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ネラ物語〜深き森にて、禁忌を求める孤高の魔女〜  作者: 星狼
〜森の来客〜

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21/38

見えない研究室

再び泉から顔を出す。ウルフと共に。


ネラはゆっくりと息を吐き、ウルフに向かって言った。

「執着よ、ウルフ。私が混ぜている感覚は『執着』」


自分の声に力が込められているのが、わかる。

間違いではないという、強い感覚。

胸の奥で、青白い光が微かに灯る。


「それだ……!? もっと詳しく言えるか……!?」


ウルフが目を見開く。

その様子から、自分のこれが確信へと変わる。

ネラは言葉を紡いでいく。

湖のほとりの風が、彼女の髪を優しく揺らし、木々の葉がささやくように震える。


「『死』とは『最大の欠如』と考えられるわ。その欠如を埋めようとする衝動こそが、闇属性のエネルギーの原動力」


ここまでの無意識が自然と一つの意識となり集まってくる。

ネラの声は静かだが、確かな響きを帯びていた。


「欠如……欠如か……なるほど……確かに……ある……」


ウルフもネラの意識を追いかけるように、言葉を呟く。

彼の瞳が、僅かに曇る。


ーーダメ。


無意識に自分の高鳴りに気づく。

少し、興奮しているようだ。

ネラは言葉を紡ぐ速度を少し、落とす。

今、私はウルフの研究室にはない道具を使っている。

彼に合わせてあげないと。


「最大の欠如……もう存在しないものを絶対に取り戻したいという想いには、病的とも言える程の強い『執着』が必要なるはずよ」


ゆっくりと、興奮という不必要な物を捨て、ただ冷静に。

ネラの声は、再び静かな水面のように落ち着きを取り戻す。


「なるほど、なるほど。確かにその通りだ……」


ウルフは自分自身に言い聞かせるように何度も何度も頷いている。

彼の手に羽根ペンが握られた事を感じる。

羽根の色は緑と赤のアルクの羽根かな?

ネラはそっとアルクに視線を移す。

ゆっくりと、彼がページを開くのを待つ。


「……貴方にも、そういった感情はあるんじゃない?」


再び視線をウルフに戻し、問いかけてみる。

彼が出す答えはもうわかっている。

これはもう確認の儀式。


ウルフは落ち着いた声で、だが力強く短く言った。

「俺にもある」


彼の魔術書に私の言葉が刻まれた。

湖の風が、木々の葉を優しく揺らし、朝日が水面に細かな光を散らす。

ネラの胸の奥の、青白い光がゆっくりとまた広がる。

それは、執着という名の新たな灯火だった。

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