解ける魔法
「今日は互いにとって有意義な会話が出来た」
ーー駆け引き失敗。
勿論、わかっていた。
失敗する事はわかっていた。僅かな可能性に賭けてみただけだ。
だから、もう、いつもの魔女に戻る時間だ。
心で一息ついて、自分を整える。
ネラは静かに息を吐き、魔導書を机の上に置いた。
「俺が『魂』お前が『根源の力』と認識していたものは、ただの『大地の生命力と光の命と水の形のないようなものが複合して出来たもの』って認識を変える事が出来ただろ?」
ーーそう。
彼のおかげで一つ前に進む事が出来た。
根源の力は地属性と光属性からの概念からだけで出来ているものではない。
そこに加えて、水属性の概念も加わっている。間違いない。
そしてここには、まだ他の概念も混ざっているのかもしれない。
ーーだからこそ、禁忌なのだ。
「そうね……私たちの研究、根本から間違っていたのかもしれない。また……会いに来てくれる?」
この先に進むには、彼がまた必要になるかもしれない。
だから、ネラは言葉を投げた。
「あぁ、勿論だ」
男は満足気な笑みを浮かべて言う。
「お前のおかげで俺は『魂』や『生命力』についてのより深い知識を得る事が出来た。お前も、自分の無自覚で作っていた物の生成プロセスの深い詳細が知れた……こういう関係で行こうぜ。お前の発想で俺も新しい物を何か考えてみたい」
ーーその通りだ。
彼はこの森の住人ではない。
自分の場所に帰らなければならない。
そこはきっと、果てしない風の平原。
草が膝まで生え、風が絶え間なく波のように揺らす場所。
見えるのは、広すぎる空と、何処までも続く地平線だけ。
「新しい研究……楽しみね。また私の森で、もっと深い話ができたら……」
だが、繋がっている。
その平原と、この森は繋がっている。
そして互いが一つ、何かを見つけた時にまた出会う事になるだろう。
「後、最後に言っておく……」
男の表情が少し険しくなる。
ネラはそっと視線を上げた。
「何かしら……?」
何か決めようとしていると感じるが、少し媚びてあげよう。
零れ出そうな笑いを堪え、眉を顰める。
私は、強い興味を持っているような表情は出来ているかな?




