邪念
アルクは何も言わず、ただただ羽音だけを響かせながら、森の空を旋回する。
何度も何度も同じ場所を旋回し続ける。
それは、死んだ枯れ葉が風の渦に巻き込まれ、まるで生命を宿らせたかのように小さな舞いを踊っているかのような光景。
ーー自由。
自由が死者に生命を吹き込ませる。
あれこそが自由だ。
感覚など必要ない。
瞳に映るアルクの動きそのものが自由だ。
ーーあのアルクの動きは私のイメージする『根源の力』の動きそのものだ。
アルクの動きを見て、ネラは感じる。
だが、アルクの動きは、同時に在らぬ物にまで生命を宿らせてしまった。
ーー何が『迂回経路』だ。
迂回経路があのような事が出来るわけがない。
アルクは自らの意思で、私に伝えてくれている。
自由のイメージを伝えてくれている。
ネラは歯を食い縛る。
不必要な物は外に捨てるのが彼女の掟だ。
ーーアルクは私に伝えてくれている。
言葉ではなく、動きで私に伝えてくれている。
そして、アルクは求めてはいない。
今、芽生えた私の感情など求めてはいない。
アルクが私に求めているのは、前に進む一歩。
ーーだから、前に進もう。
余計な物は捨て、前へと進もう。
邪念を切り払う。
ネラはゆっくりと息を吐き、視線をウルフに戻した。




