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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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13



 様々なものを創るとなるとするとそれなりに広さのある王の間が適任かと、作業するには仰々しい玉座に座り考える。


「隠密スライム、悪くないよね」


 スライムとは魔生物と呼ばれるもので魔物と違って意思疎通はとれないが魔石は取れる生き物だ。

 爬虫類や昆虫類、他にも獣類など様々いるが普通の生き物との簡単な判別は魔石が取れるかどうか、ただそれだけだ。

 魔生物、スライムも基本意思疎通ができないものだけどあたしが創ればどうなるだろうか。イメージ、想像力をフル活動して創ればそれなりに意思疎通のできるスライムができるんではないだろうか?


 スライムとは一般的に弱い魔生物に入る。中心部に核となるものがありその周りをゲル状の物が覆っている。大きさも固体差により十cm程度の者から一mを超す者まで様々だ。

 基本行動としてはゲル状の部分を動かし動き、そこで獲物を融解し捕食する。核を壊せば魔石を残し溶けて死んでしまうものだ。

 弱点もわかっているし行動もそう複雑でもない。動きもどちらかと言うと緩慢で、焦らなければ簡単に倒せてしまう魔生物。特に小さい者などは冒険者に成りたての者たちのいい小遣い稼ぎな生き物だ。


 けれどだ、スライムの特徴にそのゲル状の体?がある。そこで獲物を捕まえ融解して捕食するわけなんだが、これを利用して融解せずにダンジョンまで運んできてもらうことはできないだろうか?

 スライムならば外にいても不思議ではないし、それができれば小さな虫、他にも大きさによるが蛇や鼠なんかの生き物も運んでこれるんではないだろうか?

 出来れば動きも素早くさせたい。そうすることで外に出しても生存率と捕獲率は大きく上がるだろう。事実この世界のスライも基本が緩慢なだけであって捕食者を見つけた時や素早い動きを見せることもあると知識にある。


「まあ、やるだけやってみるか」


 そう言ってあたしはさっそくと始めてみる。何事も経験。やってみなくちゃわからない。


 この世界には多色なスライムがいる。濃さの違う青系統や赤系統に緑系統、他にも様々な色味があり、それによって多少なりとも効きやすい攻撃が変わってくるそうだ。

 その中でも特殊で都市伝説とされているものが透明、スケルトンスライムだ。

 ゲル状の部分が透明で透けていて核の部分も透明で少し歪んで見える程度なスライム。

 その姿から見つかることが稀で、今となっては都市伝説、本当にいるかどうかもわからない生き物とされているようだがあたしの知識にはしっかりいることがわかっている。

 それがわかっているなら創ることはなお容易いんだが、如何せん問題はスケルトンスライムが捕獲し運んでいる最中、その獲物が見えてしまうことだろう。

 ゲル状の中に入れたからと言ってそのゲルが透明なだけで隠す効果は全くない。スケルトンスライムの発見例も基本的には捕食中に気づかれる例がほとんどだ。

 宙に浮きながら溶かされる獲物など恐怖でしょうがないと思うが。

 それでも悪い考えではない。特に最初は小さな虫なんかで試していけば何とかなるだろうとあたしは考えることをさっさと放棄して創り出す。


「生物創造」


 魔力を込めてそう言った瞬間に眩く光り、光が収まればそこにいるはずの姿は……、ない?


「あれ? 失敗……?」


 魔力はしっかり抜き取られたし失敗のわけがない。けれどそこには姿が見えず……、と目を凝らして辺りを窺えば、一か所だけ少しばかり歪に歪んだ風景を見つけた。


「……スケさん?」


 あたしがそう呼べばその歪な歪みはふるふると揺れ、そこに何かがいると教えてくれる。


「うん、いい感じにできたってことか。意思の疎通もできてるみたいだし」


 その言葉を聞いてまたふるんっと震えるように歪む背景。

 しかしこれは確かに都市伝説にもなるだろうしダンジョン内においてかなりの脅威になる存在じゃないだろうか。

 スライムってかなり有用かもしれない。様々な使い道を考えてしまいあたしの頭の中がスライム一色になりそうだ。


「水色スライムを水辺に離して水の中で待機とか? 緑は草むらに、赤はそうだなあ……。って、先にスケさんだ」


 創り出したスケルトンスライム、仮称でスケさんと呼んでいるそれにお願いする。


「外に出て虫や捕まえられそうな生き物をダンジョンに運ぶことはできる?」


 できると言わんばかりにふるんと震えるその体。背景の歪みが面白い。


「人に見つからないように、魔物にも見つからないようにお願いしたいんだけど?」


 そう言った瞬間、背景の歪みがしゅっと素早い動きで横に移動した。スケさんなりに素早さを表してくれたんだろう。

 しかしその動きは確かに早く、捕獲した状態ではどうなるかわからないがそれでもかなり有効だろう。


「それじゃああと何人か仲間を創るから、みんなで捕まえられそうな魔生物や生物を捕まえてきてね」


 その言葉にまたふるんっと震え、了承だと言ってくれる。あたしはその返しを受けてスケさんの仲間、スケルトンスライムを何体も創り出す。


 そしてそのままスケさんたちを見送り、あたしはそこからは様々な種族をまず一人創り出した。

 リツ達よりもかなり弱い自我にし、各々の生態についての知識しか持たない者達。そのみんなには様々な武器や防具を試してもらっている。


「ゴブリンは基本重くなければ使えそうだね。ラミアは爪の補強やしっぽの先の補強を考えたほうがいいか。けど弓も使えそうだね」


 あたしが創りだした魔物達は知識として各々の戦い方を知っている。経験がないとはいえ知識があるだけでもかなり違う。それを使って有効な武具を探ってるんだ。


「ゴブリン種は防具も軽いものがいいね。ラミアは上半身を隠させるもの。あ、胸当てだけの方がいい?」

「その方が動きも阻害せずにいいかと存じます」

「了解。ってことはアラクネもそうかな」

「そうですわね。あまり重いと動きが阻害されそうですし、上半身全て覆うと動き辛いです」


 ふむふむ、と意見を聞きながら様々なものを試してもらう。人型種は様々な武器も防具も使えるが、上半身だけ人型種は少しばかり使える物も選ぶようだ。


「問題は、獣種だよねー」


 そう言って見やるは魔狼(まろう)、スロイトウルフ。

 近くの森に生息している狼種で、今回はまだ来ていないが連れてくる気でいるからこそ試してみている。

 だが、狼ってようは大きな犬みたいなものだ。防具も武器もどうしろって言うのか。

 一応、足先に爪型の武器や背中を覆うような防具も考えたが、このスロイトウルフはどれも嫌がった。


「んー、やっぱりそのままがいいってこと?」

「くぅん」


 そうだと言わんばかりに鼻先をあたしに擦り付けてくる。意思疎通ができるって有難いね。


「まあ、魔狼に関してはまだ魔生物に近いし獣に近いものね。自然の形が一番か」


 狼種は群れで行動し群れで狩りをするものだ。群れの大きさによって倒す難易度さえも変わる、連携を使い知恵を使う生き物。そう考えれば自然な姿が一番かと納得する。

 それに個体差はあれど少しばかり魔法が使えたりするんだし。さすが魔物。


「いずれ魔狼も呼ぶし、その時は橋渡しできたらお願いね」


 そう言ってスロイトウルフを撫ぜてやれば嬉しそうに頭を摺り寄せてきた。

 そうやって様々な種族に試して貰いながら時間は流れ、それはヨルとガストがやってくるまで続いた。

 そして響くはやっぱりガストのお小言。


「何をやってやってるんですか、貴女は!?」

「ガストは今日も元気だねえ」

「何ですか、この数の魔物は!」

「そこまで魔力は使ってないよ。各種族の使える装備の確認をしてたんだ」


 それなりの広さで創った王の間、その至る所に魔物と魔生物たち。


「なっ! は? いや、あのアラクネたちは……?」


 すでに装備の確認が終わったアラクネ、上半身が人型で下半身が蜘蛛の姿の者にちょっと面白いことを教えてみたんだ。それを壁際で楽しそうに実践している。その周りにはラミアや他にも人種に近い者たちが集まって興味深げに見ている。


「いやあ、ほら丈夫な糸を吐き出すことができる種族でしょ? それでいて足はかぎ爪みたいになってるから、レース編みや編み物なんかできるんじゃないかなって思ったんだ」

「はぁあ!?」

「いやあ、器用にやってくれるんだよ。あれはいつかアイテムとして生産してもらってもいいよね」

「確かに器用に綺麗に作ってるわねえ。あれなら売り物にもなりそうだわ」

「ヨルに街に持って行ってもらって価値を調べてみてもいいね」

「そうね、確認した方がいいわね。付与術を使って防御力を上げる物や普通の髪飾りなんかにしても価値はありそうよね」


 ヨルも楽しそうにアラクネの作り出した作品を見ていく。


「ヨルの評価も高いしかなりいい物になりそうだね」

「それでも先に戦える、ダンジョンを防衛する者よ」

「わかってるよ。物作りはまだまだ先だねー」


 教えといてなんだけど、順番としては後になる。まあいずれは教えてこの文化を広めることも考えていいだろう。


「それで、縁はちゃんとお仕事してたんでしょ?」

「うん。ある程度の確認は終わったよ。後は個人の好みなんかもあるだろうからね」


 使える武器や防具の確認は一通り終わっている。そこからは体格や各々の好みに合わせて準備していけばいいだろうと考えていた。


「戦うことを希望したものには一通り使える物を試してもらって、そこから選んでもらうのが一番だよね」

「そうね。使いやすさ、好みは種族以外でもあるだろうし。それでもある程度の選別が終わってるなら早そうね」

「じゃあさっそく試してもらうの?」

「ええ、ここにある分でまず試してもらいましょ」


 最初から全ての貢献者に武具を渡すわけではないが、ここには試してもらうために創り出した様々な武器や防具がある。それを戦うことを選んだ者たちに試してもらい適性などを見ながら訓練を始めることになる。

 そして習得度ややる気、そういったもので最初は武具を渡す者を選別していく。

 全ての者に渡せるほどあたしの魔力は使えないから。


「住処の方は決まった?」

「ある程度、縄張りなんかは決まったわね」

「予定通りだね。共有区間なんかも指示できたんでしょ」

「ええ、そこも済んでいるは」

「移住だけの者は納得してる?」

「そうね、今のところはってのが付くだろうけど」


 少しばかりヨルの顔に苦笑が浮かぶ。それでもまあ、納得してもらわないとこっちも困るんですよ。


「補充するべき魔物の種類と数もある程度は決まったのかな?」

「それは戦闘訓練の後かしら? みんながどれくらい動けるかでも変わってくるもの」

「あ、戦闘訓練にはここにいる魔物達も連れて行って。装備の確認のため弱い自我を持たせてるから、いい感じに各種族にアドバイスなんかもできると思うんだ」


 ガストが「はっ?」と言うが気にしたら負けだ。それに必要だったから付けただけのこと。


「自我がないと本当の意味での確認がし辛かったからね」

「助かるわ。あれだけの数を私たちだけで見るのは大変だもの」

「以外に多かったものね」

「ええ、有難いことだけどね」


 戦い、貢献することを選んだものが多かったのは助かることだ。ダンジョンは魔物がいて成り立つ。前提に魔物有りきなんだ。


「まだ補助の数がいりそうなら言って、追加するから」


 魔物は創っておいても損はない。最終的にダンジョンに放てばいいんだし。


「そうね、お願いすることになると思うわ」


 ヨルは「お疲れ様」とあたしの頬を優しく撫ぜた。





まだ短い作品ですが、今年度ありがとうございました。

引き続き、宜しくお願いします。

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