なんくるないさ
翌日の試合、小樽ユニコーンズは底力を見せた。
サン・ベス・ロドリゴが45得点をマークし、平馬と長尾が2人で43得点を挙げた。
一方のシーサーズは柚垣が27得点、ロメロが32得点、外久保が19得点と個人的には悪くない数字だが、この日はユニコーンズの主力3名の方が当たっていた。
結果は91-111でユニコーンズが制した。
対ユニコーンズ最終戦、前日とは打って変わって一方的なシーサーズペースで試合は展開された。
ベンチメンバーも各々の持ち味を出し、ユニコーンズを翻弄した。
シーサーズが95-75で勝利し、3連戦を2勝1敗で勝ち越した。
意気揚々と帰宅の準備をしているロッカールームに大月が入ってくる。
「みんな、聞いてくれ」
大月の言葉にそれぞれが動きを止め、耳を貸した。
「鎌倉が今日も勝った。これで鎌倉は3連勝だ」
そう言うと大月はマジックでホワイトボードに現在の状況を書き始めた。
1位=32勝7敗 鎌倉パープルソード
2位=30勝9敗 琉球シーサーズ
3位=29勝10敗 小樽ユニコーンズ
「ここで少し状況を整理しよう」
シーサーズの今シーズン最後の3連戦の相手は鎌倉パープルソード。
現在、シーサーズは鎌倉に2勝劣っている。
つまり、最後の3連戦で3連勝をすることが出来れば、優勝で昇格出来る。
逆に言うと1試合でも落とすようなことがあれば、優勝の可能性はなくなる。
更に言えば3連敗を喫するようなことがあれば……。
鎌倉は1勝でもすれば昇格が決まり、それと同時に優勝も決まる。
ユニコーンズはすでに優勝の可能性はなくなっている。
だがもし3連勝をすれば昇格の可能性はかなり高いものになる。
「シュート1本、パス1本、1回のミスが命取りになり、来年のお前らを変えてしまう」
大月の厳しい言葉に浮かれ気分だった選手達の顔が引き締まる。
重い空気の中、大月が現在の状況が書いてある表から裏にホワイトボードを回転させて部屋をあとにした。
【なんくるないさ】
ホワイトボードには「なんくるないさ」=沖縄の方便で「なんとかなるさ」という言葉が書かれていた。
それをみた選手達の顔に笑顔が戻った。