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終わりの見えない(仮)  作者: けー
一章 始まりの準備

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12/45

本日仕事納めの方も多いでしょう。本年度もお疲れ様です。



 ガストはあたしの言葉を考えるように少し間を開けると、それでもしっかりとあたしを見て言葉にした。


「それでは主様は数を欲して住む許可を与え、また貢献することを選んだ者には待遇を変える、と」

「あたしの考えるダンジョンには様々な者が、それも数がいる。その為にも貢献する者との差別化は必要になる」

「貢献、何度か仰ってましたね。それはどのような物なのでしょうか?」


 今までガストには具体的なことは何も聞かせずに進めてきた。それもダンジョンを知らないガストだ。わからなくても仕方がない。


「ダンジョンとは言った通りにハンターがやって来る場所、そこでハンターと戦い住処とするダンジョンを守ること。それだけではなく倒せたハンター、人の武具やその体、それか殺された仲間、ダンジョンに住む者の死体などを献上してもらう」


 感情を廃したあたしの言葉に、ガストの目が見開く。


「今のところあの数だけじゃすぐ足りなくなる。強くなる前に全滅してしまう。それを補うためにもある程度は生物創造も必要になってくる」

「魔物の死体を献上させ、そして媒体として生物創造をすることで必要魔力を減らすのですか」

「まあ、死体じゃなくたって抜けた歯や脱皮した皮、そんなものでもないよりかはマシだし。死体その物よりかは貢献度としては下げるけど。それに武具にしたって人が使ってた武具を献上してもらえばそのまま使うこともできるし、道具創造で違う武具を造る魔力は減る」


 錬金術みたいだな。ただし、無、何も無いところからでも魔力を多く消費すれば作れるのが創造魔法の凄いところだけど。


「それでは戦えない者でも貢献できるというのは素材の提供ということですか?」

「今は、かな。数が増えたらできることも変わる」


 展望と言えば様々なことはあるが今すぐできることなど限られている。


「先にしなくてはいけないのは前提となる戦う者。戦術とまではいかなくても戦い方や連携の仕方。最初は同種族同士になるだろうけど、慣れてきたら種族の違う魔物同士でも上手くいい連携を取れると思うんだ。そうなればそれだけでもかなり強くはなる。他にも生活においての知恵なんかも必要かなあ?」

「生活……?」

「うん。今までの魔物の生活は人に比べかなり原始的だ。それを少し変えてあげて、住処を整えてあげて、栄養状態や睡眠など、その辺りを改善してあげることで健康状態も変わり動きも変わってくる。それが結果的にダンジョン防衛にも繋がってくる」


 人と魔物。生き物と言う意味では同じだ。根底にあるのは生活、食べて栄養を取り体を作り、睡眠で体を休める。

 それをすることによって動き方や働き方、考えまで影響を及ぼしてくる。


 今まで魔物達は人から隠れ住むように小さくなりながら生活していた。何なら定期的に住む場所を変え見つからないように、それこそ寝る時でさえ気を張って生活していた。

 それを少し改善してやるだけでもかなりの効率は変わってくるだろう。あたしはそう読んでいる。


「それにね、ダンジョンには魔物だけじゃなくて動物、魔石を持たないものなんかや様々な生き物をいれる気なんだ」

「は?」

「一つは多方面に広げていきたいからってのと、一つは魔物自身が生活する上で狩りができるようにするため。だからこそジャングルには果樹や木の実を付ける物も多くあるしね」


 岩場の洞窟にも一応ではあるが多少の草木が生えているところはある。薬草なんかも生えてたりして採取なんかは多少どこでも可能にしている。


「貢献しない、ただ住むだけの者でも生活できるようにですか」

「そう、数はやっぱり強いよ。少ないよりも多い方が良い。それを考えれば住む者は増やすべきだ。どんな形だろうと」


 これから先、人種が()()にやってくることはわかっている。そしてあたしと言う異物を排除しようと世界が動くことも。

 だからこそできるだけ戦える者が欲しい。けれども戦えないとしても、ただダンジョンにいるだけでも、時間稼ぎなどの価値にはなる。


「それにね、様々な動植物をダンジョンに入れることによってまたダンジョンの価値は上がるんだ」

「どうゆことでしょうか?」

「宝と同じだよ。魔物以外にも狩れる動物は肉にも素材にもなる。果樹や薬草なども採取しどちらも売ることができる」


 ダンジョンに住む者達だけの為ではない。ダンジョンの付加価値を上げる為の物でもある。

 あたしは口角を上げ、自信有り気に笑みを浮かべガストを見つめる。


「何にしてもね、どうせここには簒奪者たちはやって来る。そして魔物達には自分の住処としてダンジョンを守ってもらう。奥へ行かないようにしてもらう。その助けに、誘惑の一つとして宝や動物、採取できる物はあるんだよ」

「人種にそちらも狙わせる、と言うことですか」


 言葉を返さずにただにやりと笑う。それだけでガストにだってわかるだろう。

 全てこのダンジョン、その核であるあたしを守るために考えたことだ。必要だと思って考えたことだ。例えそれがどんなにも卑怯になろうとも、出来る限るのことはするつもりだ。


「バランスなんかも考えて配置しないといけないけど、その辺りは兼ね合いもあるだろうね」

「それを見極めるための貢献度……」

「色々と神が思う注文はこなし、理には適ってる作りだと思うんだけどな」


 貢献度が高い者達ほど優遇され良い環境、食糧などの多い地域に住むことを可能にすればいい。強い者ほど地下に、あたしの住む場所に近い場所へ配置できるように仕向ければ良い。それだけの環境を整えてやれば良い。

 階下に行けば採取できる物を増やしてみたり、武具の性能を高めたりと様々なことは考えてはいる。それも階下を創り、魔物を増やさないことには進まない話だ。


 しかしここに来るであろう簒奪者たちは狡猾だ。きっとすぐに地下に行けば行くほど良い物があると気付くだろう。その辺りの兼ね合いも考えなくてはいけない。

 人は強欲だ。ダンジョン内に魔物、金になるモノがあるとわかれば、それこそ探し出すだろう。

 宝も置くからどうなるかはわからないが、それでもただダンジョンを住処にするだけの者達には厳しい環境になる可能性はある。


「人種からしたら、ダンジョンに貢献している者もしてない者も等しく魔物種だ。そこに変わりはないから最初はまだいいだろうけど、戦闘訓練をしない貢献してない魔物種は辛くなるだろうね」


 人がダンジョンを進めば進むだけ、ダンジョンの有用性には気づき始めるだろう。そうなるとそれなりの人がダンジョンにやってくることになる。

 数は暴挙だ。それだけで強みとなる。

 戦闘訓練をしない、連携を取れない魔物にどこまで耐えれるだろうか。


「けどもう少し洞窟を増やしてジャングルを縮めたほうが良いかなあ?」


 ガストも一応の納得はしたようで黙り、少し考えるように俯いている。その間に思ったことを口にすれば、ナイとヨルが返してくれた。


「住む魔物の数で考えれば良いんじゃねぇか?」

「そうねえ、あの温度と湿度にどれだけの魔物が対応できるかわからないし」

「逆にあの湿度に適応して、特殊進化なんかしてくれたら面白いんだけどなあ」


 進化とは住む場所や生活によって適応するために行われるものだ。それを考えればダンジョン内に様々な環境を作りそこに住まわすことで特殊進化する可能性はなくもないと思っている。

 まあ、夢みたいな話だけれど。


「もしあの湿度に対応できる種族が多そうなら、ジャングルだけで階層を創るのも面白いわね」

「いいねえ、植物系の魔物なんかも多く配置したいね」

「そうなると動物や虫なんかも早めに連れてきた方がいいな」

「そうだね。環境に適応するかの確認もあるし、暫くは全部が生き残るわけじゃないだろうしね」


 多種多様、それでいて独自の生態系を築いてくれた儲けものだ。それだけでこのダンジョンの付加価値になるし、攻略しにくいダンジョンへと変わっていく。

 まだまだ考えることは山積みだ。やるべきことも残っている。今回でどれだけの魔物が残り、どれだけの貢献者が出るのか。移住だけはどれだけいるのか。それによってまた様々な変更も考えなくてはいけないだろう。


 頭の中で考えを巡らせていれば、嫌に明るい軽やかな声がした。


「けどその前に縁の私室よ! それが何より最優先だわ!!」

「ああ、確かにそうだな」

「え? まだ先のつもり……」


 勢いよく手を握りこんで熱弁するヨル。それに頷くのはナイだ。


「とりあえず最低でもシャワー室は完備でしょ。それにベット。天蓋付きとかにしちゃう?」

「いや、待ってよ。まだ作る気は……」

「ダメよ。何よりも優先させるべきよ」


 にっこりと笑みを浮かべているのになぜかひやりとするヨルの表情。それに少し気圧されながらも反論は試みる。


「いや、だってさ、まだダンジョン自体そこまで揃ってないし」

「しっかり休息を取ることで魔力の回復は早まるでしょ? だからこそ縁の部屋は必要よ」

「今だってヨルが買ってきてくれた物で充分休めてるよ」


 隅に置かれた毛布やマット代わりの毛皮を指さして言う。が、ヨルは全くもって納得しないらしい。


「あんな物でちゃんと休めているわけないわ。それもこんな他の者がいる場所なんかで」


 ちらりとガストに目を向けヨルは言う。

 元々あったこの部屋はそう広くはない。そして常にこの場所にいるのはあたしとガストだった。ガストは外に出ることもなく常にこの場所にいた。あたしは出れるわけもないし、必然的に寝る時も起きているガストがいる状態なわけだ。

 言いたいこと、言わんとすることはわかったが、それでもなぁ、と考えて苦笑してしまう。


「けど定住者や貢献者が決まればダンジョンを弄らなきゃいけないし、他にも必要になってくるものはあるじゃん?」

「それはそうだけど、縁の部屋だけならそこまで多くの魔力はいらないでしょ? 縁も言ってたじゃない、このダンジョンで守るべきは縁だって。それを考えれば必要なことよ」

「基本、魔力を溜めて創造するだけなんだけどね。それにあたしのを作るのならみんなのも作らなきゃ」

「あたし達のは後で良いわよ」

「そうだな、まだまだ外にいることの方が多いし」

「あ、私は頂けると有難いです」


 ヨルを何とか説得しようと思っていたら、どこか疲れの含んだガストの声が割り込んできた。それに冷ややかな視線を送るのはヨルだ。


「ガスト様。縁の補佐としてよろしいんですか?」

「こんな頭の痛くなるようなことばかり続くんですから、確かに一人で休憩できる場所くらいは欲しいですからね」


 ゆっくりと頭を振り疲れた顔のガスト。それを見てふむ、と考える。まだ何か言いたそうなヨルを止めてあたしは言う。


「ガストは私室が早くほしいんだよね?」

「そうですね、冷静になる場があれば確かに助かりますから」


 そうかそうか、確かにそれは必要だろう。それにぶっちゃけガストのお小言から逃げれるならあたしも有難い。

 色々と予定は狂ってしまうが出来ないこともないだろう。


「よし、じゃあ先に作っちゃおうか。あたし達の住居階」

「住居階?」

「私とナイの部屋はまだ良いわよ」


 ガストの戸惑う声を消すようなどこか納得のいっていないヨルの声。けれども創るのならばどうせだ。




明日からお休みに入る方も多いようで、年末年始ということもあり、明日から一月五日まで毎日時間ランダム更新とさせて頂きます。

季節感のない話ではありますが、少しでもお暇潰しになりましたら嬉しいです。

またブクマや応援として↓にあります☆ポイント入れて頂けましたら、ただただ作者が喜びます。

宜しくお願いします。

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