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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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 それからリツとガストが情報を集め、それを踏まえてあたしとリツとガストで話し合いを何度かして、ある程度纏まったところでダンジョンの改修、既存階層と新たな三階層を創った。


 ガストから今のダンジョンへの感想や疑問を聞いて、あたしが考えている五階層までの構想をガストに説明することで新たな疑問や感想、そして素直な考えを言ってもらうことでダンジョンはまた強化されそうだ。

 まあまだガストに全てを明かしてはいないが、素直な発言は大いに役立ち助かっている。

 その素直さをなくさないためにもまだ全て明かしていないことはガストに伝え、ただ「何を聞くこともいい」と同時に伝えたのでガストも素直に受け入れてた。


 ダンジョンに対する貢献者たちも先に新しい階層の情報を流していたことで、二階層や三階層に移り住む者もそれなりにいたことに安心した。

 特に二階層は洞窟も増やし温度と湿度も軽い場所が増えたことで住処を移す者も増え、ある程度希望にそった住処を作ると言うこともあり予想していた種族以外からも移住希望があった。中には村を分ける者たちも出たほどだった。それにはほんと助かった。


 安定した食料を得ることができ始めていることで村の繁栄を見越して先に村を分ける者、貢献の一つとして村を分ける者、考えは様々だが皆がそれなりに散らばることはこちらとしては大助かりだ。それも自主的に行ってくれるなんて。

 ダンジョンとしてはいい感じに広がっているだろう。このままそこで数を増やしてくれればまた村が増えることにも繋がる。その時までには階層を増やしたいところだ。


 ダンジョンとは階数があればいいだけじゃない。そこにいる者達が大事なんだ。


 そして今日のあたしはといえば応接間でルカを待っていた。

 ヨルからの通信でルカから話があると言われてリツとガストを連れて待っている状態だ。

 こちらとしても聞きたいことがあったし、と丁度良かったはずだと気持ちを殺して普段通りに振舞う。


「ルカの話ってなんだろうねえ」

「答えが決まったんじゃないか?」

「それは早すぎだと思うよ、時間がないとはいえ。ガストはどう思う?」

「私は、私ならダンジョンについての情報を探るために主様に会うかと思います」


 最近のガストは自分なら、と考えて言葉にしてくれるようになった。それはいい傾向だし結構助かっていたりする。


「その可能性も確かにあるね。けど、さすがにダンジョン内の詳しい構造は言う気はないからなあ」

「協力関係になったら教えるんだろ?」

「そりゃそうだよ。じゃなきゃ外で現実味がなくなる。ルカの功績が嘘だとばれるわけにはいかない」


 ルカとあたしの関係は不安定だ。お互いが存在を知っているが、それだけの関係だ。まだ絆も何もあったものじゃない。

 それでもお互いに無視できないのは、この世界の者ではないと言う繋がり。


「まあ、とりあえず聞くしかないよね」


 そう言った瞬間に応接間にノックの音が響き応える前にナイが顔を出す。


「ノックの意味がなくない?」

「俺と嬢ちゃんの関係だろ?」

「お客様がいるのならちゃんとして下さい」

「ガスト様はそこは変わらねえなあ」

「ガスト様の言う通りよ。縁、ただいま。ルカを連れてきたわ」

「ありがとね、ヨル。おかえり」

「嬢ちゃん、俺には?」

「ガストの言う通り少しはちゃんとしてくれたら感謝する」


 くすくすと笑いながらナイに言えば、ナイは特に困った様子もなく笑うだけだ。

 ガストとナイもあれから少し打ち解けたな。まあ性格は変わらないからガストのお小言は多いけど、それでも雰囲気は前より断然良くなった。


「ルカ、いらっしゃい」

「ああ、邪魔する」


 そう言って片手を上げてルカが挨拶してきた。あたしは前と同じようにソファーを勧める。

 今日はナイとヨルもルカを挟みそこに座るようだ。ガストは変わらずあたしの後ろに立ちリツはあたしにジュースを、そしてルカにはコーヒーを淹れてあたしの横に座った。


「ガストも座っていいんだよ」

「私はまだその立場ではありませんから」


 ガストの言うこの立場とはルカを警戒してのことではない。あたしの補佐としてまだ貢献できていないと言うことらしい。その姿に苦笑が浮かぶが好きにさせている。さすが生真面目のガストだと思って。


「なんか前と違うくね?」

「色々あって和解? できたんだよ」

「そっか、不安要素は減ったってことか」

「そうだね、こっちの不安要素は減ったよ。それで、今日のルカの話は?」


 そう切り出せばルカは目の前に置かれたコーヒーを一口飲み、少し躊躇いがあるように視線を動かしあたしを見据えた。


「縁はこの間、俺だから協力するって言ったよな?」

「うん。ルカだからこそ意味があるから」


 それはどうしようもない本音だ。

 今本当であればまだ外との協力者はそこまで必要ない。けれどもルカと言う存在、この世界以外の知識を持ちダンジョンを知っている存在だからこそメリットは大きく協力できると思った。

 ただの善意や偽善で今のあたしは考えてはいけない。


「なら、俺がもし協力のために仲間にも話てぇ、って言ったら許されるか?」

「ルカの仲間に?」


 その言葉に少し目を細めルカを見る。焦るとは違うがどこか躊躇うようなそんな姿。けれどもその目は真剣だった。

 そう言ってくる可能性は考えていた。けれども今のところ答えは決まっている。


「悪いけど、今のところは無理だ。それこそ不安要素が大きすぎる」

「俺の仲間は信用できないってか」

「あたしはルカの仲間を知らない。ルカに言うこと自体リスクがあることだった」


 それでもあたしはルカに会いたいと、話してみたいと思って踏み切った。それは多くのリスクを抱えると知って。


「けどそれを言うってことはまだ仲間に言ってないってことか」

「さすがにそこまで勝手にしちゃ悪いだろ」


 色々と悩み、迷った時もあるんだろう。ルカの顔に苦笑が浮かぶ。その姿に小さな安心感じる。


「けどどうして今あたしの存在をばらしたいの?」

「……酒場の話が通しやすい」

「ナイとヨルとでパーティーを組み三人で良い狩場を見つけたって、数回分独占してたことにすればそれなりに資金が貯まった理由になると思うけど? それぐらいの資金は渡せるよ?」


 事実そう言った話は前回している。それはルカもわかっていることだろう。だからきっと、それが本題ではない。


「ルカとは知らない仲じゃないし、あたしは奇縁だと思ってる。言うだけ言ってみれば?」


 どこか迷うようなそぶりを見せていたルカが深い苦笑を見せて笑う。


「奇縁、間違ってねえな」

「でしょ? 何ができるとは言えないけど、言うだけ言ってみたら?」


 その言葉にちらりとガストを見るルカ。それに気づいてあたしにも苦笑が浮かぶ。


「まあ厳しいことを言う可能性はあるけど、ガストもダンジョンを守る者だからね」

「そう、だな。縁を危険にさらすことはできないよな」

「それは悪いが俺もだな」

「私もね、ルカ」


 ナイとヨルもルカを強く見て言う。何を優先させるかはっきりとさせる。二人もルカの言う内容を知らないようだ。


「だからって聞くだけで命を取ったりなんてしないよ。厳しい言葉はあるかもしれないけど」

「なら、悪いがダンジョンで引き取ってやって欲しい奴がいる」


 覚悟を決めたのか、しっかりとあたしを見て言うその言葉は意外なもので、理解が追い付かなかった。


「引き取って? ダンジョンに住まわしてほしいってこと?」

「ああ」

「それはルカ、ってことじゃないよね?」

「ああ」

「それってルカの仲間をってこと?」

「ああ」

「それ、本気で言ってるの?」


 あたしの問いかけに視線を合わさずに淡々と答えるルカ。その姿に、言葉に、苛立ちが徐々に沸いてきた。

 何を言ってるんだと、ダンジョンをわかっているのかと驚きで止まる。


「ダンジョンが何かわかってる? 魔物の巣窟だよ? ルカの仲間ってことは人種でしょ!?」


 次にやってきたのは怒り。家族のような仲間だと言っていたルカ。それは違ったのかと言い方がきつくなる。

 けれど言った本人であるルカの表情が歪み、視線を落とし苦しそうなものになるからあたしは勢いを削がれてしまう。


「……俺だって、俺だって正解なんてわかんねえ。それでもあいつは今、外じゃ生きてられねえ。あいつ自身が、もうそれに耐えられねえ」


 返ってきたのは以前と違って弱々しい声。複雑に表情を歪ませ、まだ迷い悩む顔。


「外で生きられないって、どうゆうこと……?」

「あいつは最近拾われてきたやつなんだが、血の濃すぎる強い先祖返りだ。それも奇形の」




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