見たぜ。お前の熱いキスを。」


「このばっかヤロー!!」





弾丸よりも、発砲したときの反動で唇を拳銃で強打した蒲原の方にみんなの目線がいって弾を誰一人みていなかった真実。


第四撃につづく。

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