友達だし、相棒。
◇
「良い夜だね。こんばんは、エルフの捕虜さん達」
特設本部のとある天幕。ウェイドたちと別れたメアは、天幕の中に押し並べられた檻に向かって挨拶を口にした。帝国では聞き慣れない、エルフの言語で、だ。
旧友へ声を掛けるような言葉の軽さに反して、口調は怒気を孕んでいるかのような挨拶。感情を悟らせないメアにしては明け透けな態度な挨拶に返ってくるのは、憎悪と憤怒が入り混じった熱視線。
「ははっ、いい気味だよ。あのプライドの高いエルフをこうして見下せるんだから。それにしても、エルフは賢い生き物だって聞いていたけど、どうやらそれは誇張された噂だったみたいだね」
「……子供騙しの挑発に乗るほど、我等は愚かではないだけだ」
「はーい、口を利いてくれてありがとう、耳長の引きこもりさん。君たちはどうやら、自分たちの立場が分かっていないのかな?」
メアの前に並んだ三つの檻。そこに入っているのは、いずれもエルフだ。
メアの言葉に反応を示したのは、リーダー格の男。三人とも見目麗しい年若い青年に見えるが、その実年齢は人間とは比べ物にならない。
悠久の時を生きるとも言われるエルフであるが、その性格は年長者に相応しい穏やかな性格……かと思いきや、正反対。非常に獰猛で危険な種族であった。排他的な思考が色濃いエルフ達は、自分たちの森に迷い込んだ人間や他種族を問答無用で魔法の餌食にするような、そんじょそこらの魔物と遜色ない縄張り意識の強い種族であった。
「それとも、僕たち人間からの贈り物であるその首輪が、余程気に入ったと見える。ぷふっ。良ぉく、似合ってるよ、それ。飼い犬みたいで」
本来であれば、檻の中に留めておくことすら困難なエルフ。それを実現可能にしたのが、彼らの首にかけられた、揃いの首輪であった。
エルフの首には、それを外そうと試みた傷痕が残っていて、メアはそれを目敏く見つけて侮辱する。忌々しさと憎悪が混ざった眼光も、檻越しであれば痛くもかゆくもなかった。
その首輪は、帝国が発掘した拘束具。アーティファクトの一種である。魔法を自由に使えない人間が、憧憬を憎悪に変えて作り出したとされる、怨念の宿ったアーティファクト。拘束具を付けたエルフたちは得意の魔法を封じられている、というわけだった。
存在自体が人間という種族を否定するかのような上位存在である、エルフ。そんな彼らが、今や成す術なく捕まっていて自分が見下ろしているという事実は、メアの優越感を刺激してやまない。相手が憎悪を燃やして睨みつけていれば尚のこと。
しかし、メアがわざわざ捕虜の元にやってきたのは、愉悦に浸るためではない。
「……貴様ら人間が手を出しているアーティファクト。それらが過ぎた力だというのを何故理解しないのだ」
「過去の失敗のことを言ってるのかな? 失敗は成功の母とも言うのさ。過去の愚かさを学んで今に生かすのはごくごく自然のことだと思うけど? 伝統だの、因習だのに囚われている時代に置き去りにされた君たちには分からないことかもしれないけどね」
「分からないのか? 我々は分を弁えるべきだと言っているのだ。あまつさえ我々エルフが守る神獣様の眠る森を切り拓くなど言語道断。貴様らのやっていることはいずれ、自分たちの身に降りかかることになる」
「帝国が滅びる、とでも言いたいのかい? 相変わらずエルフというのは面倒な言い回しをするね。老獪な貴族と話しているみたいだ。甚だ不遜だと言わざるを得ないけど、今はそんなことどうでもいいや。さっさと本題に入ろうか」
「──本題、だと? 再三に渡って繰り返したエルフの忠告に一度として耳を傾けず、あろうことか神獣様の住まう森を切り拓かんとする人間に、我らと話が出来る程の知能があるとは到底思えないがな!」
ガシャン、と耳障りな音を立てて抗議するのは、好戦的な目をしたエルフ。リーダー格の男が制するのも聞かずに噛み付いてくる姿勢は、水面下で怒り狂うリーダー格の男とは違って見た目通りの年齢なのかと錯覚させるほどに、青い。
メアはそれを分かった上で、無視をして話を続ける。
「本題って言うのは、その神獣様のこと。エルフの君たちはみんな神獣というのが本当にいるみたいに口にするけど、ただの信仰じゃないのかな?」
「貴様ら人間に神獣様を語るなど──」
「──教えてやろう! 神獣様は、人間が信仰する神のような目に見えない詐欺師とは違う。森の守り神である神獣様は、我々エルフの祈りによってこの世界に顕現するのだ。かつて栄えた貴様ら人間の文化を、滅ぼした時のようにな。今に見ていろ! 増長した貴様ら人間に、我らがエルフの守り神が罰を下して──」
「──黙らんかッ!」
「ふーん」
青くて、臭い。そんな人間は、実に操りやすいとばかりにメアは頷く。
帝国の歴史は、建国して五百余年とまだ浅い。
しかし、アーティファクトと共に発掘される過去の大陸の情報によると、アーティファクトが生み出されたのは今からおよそ三千年前という遥か過去であり、その出過ぎた文明は一夜にして滅びを迎えたとされている。
それを成したのが、『厄災ハルマヴィエラ』と呼ばれる、災厄を引き起こす忌まわしき存在である──というのが発掘された壁画から読み取った帝国が知り得る全てであり、今しがた語られたエルフの話を信じるのであれば、歴史の真相とも言うべき衝撃の事実。
だがしかし、メアは厄災の正体を知ったところでどうでもいい、とばかりに流す。
驚くでも怒り狂うわけでもなく、無反応。
これにはさすがのエルフもメアの意図が読めずに困惑の色を見せずにはいられなかった。
「っ、なんだ、貴様は。神獣様の恐ろしさに恐れよ! 戦け! 何故、平然としていられる……?」
「別に、世界の真実とかどうでもいいし。僕が知りたいのは、その神獣様の正体。ただそれだけ。今の神獣様は、どこにいるのかな?」
「知って、どうするのだ」
「殺すよ。もちろん。だって、文明一つを消し去ることが出来る力を持っているんだよね。そんなの危険だよ。殺しておかなくちゃ、安心できないからさ」
「神を、殺せるというのか?」
「この世に存在している以上、命ある生き物でしょ? なら、殺せる。最強の戦士だってドラゴンだって、心臓を貫けば死ぬんだから。簡単な話でしょ?」
「なんと歪で、不遜な願いか。それは貴様ら人間とて同じであろう。全てを排斥していった先で、何が残るというのか」
「帝国だよ。我らが帝国が全にして一になる。大陸中を支配するんだ。エルフの君たちでも分かるくらい簡単なことでしょ?」
「狂っているな。そんなことをして、何になると言うのか」
「さぁ? なってみないと分からないんじゃないかな」
「そっ……んな、ことで、我々の生活を壊して回っていると言うのか?! 貴様ら帝国の人間は、どこまで傲慢なのだ。どこまで狂っているのか! 貴様らには、慈悲と言うものが無いのか?」
「あるさ。だから一度は忠告したでしょ? 布告として、帝国の道を阻むのなら容赦はしない、ってさ。さっき君たちの言葉に耳を貸さなかったって言ったね。でも、それは君たちの方でしょ? 素直に森を拓かせておけばこんなことにはならなかったのにね」
エルフは、耳がいい。
耳が良いからこそ、メアの発した言葉に邪念等の混じり気が一切無いことが分かってしまい、より一層困惑し、恐怖する。
目の前の女のような男が良心からそれらの言葉を口にしているのだと分かると、人間との意思疎通が無意味だということを思い知る。
邪念が服を着て歩いているような存在。ゆえにその中に、邪念という概念すら存在しない。
帝国の前には跪き、平伏すのが当たり前だと思っている短命種相手に、長命種としての価値観で話が通じるなど、有り得ない話だった。
目の前の男は、言葉が通じるだけの獣。そう断じたリーダー格の男は、両脇のエルフに目配せする。それに気付いているのかいないのか。それらの機微の一切を感じさせないメアは尚も話し続ける。
「その神獣様は、どんな形をしているのかな。知っていること、全部吐いてもらうよ。吐いてくれたら……そうだね、楽に殺してあげる」
「そんなものが交渉材料になると思っているのか? 野蛮だな。捕虜の扱いを知らんのか? 見た目通り、子供だな。なんと惨いことを……」
「好きに哀れむと良いさ。帝国では、捕虜の行き先は決まってる。研究塔さ。そこで君たちが切り刻まれ、頭の中をかき回される未来から解放してあげるって言ってるの。後で後悔しても知らないよ?」
「神獣様は貴様らのような邪な人間の前には表れない。全てを見通す目を持っているからだ。穢れた人間の前に、神獣様は姿を見せない。貴様らが目にするのは、貴様らに終焉がもたらされたその時だけだ」
「ふぅん。目も鼻も良いのか。獣なのかな?」
「神獣様は我らエルフを助けて下さる御姿をしておられる。厄災の御姿は我らエルフが願ったからあの姿でご降臨なさったのだ。貴様ら人間が行き着く先に貴様らの望む未来はない。そう遠くない未来に、神獣様が滅びを与えて下さるだろう──」
メアは顎に手を置いて思案する傍ら、利き手である右手が剣の柄にかかる。つい先ほど同僚に向けた、あの剣である。
エルフの連中が何かを画策しているのは見て取れた。だからこそ、不自然に間を開けたリーダー格の男が動きを見せたら、すぐにでも剣を抜けるよう身構えていた。
だがしかし、その剣がリーダー格の男を傷付けることはなかった。
「神獣様の怒りよ、在れ。──大閃光【オブラス・サクラィル】」
「うわ……っ、最悪」
カンテラが照らす光だけが視界を照らしていたはずが、聞き慣れない音が鼓膜を震わした刹那、カッ、と網膜を焼く光が天幕を突き抜け、外へと広がる。
瞬間、メアの体を襲うのは、身を焦がすような熱量。
「……自爆とか、頭おかしいんじゃないの?」
異変を感じ取ったメアは、咄嗟に天幕内の荷物の陰に転がり込んで事なきを得たものの、天幕の中に残されたのは甚大な破壊痕のみだった。
「……死んでんじゃん」
目の前には破壊された三つの檻と、脱ぎ捨てられた二つの首輪。加えて、炭化した一人のエルフの亡骸のみ。
メアは落ちた首輪を手に取って、溜め息をつく。
「チッ、不良品かよ。してやられたなぁ……。研究塔の奴らに文句言わなくちゃ」
魔力を封じ込める首輪のアーティファクト。それが偽物、ないし完全に作動していなかったことに腹を立てつつ、天幕の外へと向かう。
自爆したエルフの男の決断を悔やむことも、残酷に思うこともなく、メアは凪のように落ち着いた心持ちで逃げた二人を追いかける。
「──戦士ラーゼン! ここは俺に任せてお前が逃げろ。どちらかしか生き残れん」
「クソッ……! 戦士長ラスティ、戦士ラズ。勇敢な戦士を、俺は忘れない!」
声がする方に向かうと、騒ぎを聞きつけた兵士の何人かがエルフを囲んでいたが、第三機竜小隊でまともに戦える人材は、主に機竜を動かす機竜騎兵のみ。
整備班と衛生兵は最低限の戦術訓練しか受けていないため、魔法使いとの戦い方など知る由もない。ゆえに、みすみすエルフの一人を逃してしまう。
「大閃【オブラス】──」
「同じ手は喰らわないよ」
しかし、魔法使いとの戦い方など、熟知してしまえば本職の兵士であれば一瞬で片が付く。丸腰の魔法使いであれば、尚のこと。
「が……、はっ……」
天幕の中で見たものと同じ光が放たれた瞬間、及び腰になった兵士たちの間を縫って駆け付けたメアが一切の容赦なくエルフの首を掻き切った。
「神獣、様の……呪いよ、在、れ……」
怨嗟の光を湛えたエルフの返り血を一滴も浴びずにメアはもう一人が去って行った夜の闇と対峙する。
「も、申し訳ありません! 一人、逃がしてしまって──」
「あー、いいのいいの。それより、ちょっと剣、借りるよ?」
「え? あ、はぁ……」
「届くか、な……っと!」
魔力に精通した人物なら、メアの腕に巡らされた魔力に驚きを隠せないだろう。だがこの場に、それに匹敵する人物はおらず、人知れずメアは才覚の一端を解き放つ。
そうして繰り出すは、夜闇を裂いて進む銀の彗星。
一切の躊躇いなく放たれた剣が暗闇に消えた、次の瞬間。
「──ぐあ!?」
「よし! 命中!」
暗闇の奥から聞こえる、悲鳴。
声のする方へと明かりを手にした兵士たちが向かっていく。
「敵影、見当たりません! ですが……」
「血痕が残ってるね。それも、かなりの深手じゃない?」
「追いかけますか?」
「いや、その必要は無いかな。というより、血が森に続いてるでしょ? 森でエルフを追いかける……それがどれだけ無謀なことか分からない君たちじゃないでしょ」
「そ、早計でした!」
「いや、いいよ。それに、これだけの出血量なら帰る前に命が尽きそうだしね。放っておいていいでしょ。それよりも僕は研究塔の奴らに文句を言ってやらなきゃ気が済まないんだよね」
メアが手に持つのは、煤けた首輪。
魔力を封じる拘束具だと聞いていたが、エルフの男はそれを付けたままでも魔法を発動させてみせた。しかし、十全とまではいかずとも魔力が封じられていたからああして檻に捕まっていたのだろう。一切効果が無かったというわけではない。効果を発揮していた以上この首輪も完全に無能というわけではないが、それでもメアは目障りな研究塔を叩く材料を得たとばかりに口元に笑みを浮かべていた。
「この後はもうお休みになられますか?」
「そうしようかな。明日も半日は空の上だろうし」
「この場の始末は私共の方でやっておきます。ごゆっくりお休みください」
「おやすみ~」
お祭り騒ぎを中断してまで片付けに駆り出される兵士たちはうんざりしているだろうな、なんて考えつつ、メアは振り返ることなく去って行く。
「ウェイドならここで『俺も手伝おうか』、とか言うんだろうけど……。彼らの仕事を取るのはよくないだろうしね」
お人好しで考え無し、加えて無謀なバカと噂される同僚を思い出して肩を竦ませたメアは、自分用にと寝床を用意された天幕へと向かう。
そこは第三機竜小隊の遊撃部隊員三名が一所に寝泊まりする天幕。
しかし今晩は、それ以外の人物の出入りが見られた。
「オリバー。こんな夜更けに僕たちの天幕に何の用かな? もしかして、夜這いにでも来たのかな?」
「っ! が、ガルメア・エディクレス?! こんな時間までどこをほっつき歩いていたのだ! 貴様、ウェイドの奴をどこに匿っている? 黙っていれば貴様の立場が危うくなるだけだぞ」
「どこ、って。さっきの爆発音聞こえなかったの? 兵士たちに聞けば僕のことは分かると思うよ。僕はウェイドと別れてから一人だったし、彼がどこに行ったかなんて知らないよ」
「知らばっくれるな! なら何故あの男はここに帰ってこない? 同室のワーグナーの奴も知らぬ存ぜぬを貫いてばかりで……! 遊撃隊は、揃って殿下の意向を無視するつもりか?! それができる立場に無いというのにな」
三人きりの遊撃隊。それが、ウェイド、メア、ワーグナーの三人だ。
メアのワーグナーに対する印象は、時代遅れの硬派な男と言うものだが、ウェイドの軍規違反を知っても尚、彼を庇い続けるその姿勢は見直す価値あり、とメアは内心で評価を書き換えた。
「知らないよ。用があるなら直接呼び出し令を使えばいいじゃん。それとも、使えない理由でもあるのかな? 例えば、正規の命令じゃない、とか?」
「……ウェイドの奴を売るだけで殿下に取り入ることができるというのに、みすみす好機を逃すか。その選択、後になって悔いることになっても知らないぞ」
「友達を売って得た信頼なんて、殿下は認めてくれないよ。だから僕に命令しないんじゃないか。あぁ、そう言えば、友達のいないオリバーには分からないか! あはは!」
「友達? あの平民と貴様がか? ハッ。庶民のごっこ遊びに付き合うのも程々にするんだな。品格を疑われるぞ。それに、貴様のその目。本気で友だと思っているようには到底見えないがな。……まあいい。気が変わったら知らせるように。後になって気付かれても、俺も殿下も庇いはしないからな」
天幕前でウェイドを見下したあの目とは違って、オリバーはそれなりに温かみのある目をメアに向ける。それはメアが彼も認める帝国貴族の一員であるからこそ。
彼も本心では、同じ帝国貴族であるメアや、ワーグナーを疑うような真似はしたくないのだろう。
そんな品性の残る眼差しのまま、彼は遊撃隊の天幕を後にしていく。
「ただいまー」
「……うるさいのは帰ったか?」
「うん。なんか変なこと言い残してね。困っちゃうね」
「ウェイドは、どうした」
「さぁね。逃げたんじゃないの? 森で拾ってきた女の子を連れて」
「……そうか。この俺に別れの一言も無しにか」
「何その発言~。ちょっと重すぎ」
「あんなに一緒に飲みに行った仲なのに」
「ワーグナー下戸だからすぐ酔い潰れてたじゃん。二軒目行けたこと無いし」
「あんなに一緒に切磋琢磨した仲なのに」
「ウェイドに勝てたこと無いじゃん。もちろん僕にもね。見た目だけなら一番強そうなのに」
寝台で寛ぎながら遠き過去を振り返るような仕草で物語るワーグナーの思い出一つ一つを、メアは容赦なくばっさりと切り捨てていく。
「……メア、お前。人が折角気持ち良く喋ってんだから邪魔するんじゃねえ」
「あはは、ごめーん」
「それから、ウェイドの奴は──」
その後もワーグナーの自己満足に付き合うのを半ばで切り上げ、瞼を閉じる。
明日からのウェイドとカタリナ、それから自分自身の身の振り方を考えている内に、意識は闇に溶けていく。
「……友達、か」
「ん? 何か言ったか?」
「おやすみ、って言ったの」
その中でも、オリバーに自分が放った言葉に懐疑的な思いを抱かずにはいられなかった。
だがそれもすぐに、脱力した微睡の中でメアの意識は途切れていく。
上辺だけの言葉に、心底嫌味を感じながら。
「ウェイド。君ってやつは……」
「こんな別れもお前らしい。ウェイドよ──」
こうして第三機竜小隊特設本部に降り立った夜は、更けていく。
そして翌朝。
様々な思惑と水面下で蔓延る緊張を乗せて、機竜は帝都を目指して飛び立つのであった。
補完と言う名の、言語解説。
【エルフ】
帝国の東部に広がる大森林に国を構える森林国家の住民。
長い耳と高い魔力、加護に守られた永遠の命が特徴の、超常の存在。
信仰対象は、森と神獣。知恵無き姿に神は宿る、とされている。
人間が生涯に一度しか得られない魔法を制限なく扱える。限りある命でいかに人生を選択をする必要が無い。と言ったように、エルフは人間の上位互換のような種族。過去には大陸上をエルフが支配していた歴史の記録があるため、今でもエルフは人間を見下しており、もしも大森林に迷い込んでしまった暁には、エルフによって惨殺される未来しか残されていないと言われる程にエルフと人間の関係は悪かった。
だが、人間がアーティファクトを手にしてからは違う。エルフよりも魔法は劣っていて、獣人よりも身体能力が劣る、限られた能力しか持ち得ない人間は遂に、世界をひっくり返す力を手に入れ、これまでの屈辱を拭うかのように侵略を開始。
長きに渡る人間とエルフの確執に終止符が打たれるのは、もう間もなく──。