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『逆行転生~新しい自分と人生~』  作者: 椿 有利


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15/17

~三年生、はじめてのクラス替え~

全面的に自己責任でお願いします。



 三年生になった。


 春の朝の空気は、まだ少し冷たい。でも、校舎の中は一・二年の頃より、なんとなく広く感じる。


(ついにクラス替えか)


 一年、二年と同じ顔ぶれで過ごしてきたから、正直ちょっと緊張する。  


けど、不思議と嫌な感じはなかった。

 

昇降口の前。  


張り出されたクラス名簿の前に、人だかりができている。


「うわ、見えへん!」

「押すなって!」

 

そんな声の中、背後から聞き慣れた声がした。


「有利!」

 

振り返ると、山下 武がいた。  二年の頃より、少し背が伸びている。


「武。もう見た?」

「いや、今から。なあ、同じクラスやとええな」

「やな」

 

軽く笑い合って、二人で名簿を探す。

 

三年一組。

 

 目で追っていく。


「……あった。椿 有利」

「え、どこ?」

「ここ。出席番号十二」

 

武が指でなぞる。


「マジか。俺は……」

 

一瞬、間があってから、


「お、俺も一組や!」

「ほんまに?」

「ほんまほんま!」

 

二人で顔を見合わせて、同時に笑った。


「よかったな」

「よかったわ~。知ってるやつおるだけで全然ちゃう」


(ほんまそれ)

 

前世の記憶が、一瞬よぎる。  クラス替えのたびに、胃が痛くなってた頃のこと。

 

でも今は違う。  

少なくとも、ここに武がいる。


教室に入ると、机の配置が少し変わっていた。  


新しい担任の先生。  

知らない顔も、ちらほら。

 

席に座ると、武が後ろから声をかけてくる。


「なあ有利、三年から算数むずくなるって聞いたで」

「分数とか出てくるらしいな」

「げ……」

「でも、ちゃんとやれば大丈夫やろ」

「その“ちゃんと”が一番むずいねん」

 

苦笑する武に、有利は肩をすくめる。


「月木くもんあるし、そこで慣れるわ」

「相変わらずやな。有利」

 

武は感心したように言う。


「有利、今、習い事どんなんやってるっけ?」

「えーっとな」    


指折り数える。


「月木がくもん。月水がそろばん。金が沖縄空手。土がスイミング」

「……忙しすぎへん?」

「まあ、慣れた。沖縄空手は、今週からやし。」

 

本音や。  

全部、生活の一部になっている。

 

体は疲れるけど、翌日には残らない。  

むしろ、動いてる方が調子がいい。


「俺、ゲームばっかやわ」

「それもええんちゃう」

「有利みたいにはなれん」

「ならんでええやろ」


 有利は笑う。


「武は武でええやん」

 

一瞬、武が目を丸くしてから、照れたようにそっぽを向いた。


「……そういうとこやぞ」

「どこ?」

「なんでもない」

 

チャイムが鳴り、新しい担任が自己紹介を始める。

 

三年生。  

新しいクラス。  

新しい空気。

 

でも、有利の生活の芯は変わらない。

 

平日は、学校と宿題と習い事。  金曜は空手で汗をかき、  

土曜はスイミングで長く息を吐く。


(焦らんでええ)

 

一気に変わらなくていい。  

続けることが、一番強い。

 

黒板を見る目が、自然と前を向く。

 

三年生。  

有利の二度目の人生は、また一段、静かに、でも確実に進み始めていた。



沖縄空手 ~静かな強さ~

 

金曜日。

 

学校から帰って、いつも通り宿題を終わらせてから道着を広げる。  


真っ白で、まだ少し糊の匂いが残っている。


(空手か……)

 

前の人生でも、武道に憧れたことはあった。  

でも、体力も気力も続かんかった。

 

今は違う。  

細いけど、体は軽い。  

息も乱れにくい。


さっと道着を来て支度を整える。


「行ってきます。」

 

道場までは、自転車で20分、普段は、通らない道を行く。


(前の小学生時代は、こっちには、来ることなかったな。)


 そう思いながら自転車を漕ぐ。


道場は、沖縄会館の一角。  


畳の上に、すでに何人か子どもが並んでいた。


「正座」

 

低く、通る声。

 

白髪交じりの先生が、前に立っている。  

表情は厳しいが、目は穏やかや。


(この人、怖いタイプちゃうな)

 

自然と背筋が伸びる。


「今日は体験も含めて、基本からやる」

 

準備運動。  

正拳突き。  

前蹴り。

 

一つ一つの動作が、ゆっくりで、静か。


(派手やないな)

 

でも、無駄がない。

 

有利は、先生の動きをよく見て、真似する。  


力を入れすぎず、軸を意識する。


「……君」

 

先生が、有利の前で止まった。


「名前は」

「椿、有利です」

「力、抜きなさい」

 

一瞬、どきっとする。


「はい」

「ええ。今ので合っとる」

 

それだけ言って、次へ行く。


(見られてた)

 

でも、嫌な感じはない。

 

むしろ――


(ちゃんと、見てくれてる)

 

汗が、額を流れる。  

息は上がっているけど、苦しくない。

スイミングで鍛えた呼吸が、ここでも生きている。


最後は、礼。


「ありがとうございました」

 

声が揃う。


畳の上で正座しながら、有利は思った。


(これ、続けられる)

 

勝ち負けでも、力比べでもない。  自分の身体と、向き合う時間。

 

帰り道、夜風が気持ちいい。


(強くなるって、こういうことかもしれんな)

 

無理に前に出なくていい。  

でも、逃げもしない。

 

静かに、芯を作る。

 

それが、有利の選んだ【新しい強さ】だった。



読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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