stage2 三発目 [武器商人]
お待たせいたしました。black city stage2の第三話です。
今回説明するのは、『ベレッタM92F』です。
様々なドラマや漫画やアニメなどで登場する拳銃ですね。
ハンドガンの中でも最もオーソドックスな拳銃と言っていいでしょう。
M92シリーズの中で今回登場するのはベレッタM92SB-F。
総弾数15発で9ミリパラベラム弾を使用をしています。
トリガーガード前方に指掛けを追加し、マガジン底も分厚くなっています。
そんなM92シリーズの愛称はM9です。
さて、前書きはこのぐらいにして、本編へどうぞ〜!
火神の情報を得た蒲原と紅葉はとある廃ビルの前に来ていた。
「まずはここで武器調達か?」
「そうね。チンピラどもの根城としても有名だけど武器商人もいるらしいのよ」
「武器商人ね……。しかし、何で俺たちは包囲されなきゃならないんだ?」
俺と紅葉をぐるっと囲むように14、5人の男たちがいた。
みな、高校生ぐらいから大学生ぐらい。
「若い奴らがこんなとこに溜まってたらだめだろ」
「ああっ! おめーみたいなボケやろうはカンケーねぇんだよ!!」
なるほど、俺はボケやろうか……。
ほう、なかなか楽しいこといってくれるじゃねぇか!
「ねえねえ。そこのねぇちゃんよ。そんなボケといないで俺たちと楽しいことしない?」
下心丸見えの笑みを浮かべて近寄ってくる男たち。
その距離は、およそ2メートル弱。
「悪いわね。私はアンタたちみたいなのを相手してるほど暇じゃないのよ」
吐き捨てるようなセリフにかっとなった男が紅葉につかみかかった。
ああ、ありゃバカだな。
素人のつっこみ方だ。
ああなると、紅葉の得意な合気道のいい練習台にしかならない。
つかみかかってきた右腕を逆手紅葉は自分の姿勢を少しずらす。
合気道はそれほど力がいらなくても大の男をひれ伏させるほどの護身術だ。
的を失った男は為すすべもなく地面にたたき落とされる。
「無理なことをしないほうがいいわよ。今日は虫の居所が悪いから、骨の一本、二本ぐらい折っちゃうかも」
こ、こえぇぇぇ!!
マジ怖いすっよ。紅葉さん!
「よそ見してんじゃねぇぞ!」
チャンスをねらった男のパンチはいとも簡単に蒲原に止められる。
「なぁ。本気でやってるのか?」
ニヤリと微笑む少年に恐ろしさを感じた男はとっさに拳を引こうとする。
が……。拳が全く動かない。
少年に捕まれている拳は、固定されているかのようにビクともしない。
「おいおい。焦るなよ」
蒲原は思いっきり腕を引き寄せる。
引っ張られてよろめいた男の首めがけて手刀を振り落とす。
「ぐはっ!」
そのまま気絶した男は、地面に伸びてしまう。
「さて、次はどいつが相手してくれるんだ?」
涼しい顔をして手をはたいている少年を見てほかの男たちは一目散に散っていった。
「はぁ。もうちょっと粘れよ」
カチンときていた紅葉はため息をもらしている蒲原の背中に思いっきり蹴った。
「ぐはっ!! いってぇぇな!紅葉お前の蹴りはしゃれになんねぇから!」
「ウルサイ! ……全然女の子らしく扱ってくれないバカの分よ」
プイッとそっぽを向いた紅葉をみて蒲原は再びため息をついた。
「ハァ。急に怒りやがって……。どうしたんだ?」
首を傾げた後、ゆっくりと紅葉の後に付いていく。
しかし、このビルはかなり古いな。
結構前から廃ビルになったのだろう。
ビルの中はガランとしていてものがない部屋が多い。
「こんな所に武器商人なんているのか?」
「火神の情報だから確かでしょ。おそらく、最上階にいるはずだわ」
狭い非常を上ること五分。やっと俺たちは最上階にたどり着いた。
「おっ。あの爺ちゃんが武器商人みたいだな」
最上階の一番奥の部屋に座っている白髭の老人が顔を上げた。
「おや、どちら様かね?」
「ちょっと、武器と銃弾を撃ってくれるかしら?」
「ほっほっほっ。若いもんが武器に頼るのか?止めておけおまえたちには無理だ」
「爺ちゃん。下のチンピラどもと同じにしないでくれ」
「どうしてもいうなら、あのマトを撃って見せたら武器をやろう」
白髭の老人は部屋の片隅を指さした。
そこには、一枚の壁の後ろに隠れるようにマトがあった。
弾道線に全く入らないマトを撃てかよ。
ありゃ素人どころか普通に無理な話だろ。
蒲原はそう言いながらも老人から白銀のベレッタM92Fを受け取った。
『ここから撃て』とかかれた線の上に立つと壁に隠れたマトは全く見えない。
線から壁までの距離は約4メートル。
壁の後方3メートルの位置にマトがある。
銃を構えて引き金に手をかける。
「少年よ。どこをねらってるんだね?」
蒲原の構えているベレッタの銃口は壁には向いておらず少し右にずれている。
「どこって、ちゃんとマトを狙ってるぜ。そうそう、ここに立ってればなにしてもいいんだよな」
蒲原おもむろにポケットから百円玉を取り出した。
そして、コイントスのように前の百円玉をとばす。
きれいな弧を描いた百円玉は神原から2メートルほど離れた空中で停止した。
「な、なに!?」
百円玉は。まるで空中に貼り付けられているかのように停止している。
ニヤッと笑み浮かべた蒲原は引き金を引いた。
激しい発砲音とマズルフラッシュの後。
飛び出した銃弾は百円玉に命中して火花を散らしながらその向きを三十度ほど左に曲げた。
その直後だった老人の目の前で壁の後ろにあったマトが倒れた。
数秒して、いきなり時間が動き出したかのように百円玉は落下していった。
「ウーン、中心から右に5ミリずれたわね」
「マジか。最近使ってなかったからな」
老人は心底驚いた。
蒲原の放った弾が百円玉に当たり、壁を迂回するようにマトの中心をぶち抜いたからだ。
さらに驚いたのはあの少女。
自らも壁のおかげでマトが見えていないはずなのに正確な着弾位置を把握していた。
「おぬしら、まさか能力者か!」
「そうね。私は直視の能力者。壁程度ならはっきりと向こう側が見えるわ」
「俺は。絶対停止の能力者。俺が直後まで持っていたものなら物体を停止させてしまう能力。しかも、時間軸的に物体が停止しているから、その物体が停止している間は傷一つつかないってわけだ」
「ふっ、完敗じゃ。お主たち東の警察官じゃな」
「へぇ。今のでそこまで見抜くとは」
「昔、ワシの元にもきたんじゃよ。お主たちみたいな警察官がな」
「なるほどね。それで武器を売ってくれるかしら?」
「かまわんよ。好きな銃を取って行きなさい。お代はいらん」
老人はそう言うと大きな箱を開けた。
「これにするわ」
紅葉が取り出したのは漆黒のUZI二丁。
それは、イスラエルのITM社が生んだ傑作サブマシンガン。
一秒間に十発もの鉛玉を吐き出す銃でその装弾数は32発。
何となくだか、紅葉にはお似合いな気がした。
「いい目をしとるの。そのUZIにはちと改造が施されていてな。このレバーを下までおろすと」
老人は、明らかに後付けされたレバーを下ろし的に向かって発砲する。
パンッ!
一発の弾丸が飛び出し、マトを破壊する。
「こういう風に、単発射撃もできる。しかも、大量生産の中で一万分の一の超高性能サブマシンガンじゃ。
単発射撃でも、かなりの命中率を出すぞ」
「へぇ。気に入ったわ。弾もくれる?」
「かまわんよ。少年。君はなににするかね?」
老人にそう言われて箱の中をのぞき込む。
好きな拳銃か……。
「おっ。SOCOMがあるじゃねぇか」
俺は、箱の中に収められていたSOCOMを取り出した。
H&Kが作った大型自動拳銃。まったくの改造なしでサイレンサー、赤外線レーザーを取り付けることの出来る高性能拳銃だ。
「へぇ。なかなか良さそうだな」
グリップを握った感じも手になじんで非常に扱いやすい。
「これをもらえるか?後、弾も」
「ハイよ」
老人から弾と拳銃をもらった俺たちは各々のホルスターに拳銃をしまう。
紅葉は、UZIを背中にしまうような形のホルスター。
俺のSOCOMは普通のハンドガンに比べて二まわりほど大きい。
重さもマガジン込みで1.5キロもする。
ハンドキャノンと称されるデザートイーグル並みに重たい。上着の下、ちょうど脇のあたりに吊すようなホルスターを使用することにした。
「しかし重いな」
ホルスターには、SOCOMとサイレンサー、レーザーサイトもしまえるようになっているためかなりの重量だ。
紅葉のUZI二丁も結構重たいだろうけどな。
しかし、スカートの中にマガジンをしまうのはどうにかしてもらえないだろうか……。
何というか、たまに見えちまう。
「蒲原?」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれたので、俺はどぎまぎしてしまった。
「?? まぁ、いいわ。そろそろホテルに帰るわよ」
「お、おう……」
俺は上着のずれを直すと武器商人の部屋を後にした。
「さあ、そろそろ本命に乗り込まないといけないわね」
「ああ、そうだな」
西の空に浮かんでいる紅の太陽が二人の長い陰を刻んでいた。