二節 帰還2
「──お話し中のところ失礼します。私、皇帝直轄近衛部隊所属、ハリスと申します。第三機竜小隊遊撃隊所属、特別騎兵のウェイド様ですね」
あぁ……。もう来てしまったか。
いや、来るのは分かっていたが、それにしても早すぎる。
しかも、レオ殿下の手先ではなく、近衛部隊ということはつまり皇帝陛下直々の召集命令ということだ。
「……そう、ですが」
ハリス、と名乗った男は脱帽し、浅く頭を下げて礼をする。彼が自ら名乗った肩書きからして、平民相手に頭を下げていいような人物では無いのだが、その慇懃な態度も交渉の一つなのかと思うと、俺は自分が思っているよりも重い罪を犯したのではないかとすら思えてくる。近衛部隊の所属となると、下手すれば、第三機竜小隊で皇太子であるレオ殿下を除いて最も位の高いフュリーズよりも上の人かもしれないのに。
そんなハリス様の態度に、俺もおばさんも御者も、揃って目を丸くする。この場で自然体のままいられるのは、それこそ何も知らないカタリナだけだろう。
あんたが指名されてるよ、と女将さんから肘で突かれてようやく動き出した俺が敬礼の姿勢を取ろうとするも、その姿勢はハリス様によって制される。
「あぁ、自然体にしてくれて構いません。この場は、正規ではありませんから。皇帝陛下がウェイド様をお召しの用件で参りました。此度の軍規違反の件、本人の口から聞きたい、と」
「じ、直々にっ?!」
「準備が出来次第召集せよとの事ですので、支度が終わるまで待たせてもらいますね」
「も、もう終わってます! どうぞ連れて行ってください!」
「……ちょ、おばさん! 俺、まだ着の身着のままなんだけど!」
「……近衛騎士様をこんなところに留めておくなんてわたしらの心臓が持たないよ! さっさと行ってくれ! 後の支度はやっておいてやるから!」
ハリス様の浮かべた笑みはどんな淑女であっても顔を綻ばせると言わんばかりの輝かしいものであったが、ハリス様が一歩下がって待機する姿勢をとる前におばさんがどうぞどうそと俺を差し出す。
ハリス様に聞こえないよう声を潜めて荒げるのだが、おばさんの汗が噴き出た額を見て理解せざるを得ない。
平民にとっては、ハリス様は疎か、貴族様と関わり合いになることさえ末恐ろしいのだ。下手に機嫌を損ねれば俺たちの首なんて簡単に飛んでしまうから。
俺はメアやワーグナーと言った親しみやすい貴族を知っているから勘違いしていたが、女将さんや御者はそうではない。ましてやハリス様なんてレオ殿下と同等と言ってもいいくらいやんごとなき御方である。粗相をしたらどうなることか、気が気じゃないのだろう。
「もういいのですか?」
「えぇ、まあ、はい」
「それでは、参りましょうか。そこの少女も連れて来い、との命令ですので。一緒に連れて来ていただけますか?」
「……?」
「は、はい。かしこまりました。おいで、カタリナ」
良く分かっていない顔で首を傾げたカタリナだったが、俺が呼ぶと駆け寄ってきて手を取る。懐かれているのは分かるが、俺としてもカタリナをただの子供と呼ぶのに憚れている以上、少しだけ胸が痛い。
この憂慮がただの気のせいであると思えたならどれだけ良かったか。
「……こいつは、陛下の御前での作法なんて知らないんです。だからどうか、無作法には目を瞑っていただけないでしょうか」
「そこは気にしなくても平気ですよ。子供相手に作法を求める程、陛下は厳格ではありませんから。それに、ウェイド様をお召しになるのは謁見の間といった正規の場ではありません」
「そ、そうなのですか?」
「陛下は現在、レオポルド殿下より此度の出兵における戦果の報告を受けております。報告を終えた後、執務室にてウェイド様とお会いになられるとのこと。現在、ウェイド様はレオポルド殿下と顔を合わせづらいのでしょう?」
要は、気を遣われているというわけだ。
まさか一国の主である皇帝陛下が一庶民でしかない平民の俺に気を遣うなど、通常ではあってはならないこと。
だが、出世した平民に貴族と同等の地位であったり、属領の種族に市民権を与えると言った施策を行った「賢帝」の名は、伊達ではないということか。その素養が少しでも息子のレオ殿下に遺伝していれば、第三機竜小隊での俺の居心地もまた違ったのかもしれない。
レオ殿下の魔の手から俺を守ってくれた寛大な陛下に対して感謝の言葉を告げたところ、ハリス様は笑ってそれを否定する。
「陛下はウェイド様の軍規違反を許したわけではありませんよ。陛下はただ、レオポルド殿下を守るためにこのような形をとったのですから」
レオ殿下が俺を前にして冷静さを失う姿を、周りの重鎮に見せたくない、ということか。
「レオ殿下は、年の頃に比べて些か、感情の制御が出来ていらっしゃらない。陛下から言わせれば……未熟、の一言に尽きるのでしょう。日夜、そのことに頭を悩ませておいでなのですよ」
「は、はぁ……」
例えそうであっても、俺がレオ殿下と顔を合わせずに済んだのは陛下の采配あってこそのこと。ゆえにお目通りの際にはまず感謝を伝えよう、と胸に決めて俺はハリス様の導くままに帝都の中心、帝城に辿り着く。
そのまま客間へと通されると、幾許かの待機時間を経た後に再びハリス様に連れられて、また別の部屋に案内される。
案内された先は扉から分かる通り、皇帝陛下のいる部屋に違いなく、滲み出る威圧感に圧倒された俺はカラカラに渇いた喉を湿らせるために唾を飲み込んだ。
「……緊張しすぎない方がいいですよ。陛下も、ウェイド様に罰を与えるためにお召しになった訳では無いと思いますから」
そう言われてもな。
俺は困った顔で情けなく笑うことすら出来ない。表情筋が張り詰めていて、まともに顔を動かすことすら出来ないのだ。そもそも、皇帝陛下にお目通りしたことなんて、人生で一度しかないのだから緊張するなと言う方が無理だ。
そんな俺に反して、カタリナは調度品で飾られた城の中を散歩するみたいな軽い足取りで付いて来ていて、今も陛下の私室の扉を前にしても何の気負いもなく俺の隣に立っている。相変わらずその表情に変化は無い。
「失礼します。ハリスです。ウェイド様を、お連れしました」
「入れ」
扉越しに聞こえてくる声に、緊張がピークを迎える。
聞き覚えがある声とは言え、一つの国を背負う人物として威厳ある声に俺の肌が粟立つのを感じる。
扉が開いて行き、ハリス様に続いて部屋に踏み入れる。
「っ……!」
目の前にあったハリス様が横に移った途端、風が吹くかの如く感じる威風。
俺は咄嗟に跪き首を垂れるのだが、カタリナは変わらず俺の袖を握ったまま直立不動であった。すぐにカタリナの頭を掴んで下げさせるも、俺の行動は続く皇帝陛下の言葉によって遮られた。
「よい、楽にしろ。……して、それが、お前が軍規を破ってでも。帝国の主力である機竜を失ってでも持ち帰りたかった……戦果か。報告にあった通り、余を前にしても感情の機微を見せぬとは肝が据わっているのか、それとも死んでいるのか。面白い拾い物をしたな、ウェイドよ」
顔を上げて見る皇帝陛下の尊顔は、少し疲れているように見えた。
オリア帝国第四代皇帝、ロベリア・ムル・オリア・ヴァレンタイン。
レオポルド・オリア・ヴァレンタインの父親にして、オリア帝国を統べる男。
その堂々たる威風だけで、俺は気圧される。
全身を鎖で雁字搦めにされたみたいに、瞬きの一つさえできなくなる。
今年で齢五十を超えるとは思えない皺の少ない精悍な顔つきは凛々しく、レオ殿下と同じ切れ長の目は、執務に就いて長い年月を経たというにもかかわらず歴戦の戦士を彷彿とさせる末恐ろしさを宿している。
雄々しい金の髪と、燃えるような赤の瞳。皇族の証であるそれらがレオ殿下よりも濃く出ている陛下は、初代皇帝の生まれ変わりだとも呼ばれていた。
帝国の歴史に「賢帝」として名を刻むことが確約された偉大な陛下を前にして、俺は一言も発することが出来ない。……否、許されていない。
「その少女に関して研究塔からも、ただの子供だと裏付けが提出されている。その目も見えていないのであればその反応も理解できる。だが、お前も分かっているはずだ。機竜は……アーティファクトは、帝国の根幹。それと引き換えに得たその子供に、お前は何を見出した? どれだけの価値がある? 答えよウェイド。余が許可する」
「……」
「答えよ」
「はい」
一度目で口を開いていれば、横に並び立つハリス様に取り押さえられていただろう。
正規の場ではないからと無礼を許されているのは、カタリナだけだ。俺は違う。
それに、俺は犯罪者である。軍規違反は極めて罪が重いから、ハリス様が目を光らせているというのもあるだろう。
それも含めて俺に疑いの目を向けている陛下が直接お会いするのはつまり、俺を精査するつもりなのだ。
もしも何らかの思惑があって機竜を敵国である森林国家に置き去りにしてきたとなれば、この場でカタリナ諸共始末できるように。
だからこそ、俺は真実を語らねばならない。ここで殺されるならば、メアやワーグナーたちに迷惑をかけた意味も、カタリナを連れ帰った意味も全てが水泡に帰してしまうから。
「カタリナが……この少女が、子供だからです」
「ほう」
視界の端でハリス様の手が剣の柄に置かれているのを見て冷や汗が背筋を舐めるが、陛下は俺の言葉の続きを確かめるように先を促す。
一言発するだけでも精神をすり減らすような気分だ。でも不思議と、怖さは無かった。
「俺は、子供を守るために兵士になりました。悲しい運命にある子に、希望を灯せるような、そんな兵士になりたいと努力を重ね、その努力が実を結びました。陛下直々に特別騎兵として任命されたことは、生涯に一度きりの栄華としてこの身に刻まれ、決して変わることのない、俺の誇りです。……ですが、その地位を捨てなければ子供を助けられないのだとしたら……。俺は迷い無く、その地位を捨てられます」
「……余の目が間違いだったと、その身でもって証明するということか?」
「……結果的には、そうなります。陛下の期待を裏切る結果となってしまい、大変申し訳ございませんでした」
謝罪の言葉と共に、長い時間、平伏する。
「……良い。頭を上げよ」
暫くしてその声が聞こえて頭を上げると、その時になってもまだ陛下は俺を見定めるように眼光を光らせていた。だが、俺は今の発言を撤回する気も、心変わりするつもりもなかった。
カタリナを助けたことが間違っていたとは、思えないからだ。もちろん、俺の行動が正しいとも思っていない。レオ殿下の言った、子供なんぞ見捨てて機竜と共に爆死しろという命令も、一理あると思っている。だが、陛下は違う。
レオ殿下ほど短絡的ではなく、俺のように享楽的でもない。
帝国にとって最善の答えを導き出してくれるはずだ。そしてその答えの先にある帝国に……俺の居場所は、無い。
長い、長い静寂の果てに、陛下は鼻から息を吐いてからゆっくりと口を開いた。
「……特別騎兵ウェイドよ。今、この時をもって、特別騎兵の任を解く。お前は今から、ただのウェイドだ。ご苦労だったな」
「勿体なき、お言葉」
「沙汰は追って伝える。今夜は良く休めよ」
「……軍規違反を犯した者は例外なく、追放では」
「余は唯一無二の皇帝であるぞ? すなわち、余の決定が全てだ。余が黒いものを白と言えば白となる。そうだな、ハリス」
「もちろんです。その正誤を判断するのが、我々側近の役目ですので」
淡々と答えるハリス様。
俺はてっきりクビを言い渡されるのかと身構えていたため、肩透かしを食らった気分だ。だから故郷に帰るために荷物もまとめたのに。
「なんだ、不満か? それとも、既にどこかに買われたか?」
何故その質問を俺ではなくハリス様に尋ねるのか。
首を横に振ったハリス様の行動一つで陛下が納得するのは何故なのか。
「いえ、兵士としての役目を終えた今、この国のために何が出来るか考えた結果、田舎に帰って畑仕事に従事しようかと考えていました」
「そうか、ならいいだろう。帝国は人材に困窮していないとは言え、優秀な兵士を遊ばせておくほど、暇ではないからな」
「……っ!」
俺の顔は今、喜色に満ちていることだろう。
その証拠に、会話が始まってから今まで厳格だった陛下の表情が初めて緩んだから。
陛下はそこで一度言葉を区切り、総括のように言い放つ。
「良く分かった。余の目が間違っていなかったことも、お前が馬鹿だということもな。罪を問うたところで自覚がないのだから、罰する価値もないということだ。……機竜一機分の値は計り知れんが、それでも良いのだな」
「はい。後悔は、ありません」
「……師匠を、泣かせることになるぞ」
「あの人は、よくやったと笑って背中を叩いてきますよ」
「あやつの駄目な所だけ似おってからに……。もういい。下がれ」
陛下の口元に浮かんだ笑みを見て、俺は人知れず胸を撫で下ろす。
まるで置物のように俺の隣に寄り添ったまま身動ぎ一つしなかったカタリナの手を引いて立ち上がる。
「お前の処罰は、そう悪い目には逢わんようにしよう。だが、お前は軍規違反した身。そのことを努々忘れるなよ」
「寛大なお言葉、感謝します」
それを最後に一礼して、部屋を出る。
もう二度と同じ真似はするなよ、と釘を刺した言葉なのだろうが、もう一度同じ場面に出くわしたら、俺は同じ行動を取るに違いない。それが俺の譲れないポリシーだから。
陛下もそれは承知の上だろうが、どうしてそんなことを許してくれたのか。
それはきっと、俺の師匠が陛下と旧知の仲だからだろう。帝都に身寄りのなかった俺の保証人が師匠であるから、陛下は師匠の顔を立ててくれたのだ。その寛大な判断に俺は部屋を出てすぐに深く、長い溜め息をつくのであった。
「はぁ~、緊張、したぁ……」
「堂々としていたではないですか」
それでも壁に背を預けて恥も外聞もなく倒れ込まなかっただけよくやっている、と褒めてもらいたいくらいだ。
前を歩くハリス様がすかさずフォローをしてくれるが、そう見せていただけで皇帝陛下と直接言葉を交わすなんて、もう二度と経験したくないイベントである。次は白目向いて気絶しそう。慣れるなんてことは、絶対にない。
「この後はどうなさいますか? ご希望とあればウェイド様がお泊りしている『沈黙の羊亭』までお送りしますが」
「いや、それは遠慮しておきます」
「そう言えば、確か約束があるんでしたね。……それと、レオポルド殿下には、陛下よりウェイド様への接触禁止が命じられたので、急いで帝都を後にする必要はございませんよ」
陛下との会話でも思ったが、ハリス様は一体どこまで俺のことを知っているのか。
「……なんでそんなこと知っているんですか?」
「いずれ私と職場を同じくするかもしれないからですよ。下調べと手回しは、当然です」
「じょ、冗談ですよね……?」
「陛下はご冗談を好みませんよ」
「いや、陛下じゃなくて……」
話が通じているようで通じていないハリス様が恐ろしく思えた辺りで、城の裏手に到着する。それまでカタリナは俺の傍を離れず、一言も発していない。
「心惜しいですが、私も仕事があるゆえ、ここまでです。またお会いしましょう。ウェイド様」
「は、はい」
「そう気負わずとも良いではありませんか。……そうですね。では、ウェイド様を見込んで一つお願いをばさせていただきたく」
「ま、待ってください。ど、どうしてそうなるんですか?」
一時間前に出会った時とはまるで違う雰囲気に圧倒される。陛下とはまた別の意味で押し負けるハリス様を前に、俺はたじたじになってしまう。
そんな俺を気にする様子もなくハリス様は俺に一つ約束を取り付けてくる。
「次にお会いした時。その時で結構ですので、私の願いを聞いていただけないでしょうか? もちろん、その時にウェイド様の願いも聞き届けましょう。交換条件の約束です。いかがでしょう?」
「願いを、聞く……? どうして、また」
「断りになられないということは了承ということですね! では、次にお会いした際に私が困っていたら助けて下さることを期待しています。もちろん、ウェイド様がお困りであれば私に出来ることであればなんなりとお申し付けくださいね。ではまた」
「あっ、ちょっ……!」
それだけ言うと、ハリス様は近衛の紋章が刻まれた肩掛けマント、深紅のぺリースを翻して去って行く。
最後まで綺麗な笑顔を張り付けていたが、その強引さは帝国貴族特有のものと言ってもいいだろう。
結局、何が目的だったのだろう。再び会う時が来れば分かるというのだろうか。
「というか、また会う機会なんて、訪れるのか……?」
一兵士に過ぎない俺と、近衛騎士。何がどう巡り合ったら再会を望めると言うのか。
平穏に再会して一緒に飲みに行こう、くらいならいくらでも付き合えるのだが、ハリス様のようなお人が俺に一体、何を願うと言うのか。
「……お腹、空いた」
城の裏手を出て考え事で頭を巡らせながら呆然と立ちすくんでいると、俺の手を引くカタリナが袖を引いて強請ってくる。城の中にいた時とはまるで違う、それこそ、生気が宿ったかのような様子を見せる。そう言えばこいつ、盲目だと思われてたんだよな。どうにも、普通に見えているようだけど、どう言う原理なのか。しかし、少し前であればそれも気味悪く思えたのだろうが、お利口だったと考えれば彼女の頭を撫でてやらんこともない。
「一人誘って、美味いもんを食いに行くか」
「……早く、行こ」
美味いもん、と聞いて明らかに目の輝きを変えて俺を引きずってでも歩き出そうとするカタリナを見れば、煩わしい思考は全て頭の片隅に追いやれる。ハリス様の言葉の真意など、今考えたって分かりやしないのだ。考えるだけ無駄だろう。
あっと言う間に横に並んだカタリナを地面からすくい上げるように抱きかかえると、俺は帝都の石畳の上を駆けていく。
風邪を切る心地良さに両手を上げて声を上げるカタリナは、それこそ、年相応だと言えた。
「……おー」
「しっかり掴まってろよ」
「ん!」
夕暮れ時。カタリナと出会った時を思い出すかのような赤く染まった夕日に照らされる帝都の中を、俺は約束を守るべく、人混みをかき分けて進んでいく。
俺の気分は機竜。カタリナは操縦士だ。
乗り慣れた相棒を思い出し、俺は翼のように軽い体のスペックをいかんなく発揮しつつ、目的の場所へと急ぐのだった。
補完と言う名の、言語解説。
【ロベリア・ムル・オリア・ヴァレンタイン】
獅子のような雄々しさと、一級の美術品のような壮麗さを持つ黄金の髪。
猛禽類のような鋭さと、思慮深さが宿るルビーを想起させるような紅の瞳。
王族の証とも呼べるその二つを併せ持つオリア帝国第四代皇帝は、御年50を数えてもまだ衰えを知らぬ身であり、先代たちが築き上げたこの帝国を更に豊かにするべく発展させていく。
中でも、これまで帝国の手足のように使われてきた属領民に市民権を与えたことは数世代先まで称えられるような事例の一つ。これまでは謀反が起こることを危惧して力で抑えつけていたものを、懐柔するという形で彼らにも帝国人と同等の教育を施したり、彼らに新たな道を指し示すなどして、様々な支援を行った。その結果、ウェイドやシャーリィなどの有能な人材が発掘され始めた。
しかし、皇太子レオポルドのように、これまでの戦勝国としての意識として帝国人の中には選民思想の強い者達が多いため、施策を受け入れられない者も多い。だが、それでもロベリアは「これからの帝国は帝国人だけではなく、他民族が入り混じる国家となる。彼らと手を取り合い、言葉を交わし、理解し合うことが必要になってくる」と述べている。その上で、帝国の根幹にある『実力主義』というものを改めて見つめ直す、と言う考えであった。
機竜小隊やアーティファクト装備の配置等を属領国家にも行き渡らせるなど、帝国の支配下が決して悪しきものにならない上で、自国民をどのように豊かにさせるか。帝国に力を付け、外に領土を拡大し続けた先代までの皇帝とは違い、内側の強化と政策の配備等、それを考えられる皇帝は帝国の歴史上初めての皇帝。
ロベリアの打ち出した政策はのきなみ後の世になればなるほど評価を高め、後に彼は『賢帝』と呼ばれるようになる。




