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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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14

明けましておめでとうございます。



 それから数日が経ち、リツとナイとヨルは魔物の訓練を始めている。

 時折ナイとヨルが外に出て冒険者としても活動できているのは各種族で創り出した自我を持つ魔物達のおかげだろう。あれからも追加して創り出した。


 そして有難いことにスケさんたちスケルトンスライムの働きは素晴らしいものがあった。

 様々な昆虫や爬虫類、なんなら小さな獣なんかも捕まえてきてくれたのだ。その中には魔生物も含まれており、すでに各階層に解き放ち様子を見ているところだ。上手く根付いて生息し、生態系を築いてくれたら有難いと様子を窺っている。

 そのおかげもあって予想よりも生物創造する必要がなくなり、魔力の消費を抑えられたのは助かった。

けれども褒めてと言わんばかりに捕まえてきたものを見せに来てくれて、そこばかりはかなり参った。

 どうにか見せに来るのは勘弁してくれと頼みこんでそのまま各階層に解き放つようにお願いした。

爬虫類は特に見たくない。それに虫類も勘弁願いたい。


 しかもだ、スケさん達の驚きはそれだけでなく、野生スライムも色々と連れてきてくれたんだ! 驚きです。

 スケルトンスライムはスライムの中でも上位種に値するのか、それともあたしが創りだしたからなのかわからないが、それでもスケさん達が連れてきたスライム達を統率してくれて助かっている。

 そのおかげもあって捕獲がどんどんと進み、ダンジョン内は小さな生き物がかなり増えた。

 他にも有難いことに魔生物、狐のようなフォレフォッグやスナレフォッグス、魔狼のスロイトウルフやファングウルフなんかも連れてきてくれた。

 魔生物同士では何か意思疎通のやり方があるのか、それともスケさん達だからできたのか謎だ。


 けれどそのおかげでダンジョン内はかなり充実し始めている。スケさん達は魔生物以外にの生物、獣なんかもうまく連携して捕まえてきてくれて、大型種は難しくとも小型から中型種に近いものはすでに結構ダンジョン内に入れることができた。

 あとは大型種などナイとヨルに頼むかあたしが少量創りだせば何とかなる程度にはなってきてる。

 今日も外に出て頑張ってくれているスケさん達。有難や。もしかしたらあたしが創る必要もなくなるかもだ。あのスラ軍団に任せれば。


 あたしはと言うとその間も色々と頑張っていた。一応。

 言われた武器や防具を創り出せばお休み。魔力回復に努める日々。これ、一番大事。

 生物創造と道具創造でそれなりの魔力は消費した。この後またダンジョンを弄ると考えると暫くは温存するしかできないだろう。

 それに生物創造で闘うための魔物もまだ創り出さなければいけないし、それを考えれば暫くは大きくは何もできないってのが本当だ。

 まあ要するに暇を持て余してるって状況である。


 あたしにも知識があると言ってもやったこともない戦い方を教えるなんてできないし、魔物と関わることは今のところない。状況をリツ達から聞くぐらいだろうか。あとは管理室でたまにその様子を見るくらい。


 驚きなのはガストだ。訓練様子をたまに見に行ったりして確認をしているようだ。

 まあ神の意思通りになるのかそれが気になって見に行ってるんだろうが、それでも魔人が顔を出してくれるだけでそれだけでみんなは緊張感と共にやる気が起きる。どんな理由だとしても大事なことだ。


 今日のリツは戦闘訓練を自我持ちの創り出した魔物に任せ、各群れや集落の住処の確認に行っている。

 まだほぼ貢献などできていない貢献組なので支給している食料は各所にギリギリ少ない程度と言うところ。それでもダンジョン内の木の実や果実なんかは自由に採っていいと言っているし、狩りも一応していいことになってるので何とかなっているようだ。

 そんな感じで不都合がないか、弱っている者や各所の様子はどうか、その確認も必要になってくる。ダンジョンが始まる前に弱ってもらっては困るからね。


 ナイとヨルは外に出てまた魔物の勧誘や素材を探しに行っている。冒険者家業をしながら。

 横のつながりも大事だし、情報収集とこれからを考えれば必要なことだ。


 おかげであたしは大人しく管理室にいるわけで、何をするわけでもなく画面を眺めている。

 様々な種族の住処の確認をしてみたり、特に移住だけを選択した魔物の動きは注意して見ていたりするわけですよ。


 さすがと言うか自信があるだけあってその動きは中々いいものだ。ダンジョンが始まる前に獣を狩りつくさないように気を付けて頂きたい。特にあのケンタウロス三人。

 やる気満々で食事の為と言うよりも、今のところこの無害な場所で狩りを楽しんでいるように思う。


「注意が必要かなあ」


 まだ禁止区域には足を踏み入れてない。それになぜかあのケンタウロス達が選んだのは地下二階層。洞窟もあるが温度と湿度の高いあの地だ。

 何を思ってそこを選んだのかはわからないが、それでも二階層にも住民がいることは大事で、他にも幾らかの種族が選んではくれた。


 貢献する者たちは今のところ階層移動を許可している。それもあってか住処を二階層に定めた者たちもいた。あの温度と湿気でやってくる冒険者も少ないだろうと予想してのことのようだ。

 自分たちが慣れるまで大変だろうがそれでも何とか適応しようとしながら生活しているのが良く見える。

 今のところ謀反や逆らうものはいない。それは何よりの救いだろう。


 眷属、下位種族を呼べる者たちはそれを呼び始め、他にも知っている外の仲間たちなんかにもリツを通して話を通してくれている者もいる。有難いことだ。

 実際に生活してみてそれを語ってくれることでダンジョンに住む魔物は増えた。

 それも貢献の一つと捉え、少しばかり食料を多く提供したり少しばかりいいナイフなんかを渡すことで今のところは報いているつもりだ。


 他にも欠けた牙や角、脱皮した皮なんかも献上は始まっている。中には仲間のため、群れのために尻尾を切り落としたり鱗を剥がしたりする猛者までいたのは想定外だ。

 特に小さな群れで栄養状態や群れ全体で弱っているところにそれは顕著だった。欠けた牙や角よりもいい素材であるのは本当だから、そういった所には少し多めに食料を渡している。

 アラクネさん達からはレースのリボンや装飾として使えそうなものが献上されてたりする。糸だけでもいいと言ってるんですけどね。


 献上品に関しては各住処に献上用の箱を置いている。それは王の階層にある部屋に置かれた各種の箱と繋がっていて、一定期間で輸送されて来るものだ。

 それと同じくこちらから送る用の箱も置かれていて、それで食料なんかを渡している。


 そんな感じでダンジョン内は今のところ平和だ。

 戦闘訓練もダンジョン開始までにはある程度見れる物になりそうだと報告は受けているし、後は経験を積ませることが必要になってくる。


 人と戦う。それは魔物たち自身が恐怖している存在。それと命のやり取りをする恐怖を乗り越えれるか、そこが重要だろう。

 それでも様々な種族、特にあの発言してきていたゴブリンなどはやる気のようで、必死に訓練を積んでいると言う。

 守る者があるためか、これまでのことを返したいがためか、それはあたしには関係ないことだ。


「全体的に、上手くはいってるよね……」


 誰に言うでもなく漏れた言葉。


 この世界の知識はある。そして、元居た世界の知識もある。

 だからと言って誰かを、大多数を導いたことなどないし命のやり取りなどしたことはない。

 作り物(フィクション)として娯楽で見たことがあるくらいのもので、現実的に見たことも実感したこともない。


 そして、本当の意味で自分の命をかけたことなど、一遍ともないのである。


 不安は尽きない。

 リツ達が頑張ってくれていることはわかっているし知っている。こうやって見ている。

 それでも、だ。

 それでも不安が胸中に渦巻く。

 これでいいのか、本当に間違っていなかったのか、見落としはないか、穴はないか。

 考え出したらキリがなくあたしの中を目まぐるしく襲う。


 今のあたしにできることは魔力を回復させるだけ。ただそれだけと言う今に余計に不安が募る。動けない、何もできないからこそ頭の中が目まぐるしく動く。

 残された時間はそう多くない。それまでにどれだけ、それまでに何が、それまでに……。


 痛いのは嫌だ。壮絶な死なんて誰が迎えたいものか。神が言ったんだからそれは事実そうなるわけで、だったら回避するしかないんだ。

 あの横暴で拉致者な神。それから考えても、あたしの最後はいいものではないことぐらい予想できる。しかもあんな神のために死んでやるなんて嫌すぎる。


「……死にたくないのは、誰もが同じか」


 戦闘訓練の様子が映る画面。必死で武器の扱いに慣れようと、少しでも上達しようとする姿が映る。

 それに比べてあたしは、何をするでもなくダンジョンを創り、防衛はみんな任せだ。それしかできないとわかって、そう思って考えたダンジョンだが、不安と共に押し寄せる重たい物がある。


 そんな思考を切り裂くように、管理室にノックの音が聞こえた。




本年度も宜しければお楽しみください。

宜しくお願いします。

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