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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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 勢いに任せてしまったが、言いたいことを言い切ればガストは押し黙ったままで、それから視線を外しあたしはルカに小さく頭を下げた。


「すいません、話が逸れました」

「いや、いい。お前の本音を知れた。それでお前は何する気なんだ?」

「できれば縁って呼んでください。お前呼びは何なんで」

「俺もルカでいい」


 そう言い合う内にリツが机の上を整えた。新しいジュースを一口飲んで自分を落ちるかせる。


「あたしはこの世界に地下迷宮、ダンジョンを創ってます」

「ダンジョンってことは、財宝は?」


 さすがと言うべきか、ルカはダンジョンという言葉だけである程度理解ができたようだ。

 だからこそ言葉が少なでも説明は足る。


「まだ上階ですから財宝と呼べるほどではないでしょうが、それでも宝箱なんかは置く気です。そしてダンジョンができれば、ルカさん、ルカはダンジョンに来るだろうって」

「私が言ったのよ。ルカは仲間の為にもダンジョンに行くって」


 そしてヨルが微笑みながら言葉を足す。


「きっと知らずルカを見つければ縁は困惑すると思って。もしルカが縁と同郷ならダンジョンの有用性にもすぐに気づいて行くはずだと思ったの」


 ヨルの言葉にルカは驚いたような顔をしたが、それでもすぐに納得した顔で頷いた。


「ああ、確かにある程度情報は集めてからだろうが俺の考えているダンジョンなら行っただろうな」


 どこか苦笑気味にルカが言う。


「それで、俺にそのダンジョンに行くなって言うのか?」

「いえ。それも考えましたがルカにはルカの守りたい者があるんですよね?」

「話し方も丁寧じゃなくていい。ああ、確かに俺にはこの世界で守りたい者が今はできちまってる」

「だからこそ協力体制が取れないかなって思って、ううん、思う。ルカはここに住みたいとは今は思わないでしょ?」


 ルカが驚いた表情をする。


「あたしにはルカが元の世界に戻れるかどうかなんて何も言えない。だからと言ってルカの存在は無視できない。そして会って話をして、ルカを放っておくことはもうできない」


 あたしの率直な気持ちだった。

 この世界で家族だと言える人達を作ったルカ。あたしと違って一から築いた尊敬すべき人。

 そしてこうしてあたしの話を聞いて信用しようとしてくれる、きっと優しい人。

 けれどそれを認められない存在が一人。


「それは……、それは人に味方すると言うことですか!」

「違うよガスト。()()に味方するんだ」

「それの何が違うとっ?」

「あたしは協力を考えてる。ナイとヨルを創ったのだって情報なんかのことも考えてだ。けど、二人だけでは足りない部分、危険になる場合もある」


 どれだけ気を付けていたって、どれだけ慎重に動いたって、二人だけだと穴もできればボロも出やすい。

 ダンジョンの情報を外に出すときなんて全て二人から出ればそれはおかしいことだとすぐに気づかれるだろう。

 そんなことする気はないが、それでも情報操作には気を付けなければならない。それに情報収集から考えても二人だけより多方面からあれば助かる。


「ねえ、ルカの仲間は信用できる?」

「俺は()()できると思ってる」


 真面目な、真剣な顔でルカが言う。


「じゃあ逆に、あたし、もしくはナイとヨルはルカにとって信用できる?」


 ルカが目を細めあたしを探るように見つめるが、それは一瞬のこと。


「……すぐには答えは出せねえ。騙された、ってわけでもないけど、騙し討ちみたいにここに連れて来られたのも本当だからな」

「ですよねー。うん、ナイの連れてき方はどうかと思うよ。それにすぐ信用なんてできないとも。それにあたしだってルカの仲間を信用も信頼もまだできない」


 ルカの答えに笑みが浮かぶ。逆に信用や信頼できるなんて言われた方が嘘くさい。この短時間でお互いの何が知れたと言うのか。

 知ったのはお互いの境遇、似ているようで似ていない、そんな境遇だけだ。


「それでも、協力はできると思うんだ」

「縁は俺に何を望む?」

「情報操作やそれこそ情報収集。他にもいい案なんかがあれば助かる」

「逆に何をしてくれるって言うんだ?」

「ある程度の素材やお金、ダンジョンの情報。それらは全てダンジョンで得たと言えばいい」


 あたしならばルカに危険な事をさせずに素材を渡すこともお金を渡すことも可能だ。そしてそれをダンジョンで得たと言ってもらえばそれだけで宣伝にはなる。ダンジョンで得たことに嘘はないわけだし。

 ルカからも冒険者についてやダンジョンに対しての案を貰えれば助かることは間違いない。


「ルカの仲間でハンター、ダンジョンに行きそうなのはどれぐらいいる?」

「十人いねえな。ガキどもは行かしたくねえ」

「それがいいと思うよ。戦闘訓練してる魔物もいるし」

「マジかよ?」

「それが神の望みでもあるからね」


 魔物を強くし人と拮抗させる。それが神の意思で神の望み。


「最初はある程度強くない魔物も配置する気ではいるけど、それでもそのうちそうも言ってられなくなる」

「人がダンジョンに集まるからか」

「うん。森の中を彷徨い探すよりダンジョンに行って魔物を探した方が他の物も見つける確率を考えれば楽だからね」

「採取なんかはできるのか?」

「場所によりけりな構造はしてる。奥へ進めば進むだけそれなりの物はあるよ」

「そこまで言っていいのかよ?」


 どこか呆れたようにルカが言う。けれどだ。


「どうせダンジョンができればすぐにばれることだもん。まだ中の構造なんかを具体的に言ったわけじゃない」


 ダンジョンで重要になってくるのはその構造、経路だ。迷路のように複雑であったり視野が届きにくい密林地域など、知っていなければ手強いもの、そこが重要になる。


「宝箱はランダム配置、絶対ではない物にする気だし、ある程度の当たり外れも作るつもり」

「宝箱に擬態系の魔物は?」

「それはまだ考えてなかったなあー」


 確かに有効ではあるがこの世界に宝箱に擬態系の魔物はいない。それを創ってしまうことも可能だが、今の時点では時期早々な気もする。まず道端に宝箱なんてそう落ちてませんし。

 あ、スライムを入れとくってのは有りかもな。うん、いいこと聞いた。


「あたしは勝手にこの世界に連れて来られた被害者同士、ルカに死んで欲しくない。だからこそ協力できれば有難い」

「それを俺が断れば?」

「特に何も。ルカがダンジョンに行くのも自由だし行かないのも自由。ただしダンジョン内で何が起こってもあたしは関与しない」


 協力だなんだと言っていたがあたしの本音なんてそんなものだ。

 知ってしまった存在、似て非なるその存在。それを無視することも見殺すこともできないだけ。だから答えはルカ次第。

 そんなあたしをじっと見つめるルカの目。それは探るように、疑うように向けられた目。けれどもそれもすぐに閉じられた。




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