優勝争い
シーズンも残り6試合となり、優勝争いは3チームに絞られた。
1位=29勝7敗 鎌倉パープルソード
2位=28勝8敗 小樽ユニコーンズ
2位=28勝8敗 琉球シーサーズ
琉球シーサーズの日程は小樽ユニコーンズとのアウェイ3連戦、鎌倉パープルソードとのホーム3連戦。
直接対決を残している琉球シーサーズは勝利を積み重ねれば十分、優勝の可能がある。
「ごちゃごちゃした計算は抜きにして、残り6試合を全部取りに行くぞ」
「はい!」
シーサーズの面々の姿は寒い北海道の体育館にあった。
小樽ユニコーンズのホームカラーの水色に囲まれ、完全アウェイの中にいた。
お馴染みの平馬・長尾の名前が呼ばれると会場は歓声があがる。
ひときは大きな歓声が上がったのがサン・ベス・ロドリゴの名前が呼ばれた時だった。
昨年からチームに加入し、実力もさることながら、持ち前の陽気な性格でファンにも愛されていた。
今季の快進撃も彼がいなければ不可能だったと言っても過言ではない。
反対にシーサーズのメンバーの名前が呼ばれるとブーイングが起きた。
それもそのはず、シーズン終盤に同率2位で優勝争いしているチームに対して、温かい声をかけるわけがない。
スタメンには外久保・石井・柚垣・松本・ロメロが名を連ねた。
1ピリオドから両チームともに持ち味を存分に発揮し、一進一退の攻防が続いていた。
21-22で1ピリオドを終えると2ピリオドは45-42で折り返した。
「前半を終わって3点差、小さいリードだが、この3点を生かすも殺すもお前ら次第だぞ」
大月の言葉にシーサーズの面々も気が引き締まる。
3ピリオドも開始から激しい攻防が続き、67-65で終えた。
「ロメロとルルプス、外久保と閨、柚垣と若梅、交代だ。ラストピリオド、頼んだぞ」
新加入の3人を含んだプレイヤーの5人はポジションについた。
4ピリオドはシーサーズボールで始まった。
閨がボールを運ぶと若梅にパス、若梅は松本のスクリーンを使い、シュートを放つも決まらない。
跳ね返ったリバウンドをロメロと長尾が競り合いも、ボールはどちらの手にも収まらず、何度か競り合いが続く。
激しい競り合いで長尾がバランスを崩すとロメロは両手でがっちりと取りに行く。
「ナイスリバウンド!」
長尾の声とともにボールはロメロではなく、ロドリゴの両手に収まる。
会場は大型のロメロの上から183センチのロドリゴがジャンプしてリバウンドを取ったことに沸く。
何事もなかったようにロドリゴはドリブルは始め、俊足でシーサーズのディフェンスを抜く。
ロドリゴの速攻にこちらも俊足の閨が反応し、なんとかロドリゴに体をぴったり付けシュートを防ぐ。
ロドリゴはその場で上にジャンプすると3ポイントラインで待ち構えている平馬にパス。
パスを受けた平馬はすぐさまシュートを打つ。
平馬の手から放たれたボールはリングに当たらない。
パスをしていからすぐに走り込んでいたロドリゴへのパスだった。
これには反応できなかった閨を置き去りにして、ロドリゴはタップシュートを決める。
67-67と同点に追いつくと会場のボルテージはマックスに上がった。
ロドリゴ!バン バン バン! ロドリゴ!バン バン バン!
太鼓を使った応援もひつきは大きくなり始めた。
「走れ、閨!」
エンドラインから石井が閨にパス。
パスを受けると一気にスピードアップ、ドリブルで相手を抜き去る。
しかし、閨の前にロドリゴが立ちはだかる。
閨は臆することなくロドリゴを抜きにかかるも抜ききれない。
それでも強引のレイアップに向かうが、閨のシュートはロドリゴにブロックされる。
転がったボールに反応したのは若梅だった。
若梅はボールを拾うと自分がフリーになっていることを確認し、シュートを放つ。
シュートはリングに当たらない。
閨のシュートをブロックしたまま、ゴール下に残っていたロドリゴがジャンプし、手を伸ばすも届かない。
ロドリゴの後ろから伸びてきたのはルルプスの手だった。
ルルプスは空中でボールをキャッチするとそのままダンク。
「ウァオォォ…」
目の前で豪快ダンクを決められたロドリゴから思わず声が漏れた。
「ナイス、ワカウメ、アリュープパス、ナイス」
ルルプスの言葉に若梅は何も言わずに親指を立てた。
今まで中心でやってきた3人に代え、新加入の3人を出すことに、大月は少しの不安と大きな期待があった。
3人は大月の期待に答え、柚垣ら3人とは違うカラーで出し始めた。
今までとは一味違うシーサーズに手こずったユニコーンズは4ピリオドで失速した。
スパッ!
残り5秒で若梅がジャンプシュートを決め、スコアを95-80にするとこのまま試合が終わった。
3連戦初戦を勝利で飾ったシーサーズは、ロッカールームで同時刻に行われていた試合で鎌倉が勝利したと聞いた。
今日の結果を含め、シーサーズは首位に立つことはできなかったものの、単独2位に躍り出た。
1位=30勝7敗 鎌倉パープルソード
2位=29勝8敗 琉球シーサーズ
3位=28勝9敗 小樽ユニコーンズ