第四章 初登校
全面的に自己責任でお願いします。
~はじまりの一歩~
「おはよう、有利」
「おはよう」
団地の外に出ると、すでに何人か子どもが集まっていた。
黄色い帽子。
少し大きめの黒や赤のランドセル。
見覚えのある顔も、ない顔も混ざっている。
(ああ……分団登校やったな。それにこの時代は、ランドセルの色が原因のいじめもあったな。無難に皆、女の子は赤、男の子は黒やな。確か一人だけピンクがいて、入学そうそう不登校になった子がいたな。)
忘れていたはずの記憶が、当たり前みたいに戻ってくる。
「有利くん、おはよう」
六年生らしい背の高い女子が声をかけてきた。腕章をつけている。リーダーや。
「おはようございます。」
自然に敬語が出た自分に、内心ちょっと笑う。
「今日からよろしくな。道ちゃんと覚えてる?」
「はい!大丈夫です。」
全部覚えてる。
前の人生で、何百回も何千回も歩いた道やから。
点呼を取って、列が動き出す。
一番前に六年、次に低学年、中学年、後ろに副リーダー二人。二列でちゃんと決められた並び。
歩きながら、後ろの方から話し声が聞こえる。
「なあ、有利って名前、ちょっと珍しいよな」
「男で有利って、なんか賢そうやん」
「そうかな?賢くはないかも(笑)」
悪意がない。
からかいでもない。
ただの会話。
(……これが普通、か)
前の人生では、
名前を呼ばれるたびに、どこか身構えていた。
今は、肩の力が抜けている。
横断歩道で止まり、旗を持った地域のおじさんが車を止める。
「おはよう」
「「「おはようございます!」」」
声がそろう。
ちゃんと、ここに居場所がある。
校門が見えてくると、リーダーが振り返った。
「ここからは各自でな。気いつけて!」
「ありがとうございました!」
ばらけていく子どもたち。
教室前にある靴箱の前で、同じ団地の男の子が声をかけてきた。
「有利やんな? 俺、山下 武。さっき後ろ歩いてたねん」
「うん、覚えてるで、よろしく!」
「同じクラスやでよろしくな!」
それだけの会話。
でも、ちゃんとつながっている感覚があった。
(嫌われない、って……すごいな)
無理せんでも、媚びんでも、普通にしてるだけでええ。
読み終わってのクレームは、お止めください。
自己責任です。




