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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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 それからというもの丸一日ガストが部屋から出て来ないということはあったが、そこから大きな変化はない。

 部屋から出てきたガストは何とも言えない表情や何か言いたそうな、それでもまだ言いたいことが決まっていない表情であたしを見つめることが増えたぐらいで、今のところ大きな接触はないからだ。


 ガストは言うなれば子供だ。神の知識を与えられ自信を持った、そして役目に振り回される大きな子供。知恵のない、経験を持たない子供と同じだ。

 創られたばかり、生まれたばかりと考えればそれも仕方ないとあたしは思っている。


 ガストは本来生真面目だ。そう創られたと言ってしまえば悲しいが、それでも性格上も生真面目なんだろう。

 だからこそあたしを急かし、早くあたしに答えを出させようと焦っていた。

 あたしが何をするのか、何を考えているのかは二の次で、魔物の導き手としてしか見ようともしなかった。


 それが悪いとは言わないが、けれどもそれは補佐として、このダンジョンにおいての邪魔でしかない。

 だからこそ今まで放置してきたし、ガストと向き合うのを後回しにしてきたのはあたしだ。

 まずはあたしの足場固めの方を優先して、あたしの生き残る確率を上げるため、ガストを後回しにし続けた。

 それがルカと言う存在でできなくなっただけ。


 ある意味いいタイミングであったんだろう。あたしはガストと本心本音で対立したいわけでも敵対したいわけでもない。

 ガストが本当の意味でのあたしの補佐として仕事をすると言うのであればあたしはガストを迎え入れたいとは思っている。

 それは必要なことだし、ガストの持ってる知識と自我も馬鹿にはできない。使えることに変わりはない。


 あたしが創ったわけでもなく、あたしが自我を与えたわけではないガスト。その存在はダンジョンにおいて有効で、補佐であってくれるなら有難い存在だろう。

 この世界の知識しか知らず経験のないガストだからこそ考えられることだってあるはずだ。


 だからまあ今はガスト自身が距離感を測り、あたしに興味を持ち関心を持ってもらう期間と考えて好きにさせている。

 その結果でどうなろうとも、最後あたしがすることに大きな変化はない。これまで通りリツ達だけを重要視し重宝するのか、そこにガストが加わるのか、決めるのはガストだ。


 ナイとヨルは今も外で活動している。ルカの答えはまだ出てないが強い魔物を狩っては冒険者の階級を上げるとすでに決めたようだ。

 持ってくる素材のランク、強さも上がった。


 ハンターとは階級に分けられ下からF、E、D、C、B、Aと、最後にS級となる。

 FとEは下級と呼ばれ誰でもなれそう強くはない。要は初心者、新人といったところだ。

 DとCが中級と呼ばれ中々の腕の持前だが、経験次第では目指せるランク。

 BとAは上級と呼ばれここまで成れる者も少なく尊敬すらされる階級。

 そして何よりも強く尊ばれる最上位、S級。簡単になれるものではない。


 ハンターはハンターギルドに登録すればすぐにF級になり、そこからはギルドの依頼をこなした回数や狩ってきた魔物ランク、そして素材なんかを売ることで階級を上げていく。

 しかし上級となるB級以上となるとそれだけでは駄目なようで、他にも審査規定があったりもするらしい。それをクリアしないことには階級は上がれない。

 ある程度の知識テストや人物として問題ないかの査定、言動なんかもその中には含まれるだろう。


 またハンターギルドは様々なところにあり各支部によってもある程度その階級査定は違うようだ。

 ナイとヨルがいるミタルナで、二人がどこまで行けるのか楽しみでもある。性格なんかにも問題はないと思うし、あとは周りとの関係性などが必要になるんだろう。たぶん。

 それでもそう時間がないことは二人もわかっているはずだから、あまり無理はしてほしくないあたしの本音。


 そしてダンジョン内、魔物達の訓練も上手くいっている。

 まだ短い時間とはいえ生活状態もかなり改善され、獣を狩るための狩りや採取なども捗っているようだ。みんなの指導の賜物だと思う。

 狩りは戦闘訓練にもなるし、採取は採取で他の魔物や魔生物、それに獣に見つからないようにこなすことで訓練となり、一石二鳥どころか三鳥の結果を生み出す。

 そのおかげと言うか献上物は減った。まあ有難いことに狩った獣など献上してくれるところはいまだにいるが、それでも魔物素材は減った。アラクネさん達のレース作品を除いて。

 結構本気で趣味となりつつあるのか上達具合がなかなかに激しい。出来がいい物が増えて本当に街で売り物にしようか考えれるほどだ。


「縁、アンユから願いがあるそうだ」


 管理室でいつものようにダンジョン内を眺めていたら、部屋に入ってきたなりリツが言う。


「アンユが? 確かゴブリンの軽い自我持ちだよね?」

「ああ、基本ゴブリンの訓練や補佐をさせているゴブリンの統括だ」


 あたしが創り出した初期の自我持ちさん、武具確認のために創り出した者達には指示出しのためにも名前をつけた。

 種族名では他にもいるのでごっちゃになりややこしいから。


「それでアンユがなんて?」

「一人のゴブリンに纏め役をさせたいようだ。アンユはダンジョンができるまでその補佐に回りたい、と。様子を見たいようだ」


 ほう、っとあたしの口から漏れ出た。


「それはまあ思い切ったね。けどそれだけ思わせるゴブリンがいたってこと?」

「俺から見てもあのゴブリンは鍛えるべきだろう。考える能力、統率する能力、まだ足りてはいないが使える駒になりそうだ」

「リツから見ても悪くないのか」

「ああ。あの何度も質問してきていた、発言していたゴブリンだ」


 ああ、あいつか。とすぐに浮かんだ。あたしの口角が緩く上がる。


「悪くないね。エリア長の権限はまだあげれないけど、様子を見るのにはいいかもしれない。他の種族との交友はどうなってる?」

「それなりにしている。物々交換なども上手く使い、群れの数も少し増えているようだ」

「すでに成果を上げてるわけだ。アンユに言ってやらせてあげて。他の自我持ちにもこのことは伝えて考えさえてみて」

「わかった。次はトロワかサンク辺りが言ってきそうだな」

「それだけの価値ある者ならいいよ。使えるのであれば使えるだけ有難い」


 あと気になることと言えば……。


「魔物達の縁に対しての評価も今のところは上々ってところだな。ダンジョンと言う場を与え戦うための力を付けさせてもらっていることを理解している者は多い」

「多いってことは全てじゃないってことだ。反乱しそうなところは?」

「まだないだろうな。だが移住だけを選んだ奴らの動きが少し気になる」

「貢献者組に接触してる?」

「少しな。貢献者組はまだ弱く少ないとはいえ武器や防具も与えられている。食料も多少なりとも与えられている」

「まあいずれは接触する可能性も考えていたけど、ダンジョンが始まるまで持ってくれればありがたいなあ」


 移住だけを選んだ魔物は元々強いものが多い。だからこそあたしの助力を必要ないと移住だけに留める者が多かった。それは少し気になっていたしいつかは取り込めたら有難いと思っている。

 それにダンジョンが顕現すればその魔物たちもあたしに構ってなんていられないだろう。逆にあたしに貢献しなければ、それこそ強くなる道を閉ざされる。

 人と戦いながら食料を探すなど最初は困難だろうし、それこそ武器や防具もへたっていく。それでは戦い続けることはできない。


「うん、あのゴブリンに会ってみようか」

「何を言っている?」

「わかりやすい成果、エリア長候補と言えばいいのかな? ダンジョンに貢献できそうな者は重宝されると見せることは大事だよ」

「それを抑止力の一つにすると?」

「多少はなるかなって話。せめてダンジョンが顕現し人が多く訪れるまで……」


 見えやすい形となればそれだけでやる気に繋がることはある。

 魔物は元々向上心、強くなることに貪欲に創られた生き物だ。それを評価される場があれば、それを評価された者が実際に出たとなれば、他の魔物の刺激となる。


「他の自我持ちにも言って見込みがある者なら数人連れてきていいって伝えて。大々的に王の間でやろうか」

「他には何を考えている?」

「名を与えてみるのもいいね。それに何か、上位とはいかなくとも少しいい剣でも与えてみようか」


 今渡している武器はごく普通のありふれた物ばかり。なんならちょっと劣化品だったりする。それの少しいい物を渡すだけでかなり好待遇には見えるだろう。まだダンジョンは始まってなく、人を倒したわけでもないのに。


「そのゴブリン、名前はあるのかな?」

「さあな、そこまでは知らない」

「そっか、なら一応考えるかな。周知と場の整えは頼んで大丈夫?」

「ああ、任せてくれ。ガスト様には?」

「一応伝えて。来るかは本人に決めさせればいい」


 ダンジョンは始まっていないがすでに始まっている。今が一番大切な時期だ。今どれだけ力を蓄えられるかによってこの後が変わってくる。

 そのためにできる手ならあたしは打とう。




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