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オルテンシアの魔法博物館 〜出戻り魔法使い、博物館の経営始めます!〜  作者: 雪嶺さとり


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7.妖精と魔法使い(2)

「ごめんください。ここに、博物館があると聞いたのですが」


 ひょっこりと顔をのぞかせたのは赤髪の女の子だった。

 オルテンシアより年下の、十代半ばぐらいの外見年齢だ。


「こんにちは。ごめんなさい、この博物館はまだオープンしていないんです」


 中へ招き入れながら説明すれば、少女の背中にうっすらと蝶のような羽が透けていることに気付く。


(よ、妖精……! 久しぶりに見た!)


 クラヴィスにいるのは魔法使いだけではない。妖精や魔族、様々な種族が集まっている。

 中でも妖精は魔法使いとは古くから縁のある種族で、オルテンシアもよく知っている。


 長命種であり、見た目は様々。自然との調和を好み、時には人間に力を貸してくれる存在だ。

 ノクトレアでは一度もお目にかかることはなかった。もしかすると人から隠れて今も住んでいるのかもしれないが、そう表には出ててきてくれないだろう。

 

「いえ、お客さんではありません。面接を、受けに来たのです」

「面接って……面接!?」


 少女は真面目な顔をして頷く。


「知り合いの方から、ちょうど募集しているとお聞きしまして。あなたが館長さんですよね。お話は伝えてくださっているとのことなのですが」

「ええっと、ちょっとお待ちくださいね」


 ポケットから手帳を取り出して必死にめくるが、そんな予定は一言も書かれていない。

 もちろん、誰かから聞いたこともない。そもそもまだ求人広告は手元にある。


 そうなると、オルテンシア以外の人が話を持ちかけたということが考えられる。


「えっと、こちらにおかけ下さい。少々お待ちくださいね」

 

 少女は椅子にちょこんと座るが、彼女が妖精であるということは見た目通りの年齢ではない。子ども扱いなんてもってのほか、お客様として対応しなければ。


 とにかくシグルズを呼んでこなければと思ったら、ちょうどタイミング良くシグルズが現れる。


「おっと、一足遅かったようだ」

「シグルズさん、あの、ちょっとお話が」

「分かっている。彼女はイヴェッタが連れてきた子だ」


 そう言うなり、シグルズは少女に向かっていく。


「久しぶりだな、リーナ」

「お久しぶりです、シグルズさん」

「変わりないようで何よりだ。イヴェッタからの紹介だと聞いたが、以前の職場はどうしたんだ?」

「それが……色々とありまして」

「すまない、俺が悪かったな。話せるときでいいさ」

 

 少女は椅子から降りると、ぺこりと礼儀正しく挨拶をした。

 なんと二人は面識があるらしい。

 すっかりオルテンシアは置いてけぼりだ。


「あのぉ」

「ひっ!?」


 背後から聞こえた声にぱっと振り向けば、申し訳なさそうな顔のイヴェッタがいた。

 足音も気配もなかったため、驚いて飛び退いてしまう。いつの間に現れたのだろう。


「ごめんなさいね、うっかり伝え忘れちゃってたの。のんびりしているとあっという間に日が経つものね」

「ミス・イヴェッタ。あなたは少々時間にルーズすぎるかと」

「うふふ、リーナは相変わらず堅いわね」


 ふわふわした雰囲気のイヴェッタと、見た目らしからぬ堅い事務的な口調の少女。

 なんとも対称的な光景だった。


「ええと、こちらの方はイヴェッタさんの紹介ということで良いのでしょうか……?」

「ええ。私と同じ種族の子よ」

「種族?」


 思いもよらない言葉に首を傾げる。

 見たところ、リーナという少女は妖精で間違いない。つまり、同じ種族ということは。

 

「あら、そう言えばまだ言ってなかったわね。実は私も妖精なのよ」

「えっ」


 オルテンシアの反応に、イヴェッタはふふふと微笑んでいる。

 

「イヴェッタはこの館に古くから住んでいる妖精なんだ。要は本来の家主と言える。いつもの姿は人間に擬態しているだけだ」

「庭師って、そういう……」


 イヴェッタの魔法はあまり見たことの無いものばかりだと思っていたが、まさか魔法使いではなく妖精の力だなんて思いもよらなかった。

 

「な、なんで教えてくれなかったんですか」

「いや、それは……」


 自分だけ知らされていなかったなんて、とシグルズに問えば視線がイヴェッタに向けられる。


「私がシグルズとエドアルドに口止めしてたのよ。私の本当の姿を見たら、きっとあなたはびっくりしちゃうと思って」

「いえ。むしろ、納得しました。イヴェッタさんがただの庭師だとは思えなかったので」

「あら!? 私の擬態って下手なのかしら」

「そういうことではなくて、イヴェッタさんがあまりに綺麗なので……」

「まあ、嬉しいわ! あなたはやっぱり優しい子ね」


 イヴェッタの浮世離れしたのんびりした姿は、妖精と言われるとしっくりくる。

 時間の流れが違うかのような穏やかな雰囲気は、そこから来ていたのだろう。


「そんな優しいあなたにお願いなのだけれど、私の同胞をどうか雇って欲しいの」

「どのような仕事でも精一杯勤めさせて頂きます」


 リーナがオルテンシアに向かって頭を下げる。

 シグルズと顔を見合わせると、彼は大きく頷いた。

 

「えーと、では、面接……しましょうか」

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