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『逆行転生~新しい自分と人生~』  作者: 椿 有利


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16/17

土曜の午後、~水の中で~

全面的に自己責任でお願いします。



 土曜日。

 

午前中は、普通に学校。  


平日より少し短い授業やけど、国語と算数はしっかりある。


(昔は土曜授業、当たり前やったな)

 

チャイムが鳴って、終わりの会。


「「起立、気を付け、礼!さようなら!」」


「はーい、気ぃつけて帰りや」

 

教室を出ると、すぐに武が寄ってきた。


「有利、今日スイミングやんな?」

「うん、午後から」

「俺もや」

 

二人で昇降口へ向かう。

学童に行って、昼ごはんを皆で食べる。  


家に帰り、少し休んでから、スイミングバッグを持つ。  


「行ってきます」

 

 プールは、午後の方が人が多い。  

学校帰りの子どもたちで、少しにぎやかや。


「おっす」

 

団地の前でバスを待っていると、武が声をかけてくる。


「おつかれー。」


 バスに乗り、スイミングへ向かうあいだアニメの話で笑い合う。


服を着替えて水に入ると、身体が一気に切り替わる。

 

午前中、机に向かってた感覚が抜けていく。


(切り替え、早なってる)

 

呼吸。  姿勢。  リズム。

 

金曜の空手で意識してることが、そのまま泳ぎに出てくる。

 

力を入れすぎない。  

軸をぶらさない。


(あ、これや)

 

前より、疲れにくい。  


ターン後も、落ち着いてる。


「有利、今日なんか安定してへん?」

 

練習後、武が言った。


「そう?」

「うん。なんか……無駄がない」

「それ、空手のおかげかも」

「また空手か」

 

武は苦笑する。


「そんな違うん?」

「全然ちゃうで」


有利はタオルで髪を拭きながら言う。


「呼吸とか、姿勢とか、スイミングと似てる」

「へぇ……」

「水の中でバタバタせんくなった」

「それ、めっちゃ分かるわ」

 

武は少し考えてから言った。

「なあ、有利」

「ん?」

「俺さ……空手、ちょっと興味出てきた」

「まじで?」

「うん。強くなりたいっていうよりさ……」


一瞬、言葉を探してる。


「落ち着きたい」

 

その言葉に、有利は小さくうなずいた。


「それなら、向いてると思うで」 「ほんま?」

「派手ちゃうし、地味やけど」

「地味でええわ」

 

武は笑った。


「今度、見学行ってもええ?」 「先生に聞いてみよか?」

「うん!」

 

即決やった。

 


家に帰る道。


忙しいけど、しんどくない。  身体も、気持ちも、ちゃんとついてきてる。


(前の人生とは、全然ちゃう)

 

無理してへん。  

逃げてもあらへん。

 

ただ、積み上げてるだけ。

 

それが、一番強い。


金曜日の夕方。


家で道着に着替え、帯を結ぶ。

白い布が肌に触れる感覚にも、もう慣れた。


鏡の前で、帯がちゃんと結べているかだけ確認する。


(よし)


玄関を出ると、ちょうど武も道着姿で自転車を押してきた。


「お、今日も白いな」

「そっちもな」


二人で笑い、自転車にまたがる。

夕方の風が、道着の袖をぱたぱた揺らす。


すれ違う人が、ちらっと見るのも、もう気にならへん。


「最初、道着で外出るん恥ずかしかったよな」

「分かる。でも、今は別に」

「慣れってすごいな」


道場までは二十分。

信号も坂もあるけど、二人で並んで走るにはちょうどええ距離や。

走り出してしばらくすると、自然と息が整ってくる。

脚も、心肺も、前より確実に強くなっているのが分かる。


(スイミングの効果、ここでも出てるな)


「有利さ、全然息上がらんよな」

「武もやろ」

「まぁな。でも前より楽やわ」


道着で自転車をこぐこの二十分が、

もう稽古の一部みたいになっていた。


~三年生の身体~


三年生になって、ふと気づいた。


(……あれ?)


朝、服を着替えるとき。

道着の袖が、前より少しだけ短く感じる。


「こんなんやったっけ?」


母に言うほどでもない。

けど、確実に身体は変わってきていた。

体重も、それなりに増えた。


前の人生みたいに、ぶくぶくっと丸くなる感じもない。


その代わり、肩が少し張ってきて、腕や脚がしっかりしてきた。


スイミング素晴らしい。


(これは、将来細マッチョまっしぐらやな!ニヤニヤ)


少しニヤつく顔をほぐす。


水に入った瞬間の冷たさに、もう身構えなくなった。

息が苦しくならない。

長い距離を泳いでも、腕が重くならない。


(あ、これ…この前より速い)


タイムを測らんでも分かる。


水をかく感覚が【前に進む】感覚だ。


更衣室で、武は言う。


「有利、最近フォームきれいになってない?」

「そう?」

「うん。無駄にバシャバシャしてへん」


それが、妙に嬉しかった。


読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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