蠢く嵐
「おい……待て……待てよ、待てよ……おい……」
突如、ウルフが呟き始める。
それは静かではあるが、重い。
気づいたネラの口角が、ゆっくりと下がっていく。
再び静かな表情に戻る。
朝の光が頰を照らすが、その光は今、翳りを帯びていた。
ーー何かが起こっている。彼の中で何かが起こっている。
今、彼の中で、風もないのに木々がざわめき始めている。
葉は不自然に震え、幹が軋むような小さな音が響いている。
嵐ではない。だけど、何かが蠢いている。
ーーだけど待とう。
彼は自分の力でこのざわめきを収められる。
ネラは黙ってウルフを見つめる。
その視線は、ただ静かに、ただ深く彼を捉えていた。
森は静かだった。
風の音も、鳥のさえずりも、今は聞こえない。
湖の水面は鏡のように澄み、木々の影が細長く伸び、朝日がその影を優しく縁取るだけ。
葉一枚動かず、霧の残る空気が、息を潜めたように重く、静かに満ちている。
その静寂の中で、ウルフの息遣いが、わずかに聞こえる。
「……繋がった」
ーーざわめきは収まった。
ウルフは口を開く。
静かで、力強い、霧が晴れた後の朝のような声。
「昨日、思いついていたのはここまでだったが、今日、実際に言葉にするとさらに理解が深まったよ。」
ーー探しに行っていたのか。
彼は断崖の側洞に眠る宝の箱を、探しに行っていた。
そして、今、見つけて戻ってきた。
その中には何が入っているの……?
ネラの瞳が、静かに輝く。
青白い光のように、ゆっくりと、確かに広がっていっているのを感じる。
ウルフは強く言い放つ。
湖面を切り裂く強い風。
静寂が裂かれる。
「『魂』なんてデカい物を作る為には、地・光・水・闇・風の5属性が使われているんだろ?ここに火属性が混ざっていない方が不自然だよな!?」
ーー全てが繋がった。




