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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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 昨夜は遅くまで起きていたためいつもより寝坊気味なるかと思ったらそんなこともなく、逆に早めに目が覚めた。

 そわそわするようなどきどきとも違う、どこか落ち着かないようなそんな気分で目が覚めた。

 昨晩の事か今日のこれからの予定のせいか気持ちも頭もどこかぐちゃぐちゃで、そんなことでは駄目だと、頭を切り替えろ、と自分の立場を強く思い出す。


 今日の結果によって、あたしはまた色々と決断を迫られるだろう。

 ダンジョンマスターとして、最初を占う大切な日。

 ダンジョンマスターとしての、最初の一歩。


 リツに準備された朝食を取りあたしはいつもより少し早めに準備を終わらせる。


「皆の様子はどう?」

「緊張する者もいますが盛り上がってもいるようですね」

「選別は済んでいるが今日来るのは少数だろうからな、選ばれた者たちはやる気に満ち溢れてるようだ」


 ダンジョン側のことはガストとリツに任せている。そしてハンター側はナイとヨル、そして協力者としてルカに任せている。


 ハンターたちは森の中で数日泊まり込んで魔物を探すこともあると聞く。数組ぐらい消えたところですぐには騒ぎにならないだろう。

 今日のところは多くても四組、少なくとも二組となっている。少なすぎても判断もつき辛いし多すぎてもさすがに怪しまれる。それはまだ困るので大多数は選ばないようにお願いしてる。

 この辺りはハンターやこの世界を知るルカとの話で決めた。


 できれば一階層だけじゃなく二階層にも人間を送り込みたい。欲を言えば三階層まで送りこんで確認したいとこだけど、まだ作ったばっかりでそこはまだ落ち着いていない。それを考えれ今回のところは二階層までとした。

 まあそれも、どれぐらいの人数がやって来るかで変わって来る。


 ダンジョンの三階層の奥の方にはいくつかの場所に大型モニターがすでに設置されている。人が簡単には辿り着かないような奥深くに。周知されたそこでは今回参加しない、戦わない者達も様子を見れるようになっている。

 今日の結果次第でダンジョン内の士気にも関わって来るだろう。

 圧勝すればそれこそ盛り上がり、もし惨敗に近いようならやはり恐怖に負ける者も出てくるだろう。できればその結果は避けたいところ。そのためにも今日表に出る者は選別することにしたし配置もしっかりと決めている。


「ナイ達からの連絡はまだだよね?」

「ああ、昼頃にはなると言っていた」


 ルカによれば街で誘って連れて来るよりもすでに森の中で魔物を探している人達を誘って連れてきた方が怪しまれないと言うことで、少しばかり手間と時間のかかることになっている。

 おかげでいつ人がやって来るかはわからない。送り込む寸前には連絡が来るはずだ。


 ただし、その知らせはダンジョン側、戦う者達には教えない。いつ来るともいつ頃来るとも教えない。今日、人が来ることだけを伝えている。

 これは実践訓練だ。実戦さながらの実験だ。

 どこまで皆が対応できるか、どうやって皆が人と戦うのか、その確認でもある。

 今日のところは転移陣を使って人を送り込むため現れる場所はリツ達にはわかっているが、皆にはどこから人間が来るかも知らせてない。いつどこから来てもいいようにその心構えはしているように告げている。

 ダンジョン内では予定のハンターよりも大人数を選び、それを数人に分け巡回しながら警戒するように指示を出した。

 ダンジョン側は実践、これからの日常に近い形はとっている。


「すでに選ばれた魔物達はダンジョン内の巡回をしているようです」

「やる気はあるみたいだね」


 今回は希望者の村を募りそこから各数人選ばれ、中にはガストとリツに選ばれた者も含め、ダンジョン内に配置されることになっている。

 すでに配置場所は通達されているし、いつ来るかもしれない状況と言うことで選ばれた者達もやる気に満ち溢れてるんだろう。人が来る前に疲れてしまうことにならなければいいが。


 あたしはと言うと今日は王の間にてモニターを眺めている。管理室でもよかったんだけど、ガストが王らしくと言うことでこうなった。

 玉座の前、少し上に浮かぶいくつもの大きな画面。それをぼんやり眺めながら管理室の方がゆっくり見れるんだけどな、とか思う。


 すでに巡回している姿が見え、緊張からか動きの悪い者、やる気に満ち溢れ血をたぎらす者、様々な様子が見れる。


「さあ、ナイ達はどこに送り込んでくるかな」


 今回はあたしも詳しくどこに送り込むか聞いてはいない。ナイ達に好きにさせてみた。考えるのが面倒だったと言うのもあるが。

 一階層と二階層に数か所ずつ転移陣を置き、そこに人が送られてくる。何も知らない人たちが。


 送られた人たちも驚きだろう。なんて言って誘われるかも知らないけど、誘われてついて行ったら魔物の巣窟、見たこともないダンジョンなんて。

 しかも今は入り口がないダンジョンだ。逃げ場のないダンジョン。

 もし今回配置された者達が人を排除することができなくても、リツが排除することが決定されている。

 帰り道なんて用意されていないし帰られてダンジョンの情報が今漏れても困る。そのためにも排除は決定されていることだ。


 まだ少しあるかと思っていたら不意に違和感が走りあたしは画面を切り替え凝視する。


「……ナイの悪戯、ってか忘れてるのかな?」

「来たのか?」

「みたいだよ」


 聞いていたタイミングより早すぎる上にまだ連絡もない。

 外でイレギュラーでもあったのか、ただのズボラか。どっちにしてもダンジョン内でやることは変わりない。

 初めての人、生贄と言えるべき存在がやってきた。


「三人ですか」

「みたいだね。剣と槍、それに杖ってことは魔法使いかな?」

「魔法にどう対処するかが問題になるか」

「その辺りの訓練ってどうなってるの?」

「こちら側にも魔法が使える者は多いからな、それとの訓練で補ってきていた」

「人の動きとは違うだろうね」

「ああ。模擬戦などは何度もさせてはいるが魔物同士とはまた異なるだろうな」


 ガストとリツ、三人でその画面を見つめる。画面内には驚きから辺りを見渡し困惑する人の姿。そこにナイもヨルも、ルカの姿でさえもない。

 その時また、違和感が走る。


「ナイは面白がってない?」

「どうした?」


 リツの言葉に返さずにあたしは違う画面をまたも切り替える。そこには二人の人の姿。

 一組目は一階層の洞窟の中腹辺りに。二組目は二階層、ジャングルに近い洞窟に送り込まれてきた。


「同時に送って来るとは手筈と違っているではありませんか!」

「ナイのことだ、たぶん実地に近い訓練だとか言う気でしょ」

「面白がってるとも言えるがな」


 リツの言うことがほぼ正解だろう。狼狽える人を見ながらあたしも思う。


 しかし連絡もなくほぼ同時に送って来るとは思わなかった。場所は離れているから合流することはなさそうだし、いい経験になるかと観戦を決め込む。


「今日のところはこれで終わりかな?」

「他にはいないのでしょうか?」

「良いのがいなかった可能性もあるからね」


 画面の中、先に気を取り戻したのは三人組の冒険者たち。すぐに周りを確認し行動に移し始めるようだ。

 まだこちらの魔物達で気づいた者はいない。お手並み拝見と行こうか。


「縁、今ヨルから連絡があった。ナイがそのまま送ったと」

「やっぱり」


 くすっと笑いが込み上げる。ナイの自由さは嫌いではない。

 それに今回は実験、あたしに害のない、確実に葬れると決まった実験だ。

 だからこそナイも好きにしてるんだろう。何なら最後、リツに変わり自分で終わらすつもりじゃないだろうか。


「ナイ達もダンジョンに来る気ならルカも呼んであげてって言っといて」

「紹介する気か?」

「良い機会でしょ? こうして人を送り込んでくれたんだから」


 これはルカのおかげである、功績である。

 ダンジョンが顕現される前に経験ができることはダンジョン内にいる者にとっても有益なことだ。それはルカがいてこそ安全にできたこと。

 ルカの存在をばらすのには丁度いいタイミングでもある。


「理由もきっちりあってそれでいて有益だとわかりやすい。納得しやすい状況は揃ってるよ」

「魔物達がいい働きができれば余計にな」

「仮に駄目だったとしてもそれを知ることができたのはルカのおかげだ。どちらにしても、その働きは認められる方向に持っていける」


 そこはあたし次第、あたしの言葉選び一つで変わって来ることだろう。




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