第3章 再び世界へ
全面的に自己責任でお願いします。
今回、長いです。
~~二度目の人生、一日目~~
私の二度目の人生それは、
「にゃんとちゅうとにゃんとな、残念ですけど朝ですよ」
という、ふざけた音から始まった。
『……にゃんとちゅうとにゃんとな、残念ですけど朝ですよ〜』
間の抜けた電子音が、枕元から何度も流れてくる。
(……懐っ!)
一瞬で目が覚める。
(この目覚まし!前の人生でも、小学生の頃だけ使ってたやつ。)
母が「普通の音やとあんた、起きへんやろ」
って理由で買ってきた。
『にゃんとちゅうとにゃんとな、残念ですけど朝ですよ〜』
もう一回鳴る、手を伸ばして止めた。
(残念て言うなや朝がつらなるやろ)
心の中でツッコミを入れながら、体を起こした。
まだ少し肌寒い朝。カーテンの隙間から、薄い光が差し込んでいる。
すき間から入る光りが目にはいる。まぶしい。
上を見ると、やけに天井が高い。
ああ、違う。
(――私が小さいのか。)
布団から出た腕は、細くて、ぷくっとしている。
「……。声が、子どもの男の子の声や。」
机から手鏡をとり見ると、そこには見知らぬ少年。
しかし、どこか面影がある。
「あっ、前にTikTokで自分の写真を異性にしたら、好みのタイプになるってやつやって、出た人を子供にした感じやな~。将来有望なイケメンやん。ありがたや~」
(……ほんまに、転生したんやな~それにしても静かや。)
部屋をみまわす。
この時間、父はもう仕事に出ている。
タクシー運転手で、朝はとにかく早い。
(父さん、今日ももう走ってるんやろな)
前の人生と同じ。
それが不思議と、安心できた。
布団をたたみ、パジャマを脱ぐ。
洗面所で顔を洗い、歯を磨く。
踏み台に乗らんと、ちゃんと鏡が見えへん。
(ほんまに小さいな……前世はこの頃すでにぽちゃ子やったし、入学時点て、眼鏡やった。
令和や平成後期のスタイリッシュなカッコいいやつなんか無くて、おっさんがつけてそうな眼鏡とかしかなかったからな。
目悪くならんようにせなあかん。)
そんなことを考えながら、可能性の固まりな自分に満足する。
キッチンに行き、食パンを取り出しトースターに入れて、スイッチを押す。
鏡に映るのは、何度みてもやっぱり小学生の男の子。
とりあえずトイレに行き再度お股も確認。
(ちゃんとゾウさんいました。)
心臓が軽い。
身体が痛くない。
(やり直せるんや)
胸が、震える。
顔がニヤける。
パンが焼ける音が、静かな部屋に広がる。
その時、襖が開き、中から母が出てきた。
「……おはよ」
眠たそうな声で、母が起きてきた。
パジャマ姿で、髪はまだ少しはねている。
「おはよう」
自然にそう言えた自分に、少し驚く。
「早いな。有利」
「うん!今日から学校やもん。」
自然と言葉がでた。
(あぁ、なんか自然と学校って出たな…男の子として生きた7年間の記憶もちゃんとある。
これはありがたいわ。)
母はキッチンでコーヒーを淹れ始めている。
私は焼けたパンを皿に乗せ、マーガリンを塗りながらちらりと母を見る。
(最後に見た母は、まだ70歳にもなっていないのに病気で、80歳くらいに見えた。
体も今の半分で、髪は薄くなり灰色。腕には、医療麻薬のチューブと点滴。鼻には、酸素チューブ。片足は無く、車椅子。
今の姿からは到底想像出来ない姿だった。ダメだ考えるな。思い出したら、涙がこぼれる。)
オレは、頭を軽く振り、食パンにかじりついた。
ラジオからは朝のニュース。
(そういえば、これ毎日聴いてたな。)
たいした内容じゃない。
(いつの間にか終わってた番組だ。
アナウンサーさんも亡くなったはずだし。)
のんびり過ごす朝のこの光景そのものが、前の人生ではどれほど遠かったか。
(朝が怖くない)
それだけで、胸が少し軽くなる。
「学校、忘れ物ない?」
母が玄関先で聞く。
「うん。大丈夫!」
ランドセルを背負いながらそう答える。
玄関で靴を履きながら、心の奥で静かに決めた。
(今度は、ちゃんとやる。
逃げへん。腐らへん。
自分を粗末にせえへん。
もう泣かへん。
誰にも依存せえへん。
自分の人生を自分で作る!
そんで自分なりに自由に幸せに生きるんや!)
そう誓った。
ドアを開けると、朝の空気が肺いっぱいに入ってきた。
一人こっそり拳を握る。
今度は男として生きる!
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




