3年目のオフシーズン
シーズンの結果、琉球シーサーズは前半戦の勢いとは対照的に後半戦に大失速し、残留が決定。
宝栄悠介という絶対的エースを失った烏丸ブラウンボーラーズは今季も立て直しがきかず、7位でGRADE=Tに降格した。
鎌倉パープルソードは期待のルルプス・マリンがシーズン当初からチームに馴染めず、レギュラーを外され、最後の5試合ではベンチにも入らなかった。
前半戦を2位で折り返したものの、後半戦ではあまりチームが上手くいかず、3位に終わり残留。
前堂監督率いる小樽ユニコーンズは前半戦で6位、この結果から前堂監督は解任され、新たな監督を迎えた。
さらに、サン・ベス・ロドリゴというブラジル人SFを獲得すると、水を得た魚のように快進撃を見せ、シーズン2位でGRADE=Eに昇格した。
来季のGRADE=Eはシーサーズ・パープルソード・ユニコーンズを含む8チームでシーズンを戦うこととなった。
鎌倉パープルソードは新体制を発表した。
監督に前小樽ユニコーンズの前堂監督を起用し、ルルプス・マリンを解雇し、カーニー・ジョンソンというアメリカ人センターを獲得した。
昨年からのレギュラーの吹春・中滝・剱田の3人とカーニー・ジョンソンがどこまで融合できるかが来季昇格のカギとなる。
小樽ユニコーンズはオフシーズンに大きな動きは見せず、ルーキーを1人獲得しただけだった。
3ポイントの平馬、インサイドの長尾、点取り屋のサン・ベス・ロドリゴの3人が安定した働きが出来れば、昇格の可能性もある。
大月の就任会見が開かれた部屋で今日はシーサーズの新体制が発表された。
「3年目の指揮をとります、大月です。来季こそは昇格をしたいと思います」
後半戦の大失速よりも前半戦の好調を評価された大月が3年目の指揮を取ることが決定した。
「3名の選手の退団が決まりました」
3番手ガードとして良い働きを身していた桑原、出場機会が多くなかった高山がGRADE=Tのチームに移籍した。
ここ数年はベンチを温めることが多かった35歳の浜口が引退を発表し、惜しまれながらチームを後にした。
「また、2名のルーキーを発表します」
ルーキー2人の獲得が発表された。
外久保と同じ中学・高校の2個下の後輩で、ポジションもPGで同じの閨竜太郎。
彼も持ち味はスピード。プレー自体はPGの割に荒く、身長も175センチと小さいが彼のスピードについて来れる高校生はいなかった。
もう1人が190センチの若梅大希。
大学卒業でポジションはSF・PFと2つのポジションをこなす。
インサイドもアウトサイドも上手く、オールラウンドーとして活躍、早くも柚垣2世と言われている。
「あともう1名、新外国人を発表します」
大月の口から発表された選手は前鎌倉パープルソードにルルプス・マリンだった。
ルルプスにはカナダ・アメリカから各1チーム、スペインから3チームのオファーがあった。
彼が外国への移籍が濃厚なのを知っていながら大月はオファーを出したのだった。
ルルプスが選んだのがシーサーズだった。
彼はその後に行われた会見で、なぜシーサーズに移籍を決めたのかという質問に対してこう答えた。
「シーサーズ、そして、ロメロには借りがある。オレは借りっぱなしが嫌いなんだ。ただそれだけだ」と。
ロメロへの肘打ちの1件で問題児として名をはせたルルプスを獲得したことに記者団から疑問の声が飛んだ。
「なぜロメロを怪我させられたのにルルプスを獲得するんですか?」
「また柚垣とロメロのような確執が生まれるのでは?」
「ルルプスはチームに馴染むことができるのですか?」
これらの質問に大月は多くを語らず部屋を退室した。
1部のシーサーズファンから非難の声が上がったと同時にどこか期待感が持てた。
それは2年前、柚垣とロメロの確執を取り除き、弱いシーサーズを勝てるチームに変えた大月の手腕を認めているからだろう。