stage3 二太刀目〔不可視の箱(インビジブル・ガンケース)〕
急いで投稿したので誤字脱字等があると思いますが、後日修正させて頂きますね!
では、本編へどうぞ!
「さてと、みんな集まった?」
課長が室内をぐるりと見回す。
SAAFの捜査官全員に集合がかかりみんながこの部屋に集まっていた。
「ん? 龍司は何処にいるんだ?」
辺りを見回すが自分の相棒の少年の姿が見えない。
「桔梗。龍司は?」
サラッとした赤毛を揺らして紅葉が近づいてきた。
「うむ。朝家を出るときはまだゆっくらしていたんだが、まさか遅刻か?」
「龍司は相変わらず朝弱いわね」
紅葉はやれやれといった感じに苦笑する。
「まぁ、すぐにくるだろう」
特に気にするわけでもなく。自分の席に座った。
「本日よりSAAFの配属になった者を紹介したかったんだけど……」
課長は言葉をそこできる。
「予定じゃすでに到着だったんだけどまだ、来てないみたいなのよ。だから、このまま待機ね」
「……新人か」
桔梗はそうつぶやいた。
一方その頃龍司は
「まいったな。コレは完全に遅刻だ……」
俺は走るのもあきらめて、地下駐車場の中を歩いていた。
桔梗に朝起こされた後、ダラダラとテレビを見ていたらこんな時間になっていた。
すでに人気のない駐車場にはいくつか車が止まっている。
「姉さん怒るだろうなぁ……。後、桔梗も」
何だが無性に行きたくなくなってきた。
「はぁ……」
ため息をついてふと顔を上げたときだった。
20メートル先の白のステーションワゴンにもたれるようにたっている少女が目に入った。
癖のない長い金髪、以下のにも外国人らしいアイスブルーの瞳。
年の割に落ち着いたような物腰。
そして彼女の肩に掛かる漆黒のギターケース。
「……アナタが柳刃龍司巡査ですか」
肩に掛けていたギターケースを肩からはずして地面にたてる。
「なにもんだ?」
右手をポケットから出した俺は相手を注意深く観察しながらごく当たり前の質問を返した。
「私の名前はシリア・アークライト。元U18部隊所属。そして、お姉様の相棒になるべく本日からSAAFに配属なったものです」
「U18だと?」
「そうです。優秀な戦闘部隊で育てられた人材でなければお姉様の足を引っ張りかねません。アナタのような一般高校生が張り合えるようなほど生やさしいものではありません」
そう言いきってフゥとシリアはため息をついた。
なんだか知らんが、初対面の人間にバカにされて黙っていられるほど落ちてはいない。
「U18部隊が優秀? 確かに戦闘能力を養うには若いうちからの鍛錬は最適だ。だがな、まだ18才に満たない子供に人殺しをさせてる制度が気にいらねぇな」
「甘い考えでは自らの身を滅ぼすだけですよ」
シリアの瞳の奥底に見える冷たい殺気。
そこには戸惑いなどいっさい見えない。
「とりあえず、アナタは邪魔です」
シリアは左手を突き出す。
その動作に間髪をいれず、左手の先に1丁のライフルが現れる。
一連の動作には、5秒とかかってない。
素早い能力の展開。
元U18というのは嘘ではなさそうだ。
しかし、さっきの能力からして相手はテレポート系能力か……。
ちょっといやな相手だな。
不利な状況の下相手と同じ土俵の上で戦うわけにはいかない。
俺は、近くに停まっていた黒塗りのハマーの陰に隠れるため、横っ飛びに相手の射線から離れる。
威嚇射撃のか、シリアが発砲した弾は俺には玉を当たらず、ハマーの隣に立っていたアルミ製の看板にぶち当たった。
盛大な金属音とともに、看板がボコリとへこむ。
「っ!!」
「殺しはしませんよ。ちょっと病院に入ってもらうだけです」
くっ!
あれは、ゴム弾じゃねえか!
確かに死なねえかもしれないが、あたりどこによっちゃ、骨折ぐらいじゃ済まないぞ
上着の中に手を突っ込み、俺専用SAAFエアガンを取り出す。
腰につけているミネべアを抜くつもりは全くない。
しかし、相手は生粋のスナイパー。
スナイパー……。
「まさかあの時の……」
俺は先日のスナイパーを瞬時に思い出した。
まずいぞ。
物陰に隠れていても弾丸が――。
そう思った時だった。
発砲音と同時に俺の右手にあったエアガンが吹き飛んだ。
盛大に吹き飛んだエアガンのスライドは激しく破壊されていてもう使いものにはなりそうにない。
「ちぃ!」
舌打ちをしながらハマーから遠ざかるように駐車場の柱の後ろに隠れる。
だがこれでなんとかなるものでもない。
四方を壁に囲まれた駐車場の中に逃げ場などない。
跳弾を駆使して撃ってくる敵に勝ち目はない。
「鬼ごっこはもう終わりですか? 次は外しませんよ」
駐車場の壁に反射してシリアの声が聞こえてきた。
「さて、どうしたもんかね……」
腰のミネベアに手を添える。
不意打ちでもしない限り厳しそう−−。
ヒュン
首筋を掠るように風切り音と共何か通り過ぎた。
俺の足下に切れたネクタイが落る。
ここまで精密な射撃ができるということは、もう俺は相手の手のひらの上で踊らされているらしい。
ここにいるのマズいな。
意を決して相手との距離を積めるべく柱の影から飛び出す。
20メートル先のシリアの持つライフルの銃口からマズルフラッシュが煌めく。
体を右に傾けて弾道から体を反らす。
上着を貫通するが俺の体には当たらない。
そして、今相手の弾丸はつきた。
持ち運びに適したスモールサイズのマガジンに足をすくわれたな。
いくら早くてもマガジンの装填には4、5秒かかる。
その時間差かあれば、俺は相手に拳銃を突きつけられる。
腰のホルスターに手を伸ばし素早く抜く。
シリアがマガジンにその細い手をのばしたときには、俺はミネベアを突き出すように構えていた。
勝負あったな。
俺がそう思った時、シリアが手を添えているマガジンが異様な音をあげた。
カシャン
まるでマガジンに弾丸を装填したかのような音が確かに聞こえたのだ。
互いに銃を突きつけたまま睨み合う。
「お前、ただの能力者じゃないな?」
「それはお互い様ではないですか?」
微動だにせず、お互いに不適な笑みを浮かべる。
「やれやれ。ここにいたのか」
駐車場の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「桔梗!」
「お姉様!」
「全く何をしているかと思えば……」
右手に持っていたCZをホルスターにしまい込むと、桔梗はフゥとため息をついた。
「お姉様! 会いたかったです〜!」
「シリア。新人が来たと言っていたが、やはりお前だったのか」
「はい! お姉様とコンビを組むべくSAAFまでやってきました!」
まるで子猫のように桔梗に懐いているシリアを見て俺はしばらくの間固まってしまった。
「お姉様って、桔梗!?」
「いや、U18時代の後輩だ」
「ああ、なるほどタダの後輩ね」
振り返ったシリアがギンッとガンを飛ばしてきた。
おお、ヤクザ顔負けの睨み方だな。
「タダの後輩じゃないです。貴方のようなヒモ男と同じにしないでください!」
なんだか知らないが。ヒモ男呼ばわりされ始めたぞ。
「アナタはあくまでもオマケ程度です! 真の相棒は私が適任です!!」
「シリア。とりあえずウチの課長な挨拶をした方がいい。後、龍司も早く謝った方がいいと思うぞ。私はどうなっても責任はとれんからな」
「お姉様以外に私を命令できる方はいないと思いますが挨拶にいかないと行けませんね」
桔梗の腕にしがみついたままシリアは社内へと入っていった。
キリ飛ばされたネクタイと半壊したエアガンを拾い上げると俺はため息をついた。
「はぁ。これは高くつくかもな」
それは、エアガンに対してもそうだったが、姉さんのご機嫌取りのために買わなくてはいけない菫屋の特製シュークリームに対しての出費でもあった。