表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネラ物語〜深き森にて、禁忌を求める孤高の魔女〜  作者: 星狼
〜森の来客〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/30

泉に響く脈動

朝の霧が湖面に薄く広がり、静かな白を纏っていた。

木々の影は細長く伸び、水辺に黒い線を描く。

湖のほとりにゆっくりと立つネラ。

足元の苔が湿り気を帯び、素足に冷たい感触を伝える。

彼女は水瓶を手に取り、膝を折った。

瓶を静かに湖に沈める。

水が瓶に満ちる音だけが、森の静寂を優しく破る。

それは、滴る水音ではなく、ゆっくりと広がる波紋のささやきだった。

ネラは目を閉じて、静かに心を整理する。


ウルフとの出会いによって、ネラの禁忌の研究は更に前に進む事へとなった。

勿論、まだ新たな風景は見えてはいない。

それでも、一歩一歩着実に、森のより奥深くへと彼女を誘う。


『魂とは水のような形のない物である』

ウルフとの話で得た学び。ネラはその概念を組み込んだ。

その結果『根源の力』は歪んだ。

青白い光は、歪な光へと変化した。しかし、その歪んだ光は今までよりも不思議と安定した。

この歪んだ光の方が、より魂らしいとネラば確信に至った。


自分の理論が間違いだったわけではない。これは泉を掘り進める作業。

浅い泉で水を汲み続けても、それはやがて泥に混じって濁ってしまう。

だから、泉をより深く掘り進める。


魂の研究を禁忌と言う者達は全て、この泉が浅かったからこそ、濁った水を飲み、やがて水が枯れ、喉の渇きにより死んだのだ。

ネラは瓶をゆっくりと引き上げ、水面に映る自分の顔を見つめた。

赤い瞳の中に、小さな光が微かに揺れている。

それは、歪みながらも、確かに安定した輝きだった。


冷たい水が瓶に満ちる音が止む。

ネラは立ち上がり、水瓶をそっと抱えた。

湖面に朝日が差し込み始め、霧が薄く溶けていく。

木々の葉が風に震え、かすかなささやきを上げる。

彼女は静かに息を吐いた。


「……やる事が多いわね」


思わず、声を漏らしてしまう。


その声に引き寄せられるような、もう一つの脈動。

荒く、強い口調の言葉。

だが、その声に胸が高鳴る。


「おい、おい!ネラ何処だ!?出てこい!」


「……ウルフ、落ち着けよ。多分、この辺りにアイツの小屋があったはずだよ」


「黙ってろ、アルク!俺が忘れるんだよ!」


ウルフだ。

また来てくれた。


ネラは腰を上げた。

水瓶をそっと抱え、湖の水面に映る自分の姿を一瞬だけ見つめる。


ーー大丈夫。いつもの私。


彼女は小さく息を吐き、声の元へと歩き出した。

霧がゆっくりと晴れ始め、木々の隙間から朝日が差し込む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ