崩壊!
ロメロを失ったシーサーズは崩壊を始めた。
インサイドの大黒柱の欠場は主に得点とリバウンドの面で影響を及ぼした。
怪我のロメロの穴を埋めようと柚垣はエースとして頑張りを見せるも、ワンマンチームと化したシーサーズを止めることは容易であった。
実際、柚垣の平均得点は伸びたものの、それはロメロが今まで攻撃していた分が柚垣に回ってきただけだった。
つまり、攻撃回数という分母が増えたことで、得点という分子も自動的に増えただけだった。
連敗…、連敗…、連敗…。
この結果に大月もただただ、唇をかみしめるしかなかった。
「大月、やめろー!」
「なにやってんだ!やる気あんのか!」
「帰れ帰れ!」
「金返せ!」
シーズン最終戦、鎌倉パープルソード戦に3連敗したチームに厳しい声が飛んだ。
この結果から、シーサーズは残留が決定した。
簡単に崩壊し、転落していくチームを病室で見守っていたロメロの元に1人の客が来ていた。
「ロメロ、すまなかったな。オレはまだまだの人間だ。我を忘れてしまうなんて……」
「お前と同じ境遇にオレもいた。お前の気持ちは分かる。オレもチームに馴染めなかった」
「あの試合、ロメロはチームと一体化していたじゃないか!」
「オレとお前の違いは、チームメイトに恵まれていたか恵まれていなかったか。それだけだ」
その言葉を耳にしたルルプス・マリンはロメロの部屋を出て行こうと歩きだしたが、入り口で止まった。
「そんなチームでプレーしたかった。次会う時はスペインかアメリカか。ないとは思うが、日本かもな……」
そう言って部屋から出ていくルルプスの背中を大月は見た。
ルルプスと入れ替わるようにして大月がロメロの部屋を訪れた。
「調子はどうだ?」
「オッケー、オッケー」
「今日の鎌倉戦、ルルプスはベンチにも入っていなかった。噂によれば事実上の解雇。来季からは母国スペインかアメリカやカナダのリーグへの移籍が濃厚らしい」
「ザンネンダ」
「あと、シーサーズを昇格させれなかったこと、すまなかった……」
「ツギ、ツギ、ライネンガンバル」
悲観的な大月とは対照的にロメロは来年を視野に入れ気持ちを入れ替えていた。