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ネラ物語〜深き森にて、禁忌を求める孤高の魔女〜  作者: 星狼
〜森の魔女〜

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8/12

ネラは魔導書のページをゆっくりと捲った。

視線は滑らかに滑り、文字の列をなぞるように動く。

しかし、それはただの仕草に過ぎなかった。

彼女は魔導書の内容を一切読み返していない。


「根源は……生命そのものの本質よ。死者を蘇らせる力も、これから生まれるの」


今、自分が目の前の男に興味を持ち始めていることを、ネラは感じていた。

だから、払い落とす。

炉についた煤を、柔らかく、滑らかに、そっと払い落とす。

興味という煤が、火の純度を曇らせる前に。

彼女の炉は、常に清らかに保たれなければならない。

それが、彼女の掟だった。


男が静かに呟いた。

「地属性と光属性の融合だな……」


ネラは驚きの表情で目を見開いた。

赤い瞳に、わずかな揺らぎが走る。

「あら……そこまで見抜くとは。私の研究の核心に近づいているわね……」


男の言う通り。

根源の力――死者蘇生には、生命力の増加だけではなく、生命そのものの本質を組み込まなければならない。

また、半分正解で、半分外れの答えではあるが、そこには男の言う光属性の概念が融合されている。

それが根源の力を生み出す。

単なる地属性の生命力だけでは、死者の肉体を動かすだけの空虚な殻が生まれる。

光属性の「命の輝き」が加わることで、初めて連続した存在が再現される可能性が生じるのだ。

だが、多くの術師は、光を「癒し」や「浄化」の属性としか認識しない。

だからこそ、死者蘇生は禁忌とされ、試みた者は「生命を冒涜した」として断罪される。

根源の力の本質を理解しないままに手を伸ばせば、魂は断絶し、肉体は崩れ、心は永遠の空白に落ちる。

それが、この世界で死者蘇生が許されざる術たる理由だった。


「続けてくれ」


男は続ける。

その声は穏やかだが、視線は変わらずネラに固定されていた。


ネラは男の雰囲気に、静かな関心を抱いた。

風貌とは対照的で、繊細な男だと。

彼の薪の積み方は、寸分の狂いもなく整えられている。

雑に放り込まれた薪が火を乱すことなく、均等に燃え続ける。

これなら、彼も理解出来るのかもしれない。

根源の力を。

彼を試してみたくなる衝動が、炉の底で静かに揺らめいた。


ネラは手のひらに青白い光を宿らせた。

淡く、冷たい輝きが、部屋の空気をわずかに震わせる。

「では、実践的な証明をしてあげましょうか? この光が、根源の力よ」


男が静かに――だが強い言葉を放った。

「待て、お前の深層心理を聞きたい……それ青って事なら、何か水属性も混ざってるはずだ……」


研究室の空気が、一瞬だけ凍りついた。

ネラの炉の中で、薪が静かに音を立てて燃え始めた。

次の瞬間が、待たれていた。

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