全てを知る魔女
「それに一番のネックは『道徳』だ。お前の理論が完全に完成しても、それでもまだ道徳がああだのこうだの否定してくる人間はいるだろう。お前のゴールはその研究の完成ではない。完成した後も戦いは続くだろう」
ウルフは静かに、だが力強く続ける。
ーーそう、その通り。
全てが終わったとしても、その終わった全てはまだ人にとっては『禁忌』である。
全てが終わった後も、私は禁忌を『禁忌で在らぬ物』にしなくてはいけない。
軽く息を吐く。
余計な物は外へと出す。
「そうね。理論だけじゃなく、そういった問題もあるわね。私の研究、まだまだ道程は長そうね……」
ーー道程は長い。果てしない。
「その時になったら必ず共に戦ってやる。俺には先生の友人がいるって言っただろう?その先生はそっちの世界では強いんだ」
ーーそう。だけど、これは森の外の話
今日、外へと繋がる光が見えた。
「あなたたちが、私の味方になってくれるのね。心強いわ」
ウルフ、アルク、メイニヤック、ウルフの言う先生。
彼らと次の真理の宝を探しにいくのは、違う風景。
それは果てしない風の平原なのか、切り立った崖の谷間なのか、それとも岩だらけの荒野の彼方なのか。
「先生にお前の事を伝えておいてやるよ。とにかく今は実験を続けろ。ここから先もまだまだ難題は出てくるだろうが、ここまでのように『感覚』でいいから続けるんだ。それに成功したら俺がまた解析して精度を上げてやる。俺は洞察力が最大の強みなんだ」
私は、この孤独の森に住む魔女。
だけど、この森が嫌いではない。
この森の全てが好き。
この森には、まだ私の知らない景色がある。
透き通った水が静かに湧く隠れ泉があるだろう。
苔と根に守られた大樹の樹洞があるだろう。
霧の中でそっと輝く小さな滝があるだろう。
その全てを知ってから、森の外の世界を彼らと旅しよう。




