納得いく勝利
ロメロを中心に1つになったシーサーズを前半戦とはまるで違うチームになっていた。
練習中でも1プレーごとにお互いに意図を確認しあったり、自分の意見を言うようになった。
1番の変化はロメロと柚垣の関係だった。
コート場で2人の力が1つになると予想を超えるプレーが出るようになった。
今では2人はホットラインであり、攻撃の核になっていた。
また、外久保のプレーにも変化が見られた。攻撃の核が出来たことでプレーに余裕が出来た。
キャプテンのロメロ、エースの柚垣が積極的にチームを引っ張ってくれることで、心持ちも楽になった。
休戦期間の2週間を終えたシーサーズは北海道を本拠地にしている小樽ユニコーンズのホームコートに乗り込んだ。
「開幕3連敗をした相手だ、今度は3連勝しようじゃないか」
大月の言葉に選手達の心の火が少しづつ燃え上がり始めた。
ロメロを中心とした8名の選手達と大月は1つの輪になる。そして、右手の拳を中央に集めた。
「1・2・3」「よし!!!!!」
シーサーズの儀式を終え、スタメンの5人がコートに立った時にモチベーションはピークに達していた。
センターサークルには開幕戦と同じくロメロと長尾が入った。
審判の手から離れたボールが頂点に達した瞬間、ロメロの手がボールを弾く。
弾かれたボールは柚垣の手に収まり、シーサーズの攻撃で試合が始まった。
一度、外久保に戻されたボールは再度、柚垣にパスされ、パスを受けた柚垣はドリブルで平馬を交わすと得意の45度からのシュートを放つ。
ガーン!
外れたボールは長尾が取り、すぐにガードにつなぎ、3ポイントラインで準備している平馬にわたる。
シュートモーションに入った平馬の横から外久保がシュートチェックに入る。
しかし、冷静にタイミングをずらし、外久保を避けると躊躇なく3ポイントシュートを放つ。
スパッ!
今日の試合も先制点はユニコーンズに入る。
「ナイスチェックだ、外久保!」
「リラックス、ソトクボ!」
弱気な心が顔を出そうとした時、2人の頼りになる先輩の声で外久保は冷静さを取り戻した。
外久保を中心に素早いパス回しから、また45度でフリーになっている柚垣にわたる。
柚垣はジャンプシュートにいくも、前から平馬がチェックにくる。
平馬のチェックをかわし柚垣がパスを出した相手はロメロだった。
インサイドのロメロにパスが通るとパワードリブルで長尾をゴール下まで押し込む。
持ち前の強引さでシュートに行くと長尾もまけじと強引にブロックに来た。
ドサッ!
長尾のファールに対する審判の笛と共にロメロのシュートはリングを通った。
接触で体制を崩し倒れたロメロに最初に駆け寄り、起こしたのは柚垣だった。
「アリガトウ、ユズ」
「気にするな」
起こされたロメロはフリースローラインに向かった。
松本と柚垣はリバウンドの準備に入った。
ロメロの放ったフリースローリングに嫌われ跳ね返る。
リバウンドに反応した柚垣は空中でボールをキャッチするとタップシュートに向かう。
ドサッ!
またもや長尾のファールに対する審判の笛と共に、今度は柚垣のシュートがゴールに吸い込まれた。
フリースローラインからロメロは倒れている柚垣を起こしにきた。
「サンキュー、ロメロ」
「ドンマイ」
このあと、柚垣は冷静にフリースローを決めた。
それからもロメロと柚垣、外久保を中心に攻守にわたり好プレーを見せた。
また、ベンチメンバーも全員出場したシーサーズはこの試合を【96-72】でものにした。
この結果に大月はヘッドコーチに就任して以来、初の納得いく勝利を感じていた。