あなたは私の希望。
◇
私がウェイドさんと出会ったのは、今から五年前。
帝都では十から十五歳の貴族の子女であれば通うことを強制される士官学校にて、十四歳の私は一つ年上の十五歳のウェイドさんと出会った。
切り揃わない赤茶色の髪とざんぎり頭。何の変哲もない茶色の瞳と相俟って、貴族の巣窟とも言える士官学校で、彼はとにかく浮いた存在だった。
それゆえに、ウェイドさんは目を引く存在だった。
士官学校には、貴族の子女が多く通う。
そこで私は、彼に恋をした。
同じ貴族ではない、平民にして「欠陥者」と呼ばれる彼と出会ったことで、身を焦がすほどの愛を知って、人生の選択肢の基準に彼が存在するようになった。
彼との出会いは、そう特別なものではなくて。
ただ同じ学年。同じ学級だったというだけの話。
同じ教室で、私はウェイドさんの背中をずっと見ていた。
貴族ばかりの空間でただ一人の平民。彼の何が「鬼人」と呼ばれるハリス・ロック・フロレンシアに見込ませるほどのものがあったのか分からない貴族たちは、それを探るべく彼を叩いた。叩けば、埃以外のものが出るんじゃないかと期待して。
しかし、出てきたのは魔力に突出したわけでもない普遍的な髪と瞳の色、それ以外に何か秀でたものがあるのかと思えば、学力も運動能力も平凡という、極めて不快な埃だけ。
彼が入学して一週間と経たずして彼は士官学校の汚点としてことごとくの嫌がらせを受ける羽目になっていた。そしてそれは傍から見ているだけの私も同じで。
帝国には国軍兵士を育成する兵学校が各地に点在しているけれども、士官学校は帝都にのみ存在している。そこに通えるのは選ばれた存在のみで、ロベリア陛下による施策、「開かれた教育」というものが士官学校の格を落とすのではないかと、私を含めたほぼ全ての貴族が危惧していたため、ウェイドさんを追い出そうという空気は教員にまで伝播していた。
そのため、彼を守る盾となる存在は、学校内のどこにも存在していなかった。
けれど、彼は決して折れなかった。
どんな風雨に晒されても、決してめげなかった。
そんな日々が一か月、二か月と過ぎる頃には、私は彼を気に留めずにはいられなかった。
そしてそれが恋だと気付いたのは、ウェイドさんが士官学校に入学してきて、半年が過ぎた頃のこと。
士官候補生として将来相対するのは何も敵国の兵士だけではない。日々の安寧を脅かす魔物を駆除することも職務の一環であり、私たちは分隊規模に分けられてその駆除に当たる、という教練の際、そこで、トラブルが発生した。
『──な、なんだよ、こいつっ!』
『ち、小さい魔物しかいないって話だったじゃない!』
『う、うわあああああああっ?!』
そこに居たのは、大鹿の魔物。
出会い頭に先行していた一人が吹き飛ばされ木に叩き付けられたのを見て、全員が恐慌状態に陥るほどに圧倒的な存在感。見たことも聞いたことも無い巨大な魔物の出現を前に、分隊は隊の意味を成さずして崩壊を強いられた。
その中で唯一魔物に立ち向かったのが、ウェイドさん。
『……アルバート男爵令嬢。あそこで倒れているコンクス侯爵令息を連れて、今すぐに監督官に、救援を頼んでください。先生なら……師匠なら、この魔物も退けられる』
分隊の中で、否、今この瞬間森に居る人間の中で最も貧弱と言っても過言ではない彼だけが、剣を構えていた。
一度や二度しか会話したことの無かった存在感の薄い私を認識していたことに驚くも、私は情けなく首を横に振ることしかできない。
なぜなら、大鹿に睥睨された際に腰を抜かしてしまっていたから。
『……!』
だから私は、ウェイドさんの言葉に動けないということを伝えることで精一杯で。
『彼の傍には移動できますか。……動けるのなら、そこまで這ってでも動いて。その場所は、きっと巻き込まれるから』
コンクス侯爵令息と言うのは、出会い頭で大鹿の角にかち上げられた人物。
彼は身体強化のお陰か、地面に叩き付けられても骨折程度で済んでいる。けれど、気を失っているようで動くのは難しそう。
もしかすれば、他の隊員と同じようにこの場から逃げることはきっと難しいことではない。
大鹿の一撃は強力だけども、動き自体は緩慢で、そのコンクス侯爵令息を置き去りにして囮にすれば逃げられるかもしれない。けれど、ウェイドさんは決して彼を見捨てるつもりは無いようで。
コンクス侯爵令息は、ウェイドさんを「平民風情が」と言って嘲弄する一人。ウェイドさんが身体強化が使えないと判明してからは「欠陥品」と嘲弄しながら訓練でウェイドさんのことを叩きのめして喜んでいるような、最低な男。
それを彼は、見捨てられないと言って勝ち目のない魔物に向かって剣を抜き放つ。
私はウェイドさんの言う通り、コンクス侯爵令息の元まで這って移動し、その場で縮こまる。
『……そこから、一歩も動かないで』
いかに大鹿の動きが緩慢とは言え、人一人を担いで逃げおおせるほど甘くはない。ゆえに、大鹿がコンクス侯爵令息にトドメを刺さぬよう魔物の目を惹き付けておく役目が欠かせない。
彼はコンクス侯爵令息と私を守るために、立ちはだかってくれた。
ウェイドさんは何も持っていないわけではなかった。
彼はあの場で、誰よりも騎士としての素養を持ち、困難に立ち向かう勇気を持っていた。
しかし、彼の吐く息が、彼の声が、彼の手が、彼の背中が、震えていた。
当然だ。僅か数か月前まではただの平民でしかなかった彼にとって、訓練以外で初めて剣を抜いた相手が油断を許さない強力な魔物が相手だと言うのだから。
そしてそれは私や散り散りになった分隊の子達も同じだった。
訓練ではない正真正銘の命のやり取りを前に全身を包み込む恐怖に打ち勝てたのは、ウェイドさんただ一人だけだった。
『感応魔法──』
その言葉を皮切りに始まったのは、大鹿との一騎打ち──
ではなくて。
大鹿による、一方的な、蹂躙だった。
『……っ!』
一合目でウェイドさんが弾き飛ばされた瞬間、私は息を飲んだ。
ブモォ、と言うけたたましい声と、地面を大きく揺さぶる足音を立てて角を振り乱した大鹿がウェイドさんの方に突進し、彼が弾き飛ばされた時には、もう駄目かと目を逸らしてしまう。
彼ならなんとかしてくれるかもしれない、という淡い期待が泡沫のように消え失せたのもあの瞬間だった。
──彼は、ただの平民。身体強化の使えない半端者。守られるべき立場の人。
本来であれば、貴族である私が彼の立っていた場所に立っていなければならなかった。だと言うのに、あそこに立っていなくて良かったと安堵する自分がいるのもまた事実。その罪悪感が私の胸を締め付ける。
守られるべき人に守ってもらい、あまつさえ期待などかけてしまった自分が、甚く不甲斐なくて身を強張らせる。
もうもうと上がる土煙の中、大鹿の碧玉の如き瞳が爛々と輝いてこちらを睥睨する。
次に狙われるのは、私たちだ。
少しでも生き延びようと盾代わりにコンクス侯爵令息の体を前に抱いた。
その時だった。
『──こっちだ、デカブツ』
別方向から上がった声に、大鹿と私の目が動く。
そこに居たのは、無残にも魔物の巨体に轢き殺されたはずのウェイドさんの姿。彼は頭から血を流しながら、破れた訓練服のまま立っていた。
たった一撃で満身創痍。
勝てる見込みは無い。
だと言うのに。
その顔には、燃えるような好戦的な笑みを浮かべていて。
そんな顔は、私の人生で一度として見た事が無いほどに生命力に溢れていて。
『ウェイド、さん……』
私は知らず、彼の名を口にしていた。
大鹿は、地鳴りのするような雄叫びを上げながら彼に向かって突き進んでいく。
その度に彼は吹き飛ばされ、また立ち上がる。
そうして再び傷付いた姿で魔物を呼び寄せる。
……大鹿との対決において、彼は決して、倒れなかった。
いいえ、違う。
彼は、何度も倒された。けれどもその度、同じ回数だけ、彼は立ち上がったのです。
倒されて、立ち上がって。倒されて、立ち上がって。
立ち上がる度に傷は増えて、体の動きも鈍くなっていくと言うのに、彼は決して膝を屈したままでは終わらなかった。
その様子に大鹿すらも苛立ちを含ませているのが傍目から見ていても分かる。
──どうして倒れないのか。どうして立ち上がれるのか。
その様は、人間である私からしても恐ろしさすら感じられます。
痛いはずなのに、苦しいはずなのに、彼は決して諦めようとはせず、私たちに目を向けようとする大鹿の視線を自分に釘付けにさせるその姿に、私の目も自然と惹き付けられる。
そして遂に、その時がやって来る。
『ようやく隙ィ……見せたなァ、おい!』
『──ッ?!』
何度目の衝突か。数え切れないほどの衝突の度に吹き飛ばされていたウェイドさんでしたが、遂に彼の表情に、好機を捉えた笑みが浮かぶ。
刹那、私の目が捉えられたのは、悲鳴を上げた大鹿と、こちらに向かって飛んでくるウェイドさんの姿。
これまでずっと彼の行動を見ていたから分かる。彼が、気を失っているということが。
このままでは彼は受け身を取ることすらできずに地面に激突する。ボロボロになった体で弾き飛ばされた衝撃そのままに地面に落ちればどうなるか。
脳裏に答えが浮かぶとほぼ同時に、私は駆け出していました。
腰は、もう入っていた。
貴族のくせに少ない魔力を一息で励起させ、身体強化を発動させる。
──ずっと動けなかったんだ。今、この瞬間だけは、彼の、ウェイドさんのために、動けッ!
見事に私の願いに呼応するように体は動き、ウェイドさんと地面の間に私の体を滑り込ませる。
しかし、飛来してくる人を受け止めるなんていう経験は一度もなければ、講義や教本に書かれているわけでもない。ゆえに私は彼を抱きしめるように受け止めただけれど、その衝撃は余すことなく私に届き、ウェイドさんの体ともみくちゃになる形で地面を盛大に転がされるのでした。
『い、生き、てる……?』
吹き飛ばされただけのはずが、その勢いは身体強化を施して受け止めた私でさえも地面の上を派手に転がされるほどのもの。果たして身体強化の使えない彼の体にはどれだけの負荷がかかっていたのか。
起き上がった私がまず真っ先に確認したのは、腕の中のウェイドさんの無事。
息をしていることだけは確認できて胸を撫で下ろしたのも束の間。直後に降りかかるのは、全身に突き刺すような殺気だった。
『ひっ……!』
殺気の正体は、言うまでもなく大鹿の魔物から放たれたもの。
顔を上げると、そこには二つ並んでいたはずの眼光が一つ欠けていることに気が付く。先の悲鳴は、片目を潰されたことによるものか。あの敗色濃厚な中で、ウェイドさんは決して諦めてなどいなかった。自分の後に続く人たちに、少しでも光明を残すために、彼は戦ったのだ。
決して逃げ回っていたわけでは無く、彼は立派に戦い抜いたのだ。
ここから先は、私が立ち向かわなければならない番で。
『必ず、生かして帰るんです……! 絶対に、負けるもんか……!』
彼は負けていない。
ウェイドさんは勝ったんだと言えるように、私も立ち向かいました。当然、剣術の基礎しか知らない貴族の娘がいきなりこちらの命を爛々と殺意を漲らせた魔物相手にまともに立ち向けるはずもなく。
陽の光を反射させて白く輝く剣を握る手は、震えが止まりませんでした。
実際に相対すると、恐ろしくて堪らなかった。身体強化という鎧と盾を身に付けておきながらもそう思えるのだから、それも無しに立ち向かった彼がどれだけ勇気ある人なのか、良く理解できる。
彼と同じ場所に立つことで彼の凄まじさを思い知って、余計に彼に興味が湧く。
それと比べて、腰も引けて震えも止まらない情けない私の姿に、自分が国軍の士官になど向いてないことがハッキリと分かったのもこの瞬間だった。
それでも、ここで退くという選択肢は存在していなくて。
『う、うわあああああああああああああああああああ!!!!』
ビリビリと空気を震わす大鹿の怒号に対抗するように必死で声を張り上げて恐怖心を麻痺させることくらいしか、私にできることはなかった。恐怖心を麻痺させたところで、大鹿が突っ込んで来れば、私も、ウェイドさんもその巨体の餌食になる。それが分かっていても、私は勇敢に戦った彼の傍を離れると言う選択はどこにもない。
──短い一生だった。
それでも、最後に貴族も平民も関係なく命が平等であることを教えてくれた彼のために死ねるのであれば、それは何百枚と重ねられた金貨や、生まれという努力では動かせない数値の上で胡坐をかくよりも、よっぽど価値のあるものではないかと思えて。
『──』
短く息を吐いて覚悟を腹に決めた、その直後だった。
後方より降り注ぐ光弾の数々が、大鹿の目の前で炸裂したのは。
『お前たち、無事か?! 私はフュリーズ。フュリーズ・グノーシアだ──』
その後、助けに来てくれた彼女たちに救出され、私とウェイドさん、それからコンクス侯爵令息は無事に作戦区域内を脱出できて、ウェイドさんも一命を取り留めることができたのだった──。
◇
これが、私とウェイドさんの出会い。
彼に恋心を抱くに至った経緯。
「……あの時のウェイドさんも、本当にかっこよかった」
あの日のウェイドさんの勇姿は、今も脳裏に強く焼き付いている。
それから交流を重ねて家名ではなく名前で呼ぶようになった日だって、彼と交わした会話の一つでさえも記憶している。決して忘れることのできない、彼の大切な思い出は、思い出す度ににやけてしまう。
明確にウェイドさんに恋をしていると気付くと同時に、あの日をきっかけにウェイドさんについてあらゆることを知りたいと思えたのは事実。恋に落ちたと表するのであれば、あの日が間違いなくそうだと言える。
これが例え吊り橋効果のような心理状況が影響したのだとしても、私が今もまだ彼のことを好きでいる気持ちに嘘偽りはない。
「あなたのためなら……」
平民と貴族。同じ人間でありながら、二つを隔てる壁は分厚く、高く、そして決して壊せないほどに頑丈である。それは歴史の重みであり、歴史の厚さでもあることも承知している。
そうやって二つは明確に違う存在であることを明示されて生きてきた私にとって、ウェイドさんのような存在は生まれて初めて接する相手だった。だから興味を惹いた、というのは決して嘘ではないが、ウェイドさんが平民だから私は彼に恋をした、という訳ではない。
彼が彼だからこそ、私はウェイドさんにこの一生を捧げたいと思っている。
その思いは重みこそ違うけれど、ウェイドさんを知る人物であれば誰もが彼の人間性という部分に惹かれていることだろう。メアさんを初め、ワーグナーさんや、それこそ、ハリス・ロック・フロレンシアも。
……あの地下室で見たハリス・ロック・フロレンシアのウェイドさんを見る目が少し怪しかったのが気になりますが。
「……ウェイドさんに釣り合わないのは、私の方です」
ウェイドさんの言葉をそのままお返しするように、私はウェイドさんが思っている程、綺麗な人間ではない。
あの時だって本当は、ウェイドさんが私を担いで逃げてくれれば良かったのに、と思うような、最低な人間なのだ。それも、気を失っていたコンクス侯爵令息の身なんて、一瞬たりとも案じたこともなかったくらい。
だから私の方こそウェイドさんに相応しい人がいるんじゃないかって考えることもあった。
でも、そんなの、絶対に嫌だ。
ウェイドさんの隣に私以外の誰かが収まるなんて、絶対に許せない。認めたくない。
士官学校を卒業し、次のキャリアとして彼は特別騎兵を、そして私はオペレーターをと花道が開かれた夜に意を決して誘った想い人との祝い酒の席。そこで故郷に残して来た想い人の話を聞かされたことを思い返すと、それはもう、猛ったことです。使用人に病院を勧められるくらい心配される程に。
それでも、離れていても想い人に一途なウェイドさんも、堪らなく愛おしくて。
ウェイドさんは私を幸せに出来ない、なんて言いました。なら、彼の幸せはどうすれば生まれるのか。
彼はいつも、自分のことを勘定に入れない。
いつも、故郷に残して来た弟妹達のためにいつ死んでもおかしくない戦地に赴いていた。
では、彼はどうすれば幸せになれるのか。
それこそ、叶うのであれば彼を幸せにするのは……笑顔にするのは、私がいい。
それだけは、例えメアさんであっても、譲れない場所。
「ウェイドさんのために、出来ること……」
水桶に川の水をたっぷりとすくうとそれなりの重さが出る。けれども、身体強化があれば何も心配はいらない。考え事をしていたって、楽に運ぶことが出来る。
「何でもできるけど、今のウェイドさんが求めているのはきっと、そう言うことじゃない気がする」
ウェイドさんが本当に欲しいのは、きっと私には出来ないことだと思う。
罪には罰を、罰には許しを。ウェイドさんが罰を欲するのは、罪悪感に押し潰されそうだからだ。
それを軽減させるために、私は私なりのやり方でウェイドさんに許しを与えていたつもりだったけれど、彼はそんなもの望んでなんていないようで。
……私がウェイドさんに分け与えられるものなんて、それしかないのに。
「ウェイドさんが、本当にほしいもの……」
常日頃から彼のことを観察している私にとって、彼の些細な表情の変化から心境を覗くなんていうのは容易いこと。その中でウェイドさんの表情が穏やかになる一瞬を、私は知っている。
あれは、そう──メアさんと居るときだ。
「……憎たらしいけど、メアさんと一緒に居るときのウェイドさんは、私と居るよりも柔らかい表情をしているんですよね」
さっきの二人きりの空気は決して居心地の良いものとは呼べないものだった。
けれどもそこにメアさんが加わると、たちまち張り詰めた空気は弛緩して、ウェイドさんの表情には穏やかさが宿るようになる。それはメアさん自身が特殊な空気を纏っているから、というのもあるけれど、ウェイドさんがメアさんに対してのみ心を許している証でもあった。
それを認めるのは、なんだか釈然としないけれど……。
そんなことを考えながら先に戻ったウェイドさんに遅れて村に帰ると、診療所の前は相変わらずの盛況さを見せていた。
「──デゲントール様を、返せ!」
補完という名の、言語解説。
【「開かれた教育」】
ロベリア前皇帝の取り行った施策の一つ。
その成人を迎えた帝国国民であれば誰でも学びを受ける場を設ける施策により、ウェイドは召集され、能力試験を受けた。持ち得る能力によって希望すれば兵学校、ないし一定の学術や武術の指南を受ける環境へと上がることが出来るという施策で、ウェイドは帝都の士官学校に入ることが決定した。
本来であれば何も持ち得ないウェイドには隣町の兵学校が精一杯なのだが、そこはハリス・ロック・フロレンシアによる介入と後援により、捻じ込まれた。そのことをウェイドは知る由もなく、訳も分からず帝都に上がることになった。辺境の田舎の民が突然帝都に、しかも貴族の巣窟に身を置くとなればどのようなことが待ち構えているかを知らぬハリスではなかったが、入学から卒業までの二年間、ハリスがウェイドに接触したことは一度も無かった。




