stage1 八撃目 『落ちた警察官』改訂版
「うーん、ないなあ」
資料室中を探し回ったが、ケース35についての資料は何一つ見つからなかった。
「なぁ、桔梗。本当に覚えていないのか?」
「うん、覚えてない。気づいたら、私の拳銃の前に龍一さんが倒れていたんだ。やはり私が……」
「もし、そうだとしたらなぜ警察はこの資料を残していないんだ。もっと深い何かが、この事件の裏に隠れているはずなんだ……。クソっ、それさえ分かればこの事件を何とかできるかもしれねぇのに!」
龍司は、頭を抱えて自分の机に座った。
「ちょっと待った、龍司君はいったいなにを知ってるんだい?」
火神は、少々声をあらげて、立ち上がった。
「そう言えば、言ってなかったな。血の帝都、あのサイトをみてみな。」
「あ、ああ。」
火神は、パソコンを立ち上げ龍司にいわれたサイトを開く。
「どうだ?全員清掃終了になってるだろ?」
確かにサイトの頭文字は全員清掃終了となっている。
「まさか、最後のK.Sって桜崎さん!?」
「そう言うことだ。そして、桔梗が死んだということになっているということは、おそらく犯人は現場をみていたと言うことだ」
「と言うと?」
「俺が考えるには犯人は、警官である確率が高い」
捜査課内部が静まり返る。
「やっぱりか……」
菜奈は腕組みをしていすに座っている。
「姉さんは、何を知っているんだ?」
姉は、一枚の紙をえんじ色のファイルから取り出すと、龍司に差し出した。
「警察所内から紛失した参考資料のリストよ」
紙に書かれた、いくつもの参考資料リスト。
「これ全部が?」
「ええ……」
姉はため息混じりにいすに座り込む。
資料リストの大半が柳刃龍一の担当した事件ばかりだ。
「いったい誰なんですかね。なにが目的なんでしょうか?」
火神もため息をつきそうな顔をしている。
「捜査難航か……」
捜査課は、重々しい空気が漂う。
「……よし。もう一度、この事件を始めから洗いざらいに調べよう。きっとまだ何か気づいてないものがあるはずだかな」
「そうね。黙ってみていても仕方ない。一時間後に、会議をするわ。いいわね」
「「「了解!」」」
一時間後、捜査課の人間が集まったところで会議を始めることになった。
「まず、今回の事件に関係のありそうな事件を探してみました。これをみてください」
火神は、ホワイトボードに書かれた文字を指差す。
ホワイトボードには、
・弾丸製造事件
(弾丸、流れ星について)
・容疑者連続殺人事件
「今の所、こんな感じですね」
火神の話が終わったところで、すかさず紅葉が手を挙げる。
「あのさ、流れ星についてイマイチ理解できないんだけど教えてくれる?」
「うん、詳しい情報は手に入っていないんだけど、この弾丸は能力者用に開発された弾丸なんだ。」
shooting star(流れ星)の特徴はまず、能力を使うことで対象物だけを破壊することができる弾丸になる。
そして、完成品になると発砲音がほぼなくなるという特徴を持っている。
「うぇ……。危なっかしい弾丸やな」
いつもはいテンションな蒲原も苦虫をかんだような表情だ。
それもそうだろう、それ程の弾丸がもし本当に完成しているとすればさすがにやっかいだ。
「うーん、あくまでも噂なんだよね」
「僕も、噂であってほしいと思ってるよ。それじゃあ、容疑者連続殺人事件について、蒲原君、よろしく頼むよ」
「おう!それじゃまず、犯人の手口から」
一人目は、路地裏で頭部を打ち抜かれたことによって死亡
二人目は、車を運転中に頭部を打ち抜かれたことによって死亡
三人目は、自宅マンションにいるところを向かい側のマンションから狙撃され死亡
「いずれの犯行も頭部を銃弾で一発。コレから分かることは犯人は、相当の銃の名手だと分かる」
「厄介すぎるね……」
星野さんは、資料に目を通しながら頭を抱えた。
「うーん、どれもつながっているようでつながってないな」
桔梗は、顎に手を当て考える。
「そうね。合いそうで合わないジグゾーパズルのピースみたいね」
「ジグゾーパズルか……」
俺はいすの背もたれにもたれかかった。
「なにが足りないんだろうな」
「犯人の目的すら分からんからな……」
「考えていてもらちがあかないわね。よし、聞き込みと現場をもう一度、探しましょう」
姉は、机を叩くように立ち上がると捜査課の全員に伝える。
「そうだな。現場百回っいうし、桔梗行くぞ!」
「了解!」
俺と桔梗は立ち上がって捜査課を出ようとしたときだった
「龍司!桔梗ちゃん!」
姉に呼び止められ、一度開けかけたドアを閉めた。
「拳銃携帯命令……犯人はまだあきらめたと決まってるわけじゃないからね」
「「了解!」」
二人で敬礼すると捜査課から走り去った。
「龍司……後は頼んだわよ」
奈菜は、静かに席に座りながらそう呟いた。
八撃目 完