表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネラ物語〜深き森にて、禁忌を求める孤高の魔女〜  作者: 星狼
〜森の魔女〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

駆け引き

ネラの胸に、静かな高揚が広がっていた。

それは、ただの知識の分け合いから生まれるものではなかった。

男の口、意図せず零れ落ちた言葉


――メイニヤックは俺の想定してない召喚獣として生まれた


それは彼女の心に小さな勝利の灯をともしたのだ。

召喚魔法に、そんな「想定外」が起こり得るのかと、彼女は初めて知った。

あの黒い巨犬は、男に完全に忠誠を誓っているように見えるのに、尚も「想定外」の存在として生まれたと言っている。

そこには、まだ見えない何かが潜んでいる。

ネラの赤い瞳が、好奇心の光を湛えて輝いた。


そして、何より重要なのは――男は、まだ情報を「提供」していないということだ。

彼の口から滑り落ちたのは、ただの無意識の漏れ。「交換材料」としてではない。

彼女はそれを、優位に受け取った。

このやり取りは、互いの価値を量り合うもの。

今、わずかだが、彼女が一歩前に出たのだ。


ネラはゆっくりと息を吐き、声を柔らかくした。

「召喚獣と研究……その過程、もっと詳しく聞かせて。私も新しい発見があるかもしれないわ」


下手に出るような、穏やかな微笑みを浮かべて。

だが、心の底では、鋭く狙っていた。

もう一言、何かが零れ落ちるかもしれない。

この男の隙を、そっと突く。


男は軽く肩をすくめ、口元を緩めた。

「それなら、こちらから出す情報は召喚獣の繊細な生成プロセスでいいか?」


ネラの胸に、微かな失望がよぎった。

やはり、抜け目がない。

自分の狙いが失敗したことを、ネラは瞬時に察する。


ーー恐らくもう口を滑らせることはない。


交換の形へと、きちんと戻してきた。

もしかしたら、この男は、最初からそう仕組んでいたのかもしれない。

敢えて小出しに「想定外」の言葉を零し、彼女の興味を強く引きつけておいて、

今、ここで本当の交換に持ち込む。


ネラは静かに思った。

してやられたのかもしれない。

だが、それでいい。

これはまだ入口だ。

一歩引かれたとしても、別の角度から求めればいい。

このやり取りは、まだ終わらない。


男はさらに言葉を続けた。

「ただ、それを聞くとアンタはとんでもなく損をする事になる……」


意味深な響き。

ネラの身体が、小刻みに震えた。

だが、それは怯えの演技。

本当の興奮も混ざっているが、大げさな演技。


この男は、また駆け引きを仕掛けているのだろうか?。

損をする――それは、私の魔術の欠点を暴かれることか?

それとも、もっと深い、恐ろしい何かか?

ネラは敢えて、声を震わせて問うた。

「その……損をするというのは、私の魔術の欠点を知ること? それとも……もっと恐ろしい何か?」


怯えた孤独な魔女の姿を、わざと見せて。

さぁ、何を言う?

この言葉の向こうに、何を隠している?


男は静かに答えた。

「いや、違う……俺には先生の友人がいるんだよ。近々論文にしてもらうんだよ。だからわざわざ俺に聞かなくても、それ見ればいいんだよ」


男の言葉にネラの瞳が、わずかに揺れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ