stage2 十二発目 [浮上]
どうも、少し日があいてしまいましたね 汗
作者はそろそろテスト期間なのでstage2のラストになる十三話は十二月以降になると思います。
ご迷惑おかけしますが、ご理解よろしくお願いします。
そして、stage3以降からはライトのベル風な感じでいこうと思っております!!
では、本文へどうぞ!!!
あれから、どれくらいの時間が経っただろうか。眼下に見える海面を凝視するように俺はヘリから下を眺めていた。
「星野さん。このヘリで伊豆半島沖まではどれくらいかかる?」
「そうだね。後30分はどうしてもかかってしまうね……」
「30分か。課長はもう着いてる頃じゃないか?」
俺の腕時計を見た桔梗がそう呟く。
そうだな。もうとっくに着いているだろう。なにせ、向こうは時速1600kmで飛行可能な超音速機。しかも、そのステルス性能は、アメリカ軍お墨付きの超高性能。
ただ、一つ問題があるとしたら……。
「……領空侵犯だね」
星野さんは、操縦しながらそう言う。
これがある限り、うかつに向こうの入ることが出来ない。
そう、現在の日本は2つに割れている。勿論それぞれの領土、領海、領空が存在する。そして、その国の領空を通過する場合は、あらかじめ報告が必要なのだ。無断での進入などあってはならない。
もしも、報告無しでその領空に飛び込もうものなら、撃墜されたとしても文句が言えない。それに、もし撃墜されなかったとしても、これはれっきとした国際問題に発展しかねない。
「キツいな……」
「この戦闘ヘリで近づけるのは、伊豆半島の手前までだからね」
「外交省はどうなんです?」
「それが、先ほどから連絡しているんだが、許可が下りないらしいんだ」
「西部強襲部隊は、西日本政府の直属の部隊ですからね。おそらく、向こうの外交省にも根回しをしてるんじゃないんですか?」
「ありえる話だね」
コッチは仲間の危険もかかっているというのに身動きすら取れない状態。歯がゆくてならない。
ピピッ!! ピピッ!!
「龍司君。緊急無線だ! すまないが出てくれないか?」
「あ、はい!」
すぐさま、受信機を取る。
「ハイ、こちらSA一号機」
『その声は、龍司ね。ちょうど良かったわ!』
無線から聞こえてきたのは、雑音混じりだが、慣れ親しんだ声間違いない姉さんだ。
「姉さん! 戦闘機まで出してきて一体何をするつもりなんだ!」
『細かい説明は後よ! ひとまず、何とか西日本の領空に入ることが出来るようになったわ!』
なに!
外交省あれほどてこずっていたのにか!
「どういうことだよ?」
『後3分で、皇室専用航空機が成田を離陸することになっているわ! それに便乗して、SAAFの戦闘ヘリと離れ島基地で借りてきたF-35を護衛任務として西日本の領空に入ることを出来るようにしたのよ』
皇室専用航空機……。
そうか、たしかに、西日本の主というべき皇室の航空機となれば向こうも流石に断れるはずが無い。
でも、皇室航空機を使うなんて今日の成田空港のスケジュールには組まれていなかったはずだぞ。
どういうことだよ。
「まさか、課長がいなかったのは、皇室と連絡を取るためだったのか!」
「まさか、姉さんに皇室に知り合いがいるなんて聞いたことが無いぞ」
「いや、聞き覚えがあるよ。たしか、柳刃課長のご親友に峰鈴園彩子様がいらっしゃったはず……」
ほ、峰鈴園彩子様だって……
あの、内親王殿下だというのか!
「でもちょっとまってくださいよ! たしか彩子様は高校卒業後に公の場に姿すら現していないはず。一説では、彩子様が失踪したという噂までたっているはずじゃ!」
『そう、彩子は今(、)は(、)皇居にはいないわ。後、これは悪い知らせよ。相手の戦力が、地下施設に保管してあった大和型4番艦だということが判明したわ』
「4番艦だって! 確かあれは、戦時中に船底の一部を残して解体されたはずじゃ……」
『どうやらその一部を、広島の地下基地に移動させ、秘密ドックで建造されていたみたいね。「紀伊」という名前を授かった立派な戦艦よ。おもな武装に、46センチ主砲9門、対空兵装多数、スタンダートミサイル射出口がおよそ8、単発魚雷発射管が6つ。そしてイージスシステムの最大有効射程距離が250km』
「重武装すぎるだろ……」
「加えて、ワンマン・オペレーションシステム。状況は最悪だな」
流石の桔梗も、顎に手を当て悩んでいる。
「何か打つ手は無いのか? 姉さん」
『あるとすれば、戦艦紀伊に乗艦しているであろう、蒲原君と紅葉ちゃんに頼るしかないわ』
「課長、しかし、着艦した所で、我々に逮捕権はないはずでは!」
星野さんが言うように戦艦紀伊は広島で製造されたのだ。しかも、製造された当時の国、大日本帝国は存在しない。よって、その所有権は自然的に西日本になる。つまり、西日本のSAAFに逮捕権はないということだ。
『捕まえるどころか、捕まえられる立場に回ると言いたいのね。そこらへんも大丈夫! 後は、戦艦紀伊の制圧だけを考えておきなさい! どうやら、敵は恐ろしいものを運用を考えてるみたいだからね』
姉さんに言いたかった意味は、数分しないうちに現実となることになる。
「おい、まずいんじゃないのか?」
「ええそうね」
兵員室から、出た蒲原一同は、最下甲板を移動していた。
分厚い鉄板の向こうから聞こえてくる激しい水音が廊下に木霊する。
「まさか、ドックに水を?」
「いや、そうじゃない。信じられんことだが、大和が潜水行動を行っているみたいだ……」
「うそ……」
「おそらく、この船の両側に水を注水して潜るようになっているはず」
ゆっくりと、細い廊下をしのび足で進んでいく。お世辞でも、いい状況とはいえない。反撃、或いは撤退のチャンスを伺っていた俺たちは、むしろ、敵の要塞に閉じ込められてしまったのだ。
それに加えて、潜水中の船の中で暴動を起こすわけにはいけない。潜水艦はとてもデリケートな乗り物なのだ。下手なところに銃弾が当たれば、二度と太陽を拝めなくなる可能性だってある。
「だが、この船は潜水艦して完璧には仕上がってない。だから、ドックから海洋に出たら直ぐに浮上するはずだ。そのタイミングを狙って反撃するか、救援を呼ぶしかない……」
「でもいいの? 西日本の領地で暴動なんて起こしたら、私たちはお尋ねものになるわよ!」
確かに紅葉の言うとおり、この船は西日本の領海にいる。しかも相手は、西日本の正規部隊。
分が悪すぎる……。
「雛霧さんよ。何かいい案はあるか?」
「……無くはないは。ただ……」
「ただ、なんだ?」
「いえ、なんでもないわ。反撃のチャンスがあるとすれば、蒲原巡査の言うように浮上のタイミングしかない」
「……」
さっきの雛霧の顔。少し気なるが、気にしている余裕は無かった。
「貴様! 何者だ!」
角を曲がってきた、敵がこちらに気づいたのだ。
「ちっ! 毎度、毎度!」
幸い、向こうは一人。他の奴らに知らされる前に終わらすことが出来そうだ。
素早くSOCOMを発砲する。こういった場面において、強襲用拳銃はその力を遺憾なく発揮する。
大きな発砲音がしないため、他の敵に気づかれにくいのだ。
相手が、発砲してくるよりも先に火を噴いたSOCOMが敵のM16アサルトライフルを叩き落す。
そのタイミングを見計らって、紅葉が一気に敵に詰め寄り、神速の速さで敵の首筋にナイフの柄を叩き込む。
「少し寝てなさい」
その一撃で気絶した敵は、その場に倒れこむ。
「ふう。ぎりぎりセーフか?」
俺は、敵のアサルトライフルを取り上げると、兵員室にあった縄で相手を拘束する。
「大丈夫そうみたいね」
紅葉は直視を駆使して辺りを見回しながらそう言った。
監視カメラも無いみたいだから大丈夫そうだ。
「全く。ハラハラさせる奴ね」
雛霧の言うとおりだ。もしも、見つかったらこちらはさらに追い込まれてしまう。これ以上の接触は避けたい。
「潜水速度が止まったみたいだな。それに、ポンプ音までしだしたと言うことは、どうやら浮上するみたいだな」
『総員に告ぐ! 本艦は、これより浮上する! 作戦は最終段階に移行する。浮上後は、主砲の試射を行う。総員は位置に着け! 繰り返す。本艦は――』
天井に付けられたスピーカーからいやな予告が、繰り返される。
「主砲の試射だって!」
なんてことだ! 敵があのどでかい主砲で何かをするつもりだと直観的に俺は感じ取った。
~続く~