stage1 十撃目 『魔の午前11時50分』
さて、今回は『能力階級書』についてです。
『能力階級書』とは、個人個人の名前、性別、生年月日、能力階級を書き記したカードのことです。
このカードは、国によって管理され重要な建物にはいるときなどに使用したり、身分証明書としても使用できます。
ちなみに能力階級値は5段階で表記され、下からD→C→B→A→Sと書きます。
実は、龍司の能力の正式名称がありまして、龍司の能力正式名は『限界破壊』という名前です。
龍司の能力階級値は、Bなので、カードには スキルB物体干渉型 (指定した物に能力を使って操作する事を物体干渉型といいます)と表記されます。
紅葉の『直視』のような、世界干渉型(周りの状況を能力を使用して理解したり、能力が周りの状況事態に影響を及ぼす)のは、 スキルB世界干渉型 と表記します
さあ、本編はいよいよラストに近づいてきました。
皆さん楽しみにしていてくださいね!
「チッ、逃がしたか・・・・」
中山の姿は、すでに屋上からいなかった。
煙幕をうまく焚いて逃げたのだ。
しかし、向こうの建物から狙撃してきたのは誰だ?
狙っていたのは中山みたいだったが、味方と断定するにはまだ明確な証拠がない。
目測で、狙撃者のいた建物からこのマンションまで約2キロ。
発砲音とちらっと見えた形からしてバレットM82アンチマテリアルライフルで間違いないだろう。
1.5キロ先の、人間の胴体を真っ二つに裂くくらい朝飯前ほどの威力を誇り、その弾丸の初速は秒速853メートル。これは音速の約2.5倍。
生身の人間が相手をするには余りにもたちの悪い銃だろう。
「後は、中山を指名手配すれば何とかなるか?」
俺の隣にやってきた桔梗も、向こうのマンションを見ている。
「どうだろうな‥‥。それで捕まってくれるなら、苦労に越したことはないんだがな」
再装填速度大きな致命傷をもつリボルバー式の拳銃で2人を相手するくらいの腕前だ。
簡単に捕まるようには思えない。
「とりあえず、捜査課に帰るか。姉さんに報告しないといけない件もあるしな」
「ああ、そうだな」
捜査課に帰って、犯人が中山刑事だったこと、狙撃してきた奴のことを報告した。
そして、俺の推理通り、あの監視カメラには一人の人影しか映っていなかった。
「・・・・中山さんが犯人だったのね」
菜奈は、いすにもたれるように座りながら手を組んだ。
「課長、中山さんに今回の事件の動機になるものって思い当たりますか?」
横で報告を聞いていた星野さんはに信じられないというような顔をしている。
星野さんは、警察官になってから多くの事件を俺の父さんと中山刑事の下で解決してきたので、2人は言わば恩師のような先輩刑事に当たるのだ。
信じられないと思うのも当たり前だろう。
「蒲原どう思う?」
捜査課の端でコーヒーを飲んでいる蒲原に問いかけてみる。
「ああ、俺もさっぱり動機が思いつかねぇ」
「中山さん、いつも正義感に熱い人だったもんね。まさに、警官の鏡って感じだもんね」
紅葉も、事件のファイルを見ながら話す。
「やはり、柳刃龍一さんに関係があるんですかね」
火神が、出したこの結論が一番今は有力そうだ。
しかし、一体何があったら警官の鏡のような刑事がこの事件を犯してしまったのか、この事件には、表面では見えない深い何かがありそうだ。
そんな、捜査課が思考を巡らしていた時刻、帝都某所である会議が開かれていた。
「諸君・・・・今帝都の秩序が乱れつつある。このままでは、5年前の悲劇を繰り返してしまう」
長机の上座に座る人物は、静かに言う。
「かつての東京がそうだったように、我々が作り上げた帝都が滅ぶのを指をくわえてみているのでは5年前と状況は一向に変わらん。
我々は、全力で帝都崩壊を防がなくてならない」
数秒の沈黙があたりを包む。
「帝都を破壊しようとしているのは、中山大二郎。奴を見つけ次第・・・・射殺せよ」
その一声とともに部屋中の人影たちが部屋を去っていく。
1人残った部屋で、男は呟いた。
「この帝都は、誰にもやらん・・・・」
「はぁ、結局捕まえられなかったか・・・・」
ため息をつく一人の捜査官の姿がビルの上にあった。
長い金髪を風になびかせながら、目の前にそそり立つ帝都タワーを見据える。
その背中に背負われたギターケースを見れば、通りすがりの学生にしか見えない。
「帝都会議・・・・一体、何が起こるのかしら」
彼女は、クスッと笑うとギターケースを床においた。
彼女は、クスッと笑うとギターケースを床においた。
同時刻、パトロール中の龍司と桔梗は、日本橋に来ていた。
「ハァ・・・・」
大きな溜め息をついた所で今の状況が打開出来る訳ではない。
しかし、人間は余計な二酸化炭素を排出するべく溜め息をつく。
「心配していてもなにも終わりはしないぞ。今は、私たちにできることを完璧にこなすまでだ」
「・・・・そうだな」
俺たちは、会議の行われるビルの入り口まできていた。
ビルの反対側に建っているの帝都ツリーが窓に反射している
「能力階級書と身分証明書を提示していただけますか?」
入り口の機械が俺たちに話しかけてくる。
機械独特の一字一字話すしゃべり方には何となく違和感を感じる。
俺は、胸ポケットから能力階級書と呼ばれるカードと警察手帳を機械の前に提示する。
機械がウィーンと、モーター音のような音を立てて読み取る。
ディスプレイにOK!と表示されたので前に進む。
そう言えば、前に思ってたけど桔梗の能力階級は何なんだ?
「なぁ。桔梗の能力階級はいくつだ?」
「私か?私は、能力Aだ。だが、それがどうかしたのか?」
能力A!!
おいおい!マジか!
能力Aって言ったら、最大能力階級の1つ下じゃねぇか!
確か、Aに匹敵するのは、姉さんの能力『空間遮断』と同じなんだろ‥‥。
一体どんな能力を持っているんだよ‥‥。
「な、なぁ。どんな能力何だ?」
「すまない。この能力は私自身好きじゃないんだ・・・・。だから教えられない。本当にすまない」
「そうか。まぁ、話す気になったときでいいさ」
俺は、前を向き直る。
そうだ、今は目の前の問題を片付けないとな。
犯人の正体は、分かった。
しかし、このままでは事件の全てを露わにするパズルは完成しない。
合わないピース、無いピースが存在している以上、事件の完全解決は実現しないからな。
動機が、イマイチ明確に分からないんだよな。
まぁ、おそらくの推測はつく。すべての引き金は、六年前の事件。
しかし、あの事件に関して聞けそうな人間が近くにいない。
あるいは、中山を捕まえれば分かるかもしれない。
俺は、左手につけた銀色の腕時計を見る。
「もう、11時か。このビルの見回りが終わったら、昼にでもするか・・・・桔梗、どこか行きたい店でもあるか?」
「んっ?渚食堂に行きたいところだが、時間がないからな、近くのファミレスでかまわないぞ」
さて、近くにファミレスあったか?
12時から1時30分までは、俺たちの休憩時間だからな。
一通り、ビルを見終わってビルを出たのが11時40分だった。
まさか、10分後にあんなことが待ち受けていようとは、思ってもいなかった。
近くのファミレスに行くべく、大通りを歩いていた俺たち。
時刻は11時50分になろうとしている。
帝国会議は2時からだかゆっくりできると思った矢先、俺たち全員に配布されたイヤホンマイク型の無線機にある声が流された。
勿論、流したのは警視庁の人間ではない。
それは、聞き覚えのある中山の声だった。
「さあ、刑執行猶予の時刻の時間だ。後2時間で、この忌まわしき帝都が吹き飛ぶ。君たちは、阻止することができるかな」
そう言い終わると一方的に無線が切られた。
「り、龍司・・・・」
「ああ、とうとう、来ちまったな」
この帝都崩壊宣言は、何としても阻止してみせる。
俺は、腕時計のアラーム機能を2時間後の1時50分にセットした。
「2時間でこの帝都未来が決まる。桔梗行くぞ!」
俺は、ある程度このことは予測していた。
今まで、こちらの情報網をかいくぐって逃げられていたが今度こそ奴の尻尾を捕まえれそうだ!
「ちょっ!龍司!どこに行くんだ!?」
「科学捜査研究課だ!」
「か、科学捜査研究課?」
イマイチ理解できていない桔梗を引っ張り警視庁科学捜査研究課に向かった。
昔に比べ、最近の事件は現場の証拠品からの犯人特定が難しくなってきた。
しかし、日々進化する科学を捜査に取り入れたのが科学捜査研究課、通称:科研だ。
科学的観点から、犯人の逃れない証拠品を見つけだす彼らの仕事は、近年注目を浴びている。
「豊崎!ちょっといいか?」
科研のドアを思いっきり開けながら、室内にいるはずの友人の名前を呼んだ。
「おっ、龍司!久々やな〜」
髪がボサボサに荒れていて、少し汚れた白衣に身を包んだ少年が現れた。
彼の名は、
豊崎 光司俺の中学からの友人で、俺と同じ高校を通っているものの、職場が違うためなかなか会うことがない。
篠原警護高校は、学生の約半分が、職場にいることが圧倒的に多いと言う珍しい学校だ。
職場のレポートと、実習技能試験に合格さえすれば、進級できるシステムだ。
職場にいかず、学校授業を選択する学生と職場授業を選択する学生は半々といったところだ。
俺は、早く父さんのしていた仕事に就きたくて職場授業を選択した。
だから、ふつうの高校生に比べ授業は結構受けていない。
その代わり、中学の時にかなり詰め込んだんだが・・・・。
「豊崎。いきなりですまないんだが、この音がどこから発信されたのか調べてくれないか」
「ふっ、任しとき!30分あれば上等や!」
俺が渡した、USBメモリーを受け取った豊崎は、パソコンを立ち上げ、ヘッドホンをして渡された情報を調べ上げる。
USBの中に入っているのは、先ほど中山が送ってきた無線の中身が入っている。
「なぁ。龍司、この音源はいつ聴いた?」
「11時50分ジャストだ」
「なるほどな・・・・」
なにやらいろいろな情報を、パソコンに打ち込む。
「よし‥‥。これでいけるはずや!」
そう言った豊崎は、キーボードのエンターキーを、右手の人差し指でとどめを刺すように押し込む。
軽快なキーボードの音がしたかと思うと、パソコンが打ち込まれた情報から、該当するものを探し出す。
答えがでるまで10と掛からなかった。
該当一件
前之浜第三新港
「新港か!」
「よし、桔梗行くぞ!今度こそ捕まえてやるからな!」
俺と桔梗は、事件に終わりを告げるべく、科研を飛び出した。
〜完〜
さて、『魔の11時50分』どうだったでしょうか。
次回は、stage1のラストなると思います。
文字数も増やして、良い話になるようがんばりますので応援よろしくお願いします!!
それでは、
Next time, let's meet.