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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備
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 さぁ、勝負の始まりだ。

 ガストを見てにこりと笑みを深めれば、それに気づいたガストが口を開いた。


「それでは王の間をお創りになりますか」

「それは後でいいかな」

「は?」


 どこか気の抜けたガストの声。そんなにも意外だっただろうかと首を傾げる。


「それでは先にテリトリーをお創りになると。どのような形にされますか? 様々な国の宮殿や砦、どのタイプがお好みでしょうか?」

「それも後でいい」


 はっきりと言えば向けられた戸惑う視線。何を言っているのかわからないと書いているような表情。

 しかしあたし的にはそんなおかしなことを言った気もないんです。色々と考えて、先に必要だと思ったものは違うわけだ。


「まずは生物創造だね」


 極めて明るく言えばガストの目が嘲笑を滲ませるように作られた微笑みになった。


「主様、先に王の間を。それかテリトリーを創り王の間を創ることをお勧め致します」


 ガストの言い分も一理ある。導き手としてできる創造というのはいくつかあるが、それは全て魔力を使って使用される現象、魔法である。

 テリトリーを創るにしても名前の通りに生物を創るにしても、必要になるのが魔力だ。


 魔力とはこの世界に満ちて循環している物で生き物全てにも大なり小なり体に内包されてるもの。

 魔力が使えるものの体の中では血液のように体を巡っていて、その中心部には魔力の器がありその大きさによって自分の魔力の量、蓄えられる量は異なってくる。

 魔力の器が小さすぎると魔力があっても魔法として使うだけの魔力は蓄えれず魔法は使えない場合もある。なんとも世知辛い話しだ。


 体内にある魔力は使ってしまえば当たり前のように減り、回復させるには体力と同じく時間経過や休息、もしくはこの世界にある薬、魔力ポーションと呼ばれる物などが必要になってくる。

 この辺りはさすがファンタジー。

 他にも魔力の濃い地域、回復スポットなどもあるが今は関係ない。


 そしてあたしの魔力の器、魔力量はといえばそれはもう膨大で、さすが神に弄られただけの体である。

 神より与えられた力、創造の力、創造魔法はそれはそれは魔力をかなり多く必要とし、それを使うために魔力量も必然的に多いようにされている。

 通常魔法も使うことはできるしその分制限などもあるんだけども今はこれも関係ない。


 まあその膨大な魔力をまだ一つも使っていない今ならば、豪奢な王の間を創ることもかなり大きく堅牢なテリトリー、保護するための自分の領域を創ることもできるだろう。ガストは暗にそう言ってるんだ。

 それも間違ってはいないのかもしれない、けど。とにこりと笑う。


「確かに保護する場所なんかを考えれば先にテリトリーを創るのも大事だとは思う」


 ガストはあたしの言葉が正しいというように微笑む。が、それを裏切るようにあたしは言葉を続ける。


「だからと言ってただテリトリーを創れば良いってものじゃない。今のこの世界で魔物種と呼ばれ迫害され数を減らしている者達を保護しなければならない」

「はい。ですのでテリトリーを創り、そこに魔物を保護すればよいかと」

「ただ保護すれば良いってものじゃなくてね、魔石の供給なんかも考えなくちゃいけないんだよ」


 この世界の生物から魔物種と呼ばれる魔物。それが今のこの世界の常識であたしが保護するべき存在だ。

 だからと言ってただ保護すれば問題解決か、と言われれば違う。


「この世界では魔物種と呼ばれている者達は狩られ、魔石を得る為の者と認識されている。ただ保護しただけの存在なんてすぐに狩られてしまうよ」


 そう、この問題。エネルギー問題だ。

 魔石とは魔力を含む石のことを呼ぶ。その石は簡単に言えば元の世界の電池のような役割で様々な物を動かしたり使うときに必要になる。

 他にも色々と用途はあるが、まぁ生活に欠かせない物ということだ。


「そのためのテリトリーでありそれを導くための主様です」

「そうだね。だからこそあたしはただ広く堅牢なテリトリーでは駄目だと思うんだ」


 神からの要望や指示は大雑把で結果を求めるだけのもの。方法ややり方は全て自分で考えて実行しろってことなんですよ。最低だな。

 勝手に詰め込まれ刻まれた知識頼りに一から全て考え結果を出せ、とチュートリアルも研修制度もない超絶ブラックもいいところ。

 だからこそ、そこにあたしの願望も組み込むわけだ。


「ただ保護され、ただ魔石を奪われるだけの存在。それでは駄目だと思うんだ」


 戸惑うようにガストの目が揺れた。そこに勝機の芽を感じて首をこてりと傾げながら然も当然のようにガストを見つめる。


「そんな存在だけだとすぐに絶滅してしまう。それでは保護した意味もないし神の意思に背く。だからこそ保護したうえで力を備えさせ、戦えるようにしてあげなくてはならない」


 その言葉でガストは目を見開き、ただあたしを凝視する。


「だからといってただ力を付けさせればいいわけじゃない。魔石の供給も必要。その為には様々な方向から考えなくちゃいけないと思うんだ」

「……主様には、そのお考えがあると?」

「それなりにはね。けれどその為にも必要になってくるのが生物創造」

「保護した魔物ではいけないんでしょうか?」

「保護した者がすぐに使えるわけじゃない。ある程度指示できる者が必要なんだよ」


 ガストが少し困惑を浮かべ小さく首を傾げる。


「要は導き手が必要だってこと。あたし一人じゃ保護した者全てを見続けることはできない」

「主様は私のような補佐役を増やす、ということでしょうか?」

「神が作ったガストほど強い者は創れないでしょ? それぐらいわかってるよ」


 それでもあたしには絶対に必要なことだ。()あたしの()()である存在。そしてあたしの考えを()()できる存在。その為にも何より一番最初にするべきなのが生物創造だ。


「まあ色々と考えるとね、あたしとガストだけじゃ足りないし、いろんな方向で補佐する者は必要になってくるんだ」

「いろんな方向、ですか?」

「うん。テリトリーの内側にも、その外側にも」


 その言葉でガストの目が少し大きく開いた。


「外側と言うと、主様は何をお考えなんでしょうか? 魔物を外に出すと?」

「そんなことすれば今はすぐに狩られてしまう。できるわけがない。そうじゃなくて外側にいても不思議ではない者、それも必要になってくる」

「……主様は、人種(ひとしゅ)をお創りになる、と?」


 どこか唖然とした様子でガストが呟く。けれどそれに笑みを深めて見つめる。


 神の要望は我儘で、今のこの世界では矛盾でしかない。

 生活などに必要とされ使われるエネルギー、それが魔石。その魔石は魔物と呼ばれる生物を殺し刈り取る物。そしてそれらは売られ生活に使われる。

 その循環が出来上がってしまい、魔物は狙われる者になってしまっている。

 だからこそこの世界での魔石の需要は高く、それを狙い合う同種同士の争いも起こっているほどだ。

 それはそれで種の存続に関わってくることだし神としてはその辺りも解決しろって感じらしい、なんとも無茶振り。

 神からすれば魔石の供給さえ何とかなると落ち着くと思ってるらしいが、そんな簡単なことじゃないだろう。権力欲などの欲望って怖いんだから。エネルギー問題はどの世界でも大変なんだな、世知辛い。


 今すぐにあたしと関係あるかと言われれば関係ないが関係ある。

 だってあたしのテリトリーが出来上がるときには外、この世界に顕現し必然的に関わることになる。関わりたくなくても。ここ、重要。

 だからこそ、今のうちに考えなくてはいけない。


 この世界には様々な種族、生命体がいる。そして元居た世界と同じく国などの形態をとって大まかに区分けされた大地。それと共に国には所属せずに隠れ住むように集落や部落を作り生きている者達がいる。

 今回あたしが保護するべきなのはその隠れ住む者達。大手を振って外で暮らせる者じゃない。

 だからこそ必要になってくるのが、外で普通に暮らせる者だ。


「ただテリトリーを創り、ただ保護すれば良いって話じゃない。外の情報やいろんな噂、それは必要になってくることだ」

「いや……、ですが、それは」

「神の意思に背く? あたしはそうは思わない」


 笑みを深めガストの目を見つめ断言する。


「テリトリーを創りそこで保護する。そして魔石の供給。それもできるだけ長く続く方法で、だ。それを考えれば情報戦、必要な情報を仕入れ必要な情報を流す。これはテリトリーにとって有効だよ」


 できるだけ友好的に見える笑みを浮かべ、自信のある言葉を選ぶ。それが然も必然で必要だと思えるように。


 ここでガストの納得が取れないようじゃあたしの考えは簡単に破綻してしまう。

 ここでガストに疑いを持たれるわけにはいかない。今はまだ、ガストにあたしがしっかりとした考えがあると思ってもらわないといけない。





推敲し、校正作業……。

それでもたぶん見逃してる誤字脱字。

見つかりましたらお手数かけますが報告お願いします。

極力ないようには気をつけてるんですがねぇ…。

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