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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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 応接間について気分的に苦みのあるコーヒーをお願いしたら、砂糖とミルクたっぷりのリツの優しさ入りコーヒーとなって出てきた。うん、いいけどさ。

 そして腕を組み考えていればナイとヨルがルカを連れて入ってきた。


「嬢ちゃん、ただいま」

「ただいま、縁」

「二人ともお帰り」

「お、何だ? 不機嫌そうじゃねえか。駄目だったのか?」


 ナイが不思議そうに、それでもその大きな手であたしの頭をわしゃわしゃと撫ぜてくる。それをペイッと剥がして息を吐く。


「不機嫌じゃない。考えてるの」

「みんなは上手くいかなかったの?」

「そうじゃない、逆。ある意味上手くいきすぎた」


 あたしの言葉に不思議そうにするナイとヨル。リツはルカにソファーを勧めていた。


「とりあえず座って。ガストもどうせすぐ来るでしょ」

「あら、そう言えばガスト様は?」

「三組目を確認してもらってる」

「嬢ちゃんは確認しなくても良かったのか?」

「確認する意味もなさそうだったからね」


 そう、確認する意味なんてなかった。全てが上手く行き過ぎた。()()()()()()()


「ルカ、今回呼んだハンターたちって新人とか?」

「一組目は中堅に差し掛かったとこ、二組目と三組目は新人だな」

「消えても不思議じゃない人って考えればやっぱり新人になっちゃうか」

「誘いに乗りやすいってのもある」

「今回はなんて言って誘ったの?」

「それはナイが勝手に言った」


 そう言って苦笑気味にナイを見るルカ。あたしもそれにつられナイを見る。


「一組目はお宝のある場所を見つけた、二組目は薬草地帯を見つけた、三組目は」

「うん、もういい。だいたいわかった」


 はあ、と溜息が零れ落ちる。これじゃあ何の意味もない。


「なんだなんだ、なんか文句でもあんのか?」

「大有りだよ、問題だらけだよ」

「あ? なんでだよ、ちゃんと連れてきたじゃねえか」

「それは間違ってないんだけどさ」


 そんなことを言い合っていれば応接間にノックの音が響き、興奮気味のガストが入ってきた。


「主様、三組目も魔物達は素晴らしく、無傷で凄い速さで人を仕留めました!」

「そう、予想通りだね。どうせまた何かに目を奪われてるところをやられたんでしょ?」

「ええ、その通りで御座いますが?」


 少し不機嫌そうに返したことでガストが不思議そうに言葉を返す。


「はあぁ、これじゃあなんの実験にもならないよ」

「あ? なんでだよ」

「とりあえず録画のアーカイブでも見てから言って」


 そう言ってナイ達三人の前に一つの画面を浮かび上がらせる。


「ルカは見たくないなら見なくて良いから」

「死体なんてそれなりに見慣れてんだよ。てか凄えな、これ」


 そう言ってルカも画面に興味を引きながら覗き込む。そして映像が流れ、すぐに三人の顔が苦いものへと変わっていく。


「こりゃ、確かに」

「酷いわね」

「だから言ったじゃねえか、誘い文句は考えるべきだって」

「だってよお、めんどくせえし嘘は言ってねえじゃねえか」


 人を選んだのはルカで誘ったのはナイと言うことだろう。

 今回はリツ、ナイ、ヨルが主導でルカが協力者として考えて行動を決めていた。連れてくる場所は決めていても誘い文句などは決めていなかったんだろう。


「ルカ、明日も人を誘うことは可能?」

「できなくもねえが、危険にもなるぞ?」

「けどこの結果じゃこの先が危険だ」

「主様、どうゆうことでしょうか?」


 あたしの知識がないガストがこの場で意味がわからないと首を傾げてる。


「ガスト、貴方の目から見て今回の結果はどうだった?」

「素晴らしいものかと。あの魔物達が人に傷つけられることもなく人の裏をかき人を殺めたのです」

「うん。けどそれは人が油断していたからだ」

「油断、ですか?」

「そう、今回は誘い方が完全に悪かった。目先の欲に目が眩み、魔物が居るなんて、魔物から()()()()()だなんて想定せずに人が来てたんだ」


 ナイの誘い方に魔物への注意は一切なかった。魔物が居るだなんて想定されてない前提だった。そしてこの世界の常識、魔物から人を襲ってくることなど考えてもいなかった。


「それでも通常、魔物が居ることは想定することではありませんか?」

「確かにそうなんだけど、今のこの世界では魔物は弱者だ。人からすると魔物側から襲ってくるなんてあまり考えていないんだよ」


 人の姿を見つけると隠れるか逃げるかの魔物達。基本その姿しか人は知らない。それこそ強く力のある魔物以外そんな選択肢を取る。


「それに今回誘った場所を考えれば」

「そうだな、そう強い魔物の目撃証言のない場所だ」


 人側、外の目線をルカがそれを教えてくれる。


「あんな場所じゃ居てもゴブリンやウォルト、小せえのばっかだ。たいがい人を見れば逃げてくもんだ」

「それでも急に転移させられたんですよ? 警戒ぐらい……」

「それこそナイの言葉、お宝や薬草に目が眩んだんだろうね」

「ああ、急に景色が変わったと言っても場所が変わってるだなんてすぐに思いつかねえ。たぶんいつもと同じ感覚でいたんだろうな」


 この世界では違う場所に転移する為の転移陣は存在するがそれは魔力量を多く必要とし、基本使われることのない物。転移陣を経験した人なんてほとんどいないだろう。だからこそ、自分が居た場所が変わっているだなんてそこまで思えなかったってところか。


「そこに実際にお宝、そして薬草の群生地があれば」

「そこに目がいって考えることを放棄したってか」


 ルカが馬鹿々々しいとせせら笑う。


「手練れになればもう少し警戒しただろうが今回選んだのはそうじゃねえ奴ばっかだ。誘いやすく警戒心のない奴ら」

「それはまた、不向きな人達だなあ」

「誘いやすさで選んだからな。それに消えても誰も変に思わねえ」


 確かにルカの言い分も間違っていない。だからこそ消えてもおかしくないと思える人たちで、そう頼んだのはこちらだ。けれどもさすがに結果が悪すぎる。


「ナイ、次からは誘い文句はヨルかルカに任せて」

「えー、俺めんどくせえんだけど」

「わかったわ。私が考えるわ」

「うん、敵が居る前提で誘ってほしい」

「そうじゃないと実験にならないものね」


 苦笑を漏らすヨルを見てあたしも苦笑する。

 けど本当にこのままでは駄目だ。問題点が多すぎる。まだ興奮が抜けきれず、それでもあたし達が何を問題視しているのかわからない様子のガストを見て思う。きっとこれが魔物達の反応なんだ、と。


「ルカ、このあと村長会議をするつもりなんだ。出る気ある?」


 だからこそ厳しいとわかって誘いをかける。必要な手はできる限る打つべきだから。

 それを訝しがるルカ。


「村長会議ってなんだよ」

「あ、そこからか。このダンジョンには各魔物達の村があって、そこの長を集めた会議。今のところ纏め役がいないから各村で長を立てて纏めてるんだ」

「へー、てことはダンジョン内も案内してくれんのか?」

「そうだね、出来ればしたいと思ってる。そしてできれば今回の人側の意見を言う立場で出てほしい。協力者として」


 最後の言葉は自然と強くなった。

 その意味するところをわかっているはずのルカは気にした素振りも見せず口を開く。


「ナイとヨルじゃ駄目なのかよ?」

「二人はすでに魔物側だと知られてる。完全な人側の意見として欲しいんだ」


 確かにナイとヨルが言えば角が立たないことは多いだろう。けれども今回はそれじゃあ駄目なんだ。真剣に、本気にさせないといけない。


「その代わり、かなり厳しい視線に晒されると思ってて」

「お前も人使いが荒いな」

「その分報酬は弾むよ?」


 苦笑するルカに笑みを返す。




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