開幕戦
シーサーズはホームコートであるオレンジシーサードームで開幕戦を迎えた。
シーズン中、各チームとホームゲーム3試合、アウェイゲーム3試合の計6試合が組まれている。
GRADE=Eにはシーサーズや小樽ユニコーンズを含め全8チームあり、42試合を終えた順位で昇格と降格が決まる。
上位2チームは降格、下位2チームは降格、3~6位のチームは来シーズンもGRADE=Eに残留する。
半分のチームが入れ替わる厳しいリーグの中で昨年、シーサーズは残留ぎりぎりの6位だった。
ちなみに小樽ユニコーンズは1つ上のGRADE=Kから降格してきた。
GRADEの順番は1番上からB・A・S・K・E・Tの6段階に分かれている。
そして、今日の対戦相手は前堂監督率いる小樽ユニコーンズ。
「前堂さん、お互い、ルーキーとして頑張りましょう」
笑顔で握手を求める大月に対して、前堂はニコリともせず無言で握手を交わした。
GRADE=Kから降格してきたユニコーンズにはキープレイヤーは2人いる。
キャプテンでCの長尾大地は身長189センチと決して大柄ではない。
だが、気持ちの強さでチームを引っ張り、40分間、常に参加し続けるリバウンドでチームに貢献する。
もう1人が、SGでエースの平馬新一郎だ。身長は183センチと長尾と同じく大柄ではない。
調子に波があるものの、1試合の間で必ず3Pの成功率が5割以上の時間を作れるのが特徴だ。
試合1時間前、各チームの選手がコート上でアップを始めると同時に観客も少しづつ入り始める。
ベンチの椅子に座っている大月の頭の中では、すでに今日のスタメンは決まっていた。
アップを終えるとユニホームに着替えるために1度、ロッカールームに戻ってくる。
各々が自分の背番が刻まれたオレンジ色のシーサーズのユニホームに着替え終わると大月がスタメンを発表した。
「PGは外久保と石井、SFは柚垣、PFに松本、Cはロメロ」
「うっす!」
「ガードの2人は積極的に柚垣とロメロにボールを供給してシュートチャンスを増やしていこう」
「はい!」
「松本、相手のサイズは大きくないが、しっかりとリバウンドに参加してくれ」
「はい!」
「そして柚垣とロメロ。ミスは恐れるなよ、中途半端なプレーはやめてくれ。積極的に仕掛けて失敗する分にはオッケーだ」
「はい!」
一通りの指示を出し終えると、大月と8名の選手達は1つの輪になり、右手の拳を中央に集めた。
「1・2・3」「よし!!!!!」
キャプテンの1・2・3の合図に合わせて、全員でよしと言う。これが20年間続く、シーサーズの儀式である。
開幕戦だけあって、ド派手な演出の中、ヘッドコーチの大月を始め、スタメンの5名、ベンチの3名の名前で呼びあげられた。
会場のファンの割合は8対2でシーサーズファンが多く、ほぼオレンジ一色といった感じだった。
ユニコーンズのメンバーも呼び上げられ、それぞれの選手達がベンチに戻った。
そして、会場の拍手と共に両チームのスターティングメンバーの10名がコートに立った。
ユニコーンズのスタメンは長尾や平馬など予想通りの5人だった。
ジャンプボールのためにロメロと長尾がセンターサークルに入った。
並んだ2人の身長差16センチが今日の試合の行方を教えてくれているような気がした。
審判があげたボールが頂点に達した瞬間、ロメロが力強くボールをはじき、そのボールは外久保の手に収まった。
それと同時に大音量の沖縄民謡が会場に流れ始めた。